-Tuning-希望の妖精物語
/27/思い出(※)
「ぬぉぉぉぉおおお!!!ジョーカーはダメェェエエエエエ!!!!」
「ハッ、お似合いだな。あ、あがり」
「うぉおおおおおおおおお!!!」
手札のカードを捨て札に落とし、俺の手元のカードは消える。
カムリルの手にはジョーカーのみが残り、敗北が決定する。
つまり俺たちは、ババ抜きを興じていた。
「ぬふぁあ……負けた……」
「罰ゲームでもするか。なんか一発芸しろよ、頭を床にめり込ませるとかさ」
「後から罰ゲームきめるのずるいし、そんな高度なことできんわ!」
などと言いつつ、頭を床に刷り込ませるカムリル。
すり抜けができるんだからできるわな。
俺はこの様子を携帯のカメラに収め、トランプを回収して整える。
「いつまでやってんだよ、キモいな〜……」
「やれって言ったの真和じゃん!真和がいじめるよー、うえーん……」
「今更可愛子ぶって泣くなよ、ゴリラ」
「なっ……ご、ゴリゴリゴリ!あ、これ泣いてるように思えないね」
「おう、そうだな」
バカな会話をしながら、俺はまたトランプを配って行く。
試験前の土曜日、俺たちはのほほんとしてトランプで遊んでいる。
勉強すべきなんだろうが、集中できないんだからどうしようもない。
「……私の手札は4枚だ〜」
「少ないだろ?捨て札から10枚拾っていいぞ?」
「気遣いみたいに言ってるけど、それゲーム破綻するし、これ手札を捨てるゲームだからね!」
「多い方が持ってる気がするだろ?いいじゃねぇか」
「なんの話をしてるの!?」
「スキあり」
「ぬあっ!?」
チラチラと見えていたカムリルの手札を2枚奪い、俺は4枚のカードを捨てる。
俺の手札は元々3枚、ジョーカーはカムリルが持っている。
つまり、俺のを引けばカムリルは負けるわけだ。
「真和反則っ!ズルいズルい!!」
「あん?気のせいだろ」
「私の手札が2枚なくなったのは目の錯覚ではありません。なぜなら私は知覚しているからです」
「おう、そうか」
「さも自分が関係ないかのように……!」
「なんの話をしてるの?」
「ず、ズルすぎる!」
などと言いつつ、最後の一枚を引くカムリル。
残った手札はジョーカーのみとなった。
「ううぅ……なぜこの私がトランプゲームで負けるの……」
「天性の才が、俺を勝たせるのさ」
「持って生まれちゃいけない才の間違いだねそれ」
 「どうだかな」
冗談もほどほどにし、またなんか罰ゲームを考える。
と、俺が上を向いてぼーっとしている間に、カムリルが俺の携帯を手に取った。
「これ便利だよねー。この世界に来て驚いたことナンバーツーだよ」
「あー、そーだなー……」
今の時代、携帯一つでなんでもできるんじゃなかろうか。
いろんなことが手元一つでできてしまう。
不思議なもんだ。
「カメラカメラ〜……おおっ、真和が映ってる。これか」
「こっち向けんなよ。ほら、もっと下向けろ」
「カーペット撮ってもなんにもならないよっ」
俺に向いた携帯からパシャリという効果音が鳴る。
お〜と感嘆するカムリルはマジマジと画面を眺めた。
写真は後で消せばいいから、撮られても構わないが……。
「この写真、現像できないの?」
「できるが、俺は自分の顔なんて現像したくない」
「えー。私欲しいんだけどー……」
「夜中に釘で木に打ち込むんだろ?勘弁してくれ」
「いやー、真和がずっとそんな態度だったらそのうち木に打ち込むかもね〜」
背筋に悪寒が走った。
髪の長い、白い着物の女が夜中に1人でカツーンカツーンと俺の写真に釘を打ち付ける。
しかもカムリル。
どうせ恍惚に歪んだ顏で打ち付けているだろう。
想像すると、もっと寒くなってきた。
「怖いこと言うなよ」
「言い出したの真和だしっ!それに、打ち付けたりしないよ……」
「じゃあ破くんだな」
「わー!私全く信用されてなーいっ!」
ふてくされたように寝転ぶカムリル。
なんの信用なんだかまるでわからないが、何に怒ってるんだか。
「……多分、私はそのうちいなくなるよ」
「……そうかもな」
「……写真でもあれば、と思っただけなの」
「…………」
何気無く持ち出した話なのかは知らないが、悲しい現実だった。
カムリルは、自分の理念を曲げずに生きてきた。
これから先も信念が変わることはないんだろう。
このバカみたいだけど楽しい日々も終わりが来る。
寂しいことだ。
そう思えるくらい、俺の中でカムリルの存在が肥大しているというのにも驚きだが、楽しい生活なのは事実で、俺もできれば離れたくなかった。
「……いつでも来ればいいだろ。それとも、2度と会いたくないなら別だけどな」
「そんなわけないでしょーが……出てっても、何度でも会いに来たい」
「なら来いっての。何回同じこと言わせるんだよ」
「……むー。だって……離れたくないし……」
「…………」
寝返りを打って、カムリルは拗ねたようにうつ伏せになる。
嬉しくもあり、悲しくもある言葉だ。
また1人になろうとしてるんだから……。
「……はー、真和もそのうち誰かと結婚して子供作って幸せに暮らすのかー。私は一生独り身なのねー」
「お前は独り身だろうが、俺が結婚とか、それはないな」
「フ、そう言う人は皆結婚するのさっ。ああっ、私の前で笑うカップルは爆発してしまえええ」
「妖精なのに優しさが微塵もない一言だな」
「うー……」
ケツをこちらに高く上げ、そして力尽きたかのように崩れる。
ふてくされ度はとっくにMAXを超えた模様。
「……妖精は恋愛もできないんでしょうか。あぁ、うん、愚問……はぁ……」
「……今日はやけに病んでるな。大丈夫かよ?」
「……少し出直して来ます」
「……おう」
フラリと立ち上がり、ヨロヨロと扉まで歩いてカムリルが出て行く。
また薬を射ちに行くのだろう。
薬に勝る元気を与えるために、俺に何かできればいいのにーー。
俺に尽くした彼女に尽くしきれてない自分を嫌悪しつつ、俺はトランプを片付けた。
――私が。
――そう簡単に。
――ふてくされると思ったか?
「……ふははははは!!」
というわけで、上手いこと真和の携帯を奪取してしまった私は湖灘家の屋上で携帯電話をいじり倒していた。
太陽が当たって画面が反射しないよう、影の中に入れてボタンを操作する。
「ハッ!?連絡先!」
こいつは有用と思ったものは片っ端から懐に入れてあるメモ帳にメモしていく。
というか真和、結構連絡先に人いるし。
あれかな、中学の友達。
……まぁいいだろう。
続いてカメラ。
メニューを開き、あれやこれやと操作方法を確認して自分の顔を撮る。
よしよし、これで真和も私を忘れることはないだろう。
と思ってたらデータフォルダには私のアホみたいな写真がある。
まぁ忘れることはなさそうだ。
どうせなら1枚くらいサービス入れた写真でも入れようかしらん?
いや、やめとこ、嫌われるかもだし。
他にもTV、ツール、アプリなどを使っていく。
アプリにあったボードゲームには少し手こずったが、無事勝利を収めたり、突然懐中電灯機能が発動して思わず携帯を落としたりと、1人で楽しんでいた。
「写真の現像はSDカード、USBから可能……はぁはぁ、なるほど」
ネットでプリンタを用いた現像の仕方を調べて頭で理解する。
SDカードは携帯に入っていた。
コンビニにでも行けばプリントアウトできるんだろう。
そして都合良く私の手には500円玉が。
フラフラ道を彷徨っている時に、偶然手にしたものだった。
材料は揃っている。
だから私はーー。
1人部屋に残された俺は、どうにも落ち着きがなくて何もできず、ベッドに寝転がっていた。
とにかく暇なのに、何も手が付かない。
アイツがいないだけで、そんなに変わるとは、結局勉強なんてできないじゃないかと今更気付いた。
まったく、俺はいつからこんなに、アイツを――。
「うふふふふふふふー。ふふっ、ただいまー♪」
「……おう、おかえり」
なんの前触れもなく、カムリルが壁からすり抜けて現れる。
俺は飛び起きて彼女を見ると、俺の携帯を手に持っていた。
「……お前、持ち出したのかよ」
「あ、うん。少々お借りしました」
「……変なサイトにアクセスしてないだろーな?」
「私そこまでバカじゃないし、しないもーん♪」
「…………」
矢張り例のテンションを上げる薬を射ったのか、いつもよりテンションが高い。
……何か1つ、楽しませてやることでもないものか。
トランプよりももっと面白い……。
「はい、これ返すね。私と真和の写真が入った大切なものだから、壊したりしないでね?」
「……。……あぁ、壊したりしねぇよ」
確かに現状では、俺の写真もカムリルの写真も入っている。
なるほど、そう考えれば携帯の重要度は跳ね上がる。
壊すなど、もってのほかだ。
「そうだ!2人の写真撮ろうよ!いいでしょ?」
「え?あー、まぁ、構わねぇよ」
「お貸しっ!」
バシッと戻ってきた携帯を奪われる。
スナップを効かせてカムリルは携帯を開き、俺の肩を抱き寄せた。
「おい、近いぞっ」
「えへへへっ、いいのいいの。カメラ内向きっ!いきますっ!」
カシャリという爽快な音。
そして収められる2人の写真。
「…………」
カムリルが携帯画面をマジマジと見つめて確認する。
「ブレてるから撮り直していい?」
「見せてみろ」
「うっ……はい」
携帯を手渡される。
<a href="//12250.mitemin.net/i120956/" target="_blank"><img src="//12250.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i120956/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
写真にブレはなく、俺のパッとしない顔といつものカムリルの笑顔が載っていた。
撮り直す必要などどこにもない。
でも――
「撮り直しだな」
「え?」
「どうせなら、あと100回くらい撮り直してみるか?」
「!  うん!撮ろう!」
屈託なく笑う彼女に俺も笑い、写真を撮ったり、加工してその日を過ごした。
形ある思い出をたくさん残して――。
続く
「ハッ、お似合いだな。あ、あがり」
「うぉおおおおおおおおお!!!」
手札のカードを捨て札に落とし、俺の手元のカードは消える。
カムリルの手にはジョーカーのみが残り、敗北が決定する。
つまり俺たちは、ババ抜きを興じていた。
「ぬふぁあ……負けた……」
「罰ゲームでもするか。なんか一発芸しろよ、頭を床にめり込ませるとかさ」
「後から罰ゲームきめるのずるいし、そんな高度なことできんわ!」
などと言いつつ、頭を床に刷り込ませるカムリル。
すり抜けができるんだからできるわな。
俺はこの様子を携帯のカメラに収め、トランプを回収して整える。
「いつまでやってんだよ、キモいな〜……」
「やれって言ったの真和じゃん!真和がいじめるよー、うえーん……」
「今更可愛子ぶって泣くなよ、ゴリラ」
「なっ……ご、ゴリゴリゴリ!あ、これ泣いてるように思えないね」
「おう、そうだな」
バカな会話をしながら、俺はまたトランプを配って行く。
試験前の土曜日、俺たちはのほほんとしてトランプで遊んでいる。
勉強すべきなんだろうが、集中できないんだからどうしようもない。
「……私の手札は4枚だ〜」
「少ないだろ?捨て札から10枚拾っていいぞ?」
「気遣いみたいに言ってるけど、それゲーム破綻するし、これ手札を捨てるゲームだからね!」
「多い方が持ってる気がするだろ?いいじゃねぇか」
「なんの話をしてるの!?」
「スキあり」
「ぬあっ!?」
チラチラと見えていたカムリルの手札を2枚奪い、俺は4枚のカードを捨てる。
俺の手札は元々3枚、ジョーカーはカムリルが持っている。
つまり、俺のを引けばカムリルは負けるわけだ。
「真和反則っ!ズルいズルい!!」
「あん?気のせいだろ」
「私の手札が2枚なくなったのは目の錯覚ではありません。なぜなら私は知覚しているからです」
「おう、そうか」
「さも自分が関係ないかのように……!」
「なんの話をしてるの?」
「ず、ズルすぎる!」
などと言いつつ、最後の一枚を引くカムリル。
残った手札はジョーカーのみとなった。
「ううぅ……なぜこの私がトランプゲームで負けるの……」
「天性の才が、俺を勝たせるのさ」
「持って生まれちゃいけない才の間違いだねそれ」
 「どうだかな」
冗談もほどほどにし、またなんか罰ゲームを考える。
と、俺が上を向いてぼーっとしている間に、カムリルが俺の携帯を手に取った。
「これ便利だよねー。この世界に来て驚いたことナンバーツーだよ」
「あー、そーだなー……」
今の時代、携帯一つでなんでもできるんじゃなかろうか。
いろんなことが手元一つでできてしまう。
不思議なもんだ。
「カメラカメラ〜……おおっ、真和が映ってる。これか」
「こっち向けんなよ。ほら、もっと下向けろ」
「カーペット撮ってもなんにもならないよっ」
俺に向いた携帯からパシャリという効果音が鳴る。
お〜と感嘆するカムリルはマジマジと画面を眺めた。
写真は後で消せばいいから、撮られても構わないが……。
「この写真、現像できないの?」
「できるが、俺は自分の顔なんて現像したくない」
「えー。私欲しいんだけどー……」
「夜中に釘で木に打ち込むんだろ?勘弁してくれ」
「いやー、真和がずっとそんな態度だったらそのうち木に打ち込むかもね〜」
背筋に悪寒が走った。
髪の長い、白い着物の女が夜中に1人でカツーンカツーンと俺の写真に釘を打ち付ける。
しかもカムリル。
どうせ恍惚に歪んだ顏で打ち付けているだろう。
想像すると、もっと寒くなってきた。
「怖いこと言うなよ」
「言い出したの真和だしっ!それに、打ち付けたりしないよ……」
「じゃあ破くんだな」
「わー!私全く信用されてなーいっ!」
ふてくされたように寝転ぶカムリル。
なんの信用なんだかまるでわからないが、何に怒ってるんだか。
「……多分、私はそのうちいなくなるよ」
「……そうかもな」
「……写真でもあれば、と思っただけなの」
「…………」
何気無く持ち出した話なのかは知らないが、悲しい現実だった。
カムリルは、自分の理念を曲げずに生きてきた。
これから先も信念が変わることはないんだろう。
このバカみたいだけど楽しい日々も終わりが来る。
寂しいことだ。
そう思えるくらい、俺の中でカムリルの存在が肥大しているというのにも驚きだが、楽しい生活なのは事実で、俺もできれば離れたくなかった。
「……いつでも来ればいいだろ。それとも、2度と会いたくないなら別だけどな」
「そんなわけないでしょーが……出てっても、何度でも会いに来たい」
「なら来いっての。何回同じこと言わせるんだよ」
「……むー。だって……離れたくないし……」
「…………」
寝返りを打って、カムリルは拗ねたようにうつ伏せになる。
嬉しくもあり、悲しくもある言葉だ。
また1人になろうとしてるんだから……。
「……はー、真和もそのうち誰かと結婚して子供作って幸せに暮らすのかー。私は一生独り身なのねー」
「お前は独り身だろうが、俺が結婚とか、それはないな」
「フ、そう言う人は皆結婚するのさっ。ああっ、私の前で笑うカップルは爆発してしまえええ」
「妖精なのに優しさが微塵もない一言だな」
「うー……」
ケツをこちらに高く上げ、そして力尽きたかのように崩れる。
ふてくされ度はとっくにMAXを超えた模様。
「……妖精は恋愛もできないんでしょうか。あぁ、うん、愚問……はぁ……」
「……今日はやけに病んでるな。大丈夫かよ?」
「……少し出直して来ます」
「……おう」
フラリと立ち上がり、ヨロヨロと扉まで歩いてカムリルが出て行く。
また薬を射ちに行くのだろう。
薬に勝る元気を与えるために、俺に何かできればいいのにーー。
俺に尽くした彼女に尽くしきれてない自分を嫌悪しつつ、俺はトランプを片付けた。
――私が。
――そう簡単に。
――ふてくされると思ったか?
「……ふははははは!!」
というわけで、上手いこと真和の携帯を奪取してしまった私は湖灘家の屋上で携帯電話をいじり倒していた。
太陽が当たって画面が反射しないよう、影の中に入れてボタンを操作する。
「ハッ!?連絡先!」
こいつは有用と思ったものは片っ端から懐に入れてあるメモ帳にメモしていく。
というか真和、結構連絡先に人いるし。
あれかな、中学の友達。
……まぁいいだろう。
続いてカメラ。
メニューを開き、あれやこれやと操作方法を確認して自分の顔を撮る。
よしよし、これで真和も私を忘れることはないだろう。
と思ってたらデータフォルダには私のアホみたいな写真がある。
まぁ忘れることはなさそうだ。
どうせなら1枚くらいサービス入れた写真でも入れようかしらん?
いや、やめとこ、嫌われるかもだし。
他にもTV、ツール、アプリなどを使っていく。
アプリにあったボードゲームには少し手こずったが、無事勝利を収めたり、突然懐中電灯機能が発動して思わず携帯を落としたりと、1人で楽しんでいた。
「写真の現像はSDカード、USBから可能……はぁはぁ、なるほど」
ネットでプリンタを用いた現像の仕方を調べて頭で理解する。
SDカードは携帯に入っていた。
コンビニにでも行けばプリントアウトできるんだろう。
そして都合良く私の手には500円玉が。
フラフラ道を彷徨っている時に、偶然手にしたものだった。
材料は揃っている。
だから私はーー。
1人部屋に残された俺は、どうにも落ち着きがなくて何もできず、ベッドに寝転がっていた。
とにかく暇なのに、何も手が付かない。
アイツがいないだけで、そんなに変わるとは、結局勉強なんてできないじゃないかと今更気付いた。
まったく、俺はいつからこんなに、アイツを――。
「うふふふふふふふー。ふふっ、ただいまー♪」
「……おう、おかえり」
なんの前触れもなく、カムリルが壁からすり抜けて現れる。
俺は飛び起きて彼女を見ると、俺の携帯を手に持っていた。
「……お前、持ち出したのかよ」
「あ、うん。少々お借りしました」
「……変なサイトにアクセスしてないだろーな?」
「私そこまでバカじゃないし、しないもーん♪」
「…………」
矢張り例のテンションを上げる薬を射ったのか、いつもよりテンションが高い。
……何か1つ、楽しませてやることでもないものか。
トランプよりももっと面白い……。
「はい、これ返すね。私と真和の写真が入った大切なものだから、壊したりしないでね?」
「……。……あぁ、壊したりしねぇよ」
確かに現状では、俺の写真もカムリルの写真も入っている。
なるほど、そう考えれば携帯の重要度は跳ね上がる。
壊すなど、もってのほかだ。
「そうだ!2人の写真撮ろうよ!いいでしょ?」
「え?あー、まぁ、構わねぇよ」
「お貸しっ!」
バシッと戻ってきた携帯を奪われる。
スナップを効かせてカムリルは携帯を開き、俺の肩を抱き寄せた。
「おい、近いぞっ」
「えへへへっ、いいのいいの。カメラ内向きっ!いきますっ!」
カシャリという爽快な音。
そして収められる2人の写真。
「…………」
カムリルが携帯画面をマジマジと見つめて確認する。
「ブレてるから撮り直していい?」
「見せてみろ」
「うっ……はい」
携帯を手渡される。
<a href="//12250.mitemin.net/i120956/" target="_blank"><img src="//12250.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i120956/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
写真にブレはなく、俺のパッとしない顔といつものカムリルの笑顔が載っていた。
撮り直す必要などどこにもない。
でも――
「撮り直しだな」
「え?」
「どうせなら、あと100回くらい撮り直してみるか?」
「!  うん!撮ろう!」
屈託なく笑う彼女に俺も笑い、写真を撮ったり、加工してその日を過ごした。
形ある思い出をたくさん残して――。
続く
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