異世界転移~俺は人生を異世界、この世界でやり直す~
怠惰な娘
部屋のところへ行くと、奥から022号室、021号室と続いていた。
「じゃあ僕ティミーちゃんと隣の部屋がいい!」
すると早々ファルクがこんな事を言い出した。ティミーと言えばおろおろするだけでどうしていいか分からないようだ。
「却下だ」
ファルクが隣の部屋なんて危なすぎる。
「えー? なんでアキちんが言うのー? もう僕の理解を超えるから今すぐどっかいけー」
「お前の脳レベルに合わせてやる義理は無い」
言い回しがあるあるだなぁ……。
などと思いつつファルクに対抗したところ、スーザンが口を開いた。
「私もこれのいう事に賛成だな。害虫の貴様がティミーのように可憐な子の隣部屋に行っていいはずないだろう?」
スーザンよく分かってる! たださりげなく俺の事をこれ呼ばわりしたのはやっぱりまだ怒っていたりするのだろうか……。たぶん試験の初っ端の時だよな……バタバタしてお礼まだ言えてないし、言うとき一緒に謝っておこう。
「うわひっどー! 鬼畜! これがいじめだー、恥を知れー!」
「貴様が言うな」
スーザンの言う通りだ。ファルクはもっと自分の行いを客観的に見たらいいと思います。この歩く恥め。
「とりあえずそうだな、奥からティミー、スーザン、俺、ファルクでいいか?」
とりあえず少しでも不穏な動きを見せたらいつでも飛び出せるようにファルクが外側で俺が内側の方がいいだろう。
「異論は無い」
「わ、私もそれでいいかな」
女子二人からの同意は得た。
「ちょっとー! 何気にアキちん女子と隣じゃーん、あー、そっか狙ってるんだぁ! もしかして巨乳好きーぃ?」
「はぁ!?」
こいつ、そんな誤解を招くようなことを……!
恐る恐るスーザンを見てみると、きっちりとした正装だが、身体のラインがそれなりに分かる服の上から胸の辺りを押さえ、今にも噴火しそうな勢いで顔を真っ赤に染めていた。
ティミーもまたジトーっとした避難がましい目線を向けている。
もうやめて、アキヒサのライフはとっくにゼロよ!
「な、なんて破廉恥な! 少しはマシな奴かと思っていた私が馬鹿だった! 恥を知れ!!」
「ご、誤解だ!」
抗議もむなしく、そのままスーザンは一番奥の部屋に引っ込んでしまった。ファルクといえばニコニコとうざったらしい笑みを浮かべている。……貴様。
その後、ファルクのせいで奥の部屋にスーザンは引っ込んでしまったので、奥からティミー、俺、ファルクの順番の部屋順に収まったというか俺が無理やり押し通して話は完結させた。
朝。身体に重みを感じて目を開ける。
見えるのはお洒落な模様の施された天井。そのまま首を動かし自分のつま先を見ようとすると、黒く艶やかな髪の毛に遮られる。
ははぁん……。俺はもう失敗しないぞ。こういうのはもう気付かずにそのまま寝てしまうのが一番だと昨日の朝で勉強した。騎士団の服を着てることから、夜勤開けで俺のところに寄ってみたらそのまま寝ちゃったとかそういうんだろう。
さて寝よう……というか騎士団大変そうだよなぁ。日中ロスト・キャニオンで見張らされたのに夜の警護とは、だから俺らの合格発表の時にバリクさんもハイリもいなかったんだな。先に帰って少しでも寝てたのかもしれない。
よし寝よう。あ、そういえばミアとかどこの隊にいるんだろ? あれってたぶん騎士団の制服だよな? それかグレンジャー家からの監視役とかもありうるか? どちらにせよ一昨日以来一度も会ってないので早いとこ謝っときたい……。ほんと俺、女の子の頭撫でるとかどういう神経してんだよ。
うん寝よう……謝ると言えばスーザンだよな。昨日の誤解もちゃんと解かないといけないし、もう全部ファルクが悪いって事にしよう……。
あっれー?
おかしいな。眠れないぞ? うーむ、俺のメンタルは可愛い女の子を布団にして寝れるほど強くはなかったらしい。どうしようかな。寝るって言ってももう朝だもんな。とりあえずちょっと揺さぶって寝たふりして、もしハイリがそれで起きて気づいたらそのままどっかに行ってくれるだろう。
善は急げという事で少し自らの体をゆすって振動を与えてみる。
「んっ……」
その際、ハイリの妙に艶めかしい吐息が漏れる。……あかんわこれ!!
くっそ、どうすればいい、何か手は無いか。
「ねぇアキ、お部屋に転移石あったよね? とりあえず今日村に戻っていろいろ持ってこよっか」
そこへ扉の向こうからティミーの声。取っ手が掴まれる音が聞こえる。そういえば転移石あったな……ってそんな場合じゃねぇ!
「ちょ、待て!」
「え、なに? 聞こえないよ。とりあえず入るね」
しまったぁ! なんで俺はここで声を発した!? 寝たふりしとくべきだった、だってこの状況どうやってティミーに説明すればいいかわかんないし!? てかあくまで推測しかないからそもそも説明しようないじゃないか!
しかし無情にも扉は音を立てて開け放たれる。
そこにはすっかり硬直してしまったティミーの姿があった。
「アキ?」
背筋が凍りそうな声音だ。今、彼女は何を思うのか。
「ま、まぁなんだ、とりあえずハイリを起こそう! ハイリ起きろ!」
できるだけ大きな声で言うと、ハイリがもぞもぞ起きだす。
「おおアキー……今宵は宴らー入団祝いらー……さぁ飲めー」
ハイリが上半身を起こすと、フラフラしながらろれつの回らない口調で言う。まだ寝ぼけてんな。よし、久しぶりにあれ使ってみよう、猫だまし。
そう思い至り、ハイリの目の前で大きく手を鳴らす。
「おっ?」
ようやく目覚めたか、今度は機敏な動きでキョロキョロしだす。
「とりあえず説明を頼む」
経験上こういう場合は俺が何か言ったらむしろ余計変な誤解を与えかねない。
「あっ……なるほど」
そう言ってハイリは申し訳なさそうに笑みを浮かべると、俺のところから飛びのき、小さめの丸テーブルの椅子に座る。
「ゴホン、まぁあれだな。まずはティミー、アキ、入団おめでとう。俺も昼、夜と見張りさせられて疲れてな、すっぽかして木の上で寝ようとしてたら隊長に見つかって、たまたまここに逃げ込んでそのまま力尽きたってわけだ。もしこの場所が割れても隊長の立場上ここが女子部屋だったら入れないからな!」
ハッハッハ、と高らかにハイリは笑う。いやいや何笑ってるんですかね?
「さて、俺は隊長に怒られたくないからしばらく消えるぜ! じゃあな!」
凛々しく言い放つと、ハイリは素早い身のこなしで俺の目の前で飛翔。割れたような鋭い音が耳を突き抜ける。
「ど、どうしたんだい!?」
そこへ、慌てた様子のバリクさんが俺の部屋の中をティミーの後ろから覗きに来る。
「ハ、ハイリがあそこから……」
ティミーもびっくりしたのか、うろたえながらだが俺の背後を指さすので、その先を見てみると、盛大にガラスが割られていた。え、なに、あいつ飛び降りたの?
「はぁ、いつまでも世話のかかる奴だ……」
バリクさんは大きなため息をつくと、ありがとうと言って慌ただしく駆けていった。
あいつ、試験前の時は割とちゃんと働いてるんだなとか思ってたのに……。俺の感心を返せ。
「あっ……」
ティミーは何かに気付いたのか、小さく声を発する。
あ、そうか、そういえばやばいんじゃないのこれ。一応説明はあったけどあれじゃティミーが納得するか微妙じゃないのか?
「そ、そのなんだ、さっきのはだな……」
何かもっとちゃんと納得がいくような説明を考えようと口を開くと、ティミーがこちらに駆け寄ってくる。……あれ?
「ケガしてるから治すね」
「え、ケガ?」
ティミーがこちらに手を向けると、緑色の暖かな光に包まれた。
ああ、確かに頬に生暖かいのが伝ってる気がする。
そしてふと目線を下に向けると、ベッドには凄惨にガラスの破片がぶちまけられていた。……ハイリほんと次会ったらしめてやる。
「治った」
ティミーはそう言ってクスリと笑いだすと、こちらの頬も自然とゆるんでくる。
「まったく、ハイリも気を付けてほしいよな」
「そうだよね、今のはちょっと私も怒らないといけないかも」
「ティミー怒らないもんな、きっとハイリもかなり反省するだろうな」
「アキもね……?」
……え?
マイナス二百七十三度の笑顔にただただ身がすくむばかりだった。
「じゃあ僕ティミーちゃんと隣の部屋がいい!」
すると早々ファルクがこんな事を言い出した。ティミーと言えばおろおろするだけでどうしていいか分からないようだ。
「却下だ」
ファルクが隣の部屋なんて危なすぎる。
「えー? なんでアキちんが言うのー? もう僕の理解を超えるから今すぐどっかいけー」
「お前の脳レベルに合わせてやる義理は無い」
言い回しがあるあるだなぁ……。
などと思いつつファルクに対抗したところ、スーザンが口を開いた。
「私もこれのいう事に賛成だな。害虫の貴様がティミーのように可憐な子の隣部屋に行っていいはずないだろう?」
スーザンよく分かってる! たださりげなく俺の事をこれ呼ばわりしたのはやっぱりまだ怒っていたりするのだろうか……。たぶん試験の初っ端の時だよな……バタバタしてお礼まだ言えてないし、言うとき一緒に謝っておこう。
「うわひっどー! 鬼畜! これがいじめだー、恥を知れー!」
「貴様が言うな」
スーザンの言う通りだ。ファルクはもっと自分の行いを客観的に見たらいいと思います。この歩く恥め。
「とりあえずそうだな、奥からティミー、スーザン、俺、ファルクでいいか?」
とりあえず少しでも不穏な動きを見せたらいつでも飛び出せるようにファルクが外側で俺が内側の方がいいだろう。
「異論は無い」
「わ、私もそれでいいかな」
女子二人からの同意は得た。
「ちょっとー! 何気にアキちん女子と隣じゃーん、あー、そっか狙ってるんだぁ! もしかして巨乳好きーぃ?」
「はぁ!?」
こいつ、そんな誤解を招くようなことを……!
恐る恐るスーザンを見てみると、きっちりとした正装だが、身体のラインがそれなりに分かる服の上から胸の辺りを押さえ、今にも噴火しそうな勢いで顔を真っ赤に染めていた。
ティミーもまたジトーっとした避難がましい目線を向けている。
もうやめて、アキヒサのライフはとっくにゼロよ!
「な、なんて破廉恥な! 少しはマシな奴かと思っていた私が馬鹿だった! 恥を知れ!!」
「ご、誤解だ!」
抗議もむなしく、そのままスーザンは一番奥の部屋に引っ込んでしまった。ファルクといえばニコニコとうざったらしい笑みを浮かべている。……貴様。
その後、ファルクのせいで奥の部屋にスーザンは引っ込んでしまったので、奥からティミー、俺、ファルクの順番の部屋順に収まったというか俺が無理やり押し通して話は完結させた。
朝。身体に重みを感じて目を開ける。
見えるのはお洒落な模様の施された天井。そのまま首を動かし自分のつま先を見ようとすると、黒く艶やかな髪の毛に遮られる。
ははぁん……。俺はもう失敗しないぞ。こういうのはもう気付かずにそのまま寝てしまうのが一番だと昨日の朝で勉強した。騎士団の服を着てることから、夜勤開けで俺のところに寄ってみたらそのまま寝ちゃったとかそういうんだろう。
さて寝よう……というか騎士団大変そうだよなぁ。日中ロスト・キャニオンで見張らされたのに夜の警護とは、だから俺らの合格発表の時にバリクさんもハイリもいなかったんだな。先に帰って少しでも寝てたのかもしれない。
よし寝よう。あ、そういえばミアとかどこの隊にいるんだろ? あれってたぶん騎士団の制服だよな? それかグレンジャー家からの監視役とかもありうるか? どちらにせよ一昨日以来一度も会ってないので早いとこ謝っときたい……。ほんと俺、女の子の頭撫でるとかどういう神経してんだよ。
うん寝よう……謝ると言えばスーザンだよな。昨日の誤解もちゃんと解かないといけないし、もう全部ファルクが悪いって事にしよう……。
あっれー?
おかしいな。眠れないぞ? うーむ、俺のメンタルは可愛い女の子を布団にして寝れるほど強くはなかったらしい。どうしようかな。寝るって言ってももう朝だもんな。とりあえずちょっと揺さぶって寝たふりして、もしハイリがそれで起きて気づいたらそのままどっかに行ってくれるだろう。
善は急げという事で少し自らの体をゆすって振動を与えてみる。
「んっ……」
その際、ハイリの妙に艶めかしい吐息が漏れる。……あかんわこれ!!
くっそ、どうすればいい、何か手は無いか。
「ねぇアキ、お部屋に転移石あったよね? とりあえず今日村に戻っていろいろ持ってこよっか」
そこへ扉の向こうからティミーの声。取っ手が掴まれる音が聞こえる。そういえば転移石あったな……ってそんな場合じゃねぇ!
「ちょ、待て!」
「え、なに? 聞こえないよ。とりあえず入るね」
しまったぁ! なんで俺はここで声を発した!? 寝たふりしとくべきだった、だってこの状況どうやってティミーに説明すればいいかわかんないし!? てかあくまで推測しかないからそもそも説明しようないじゃないか!
しかし無情にも扉は音を立てて開け放たれる。
そこにはすっかり硬直してしまったティミーの姿があった。
「アキ?」
背筋が凍りそうな声音だ。今、彼女は何を思うのか。
「ま、まぁなんだ、とりあえずハイリを起こそう! ハイリ起きろ!」
できるだけ大きな声で言うと、ハイリがもぞもぞ起きだす。
「おおアキー……今宵は宴らー入団祝いらー……さぁ飲めー」
ハイリが上半身を起こすと、フラフラしながらろれつの回らない口調で言う。まだ寝ぼけてんな。よし、久しぶりにあれ使ってみよう、猫だまし。
そう思い至り、ハイリの目の前で大きく手を鳴らす。
「おっ?」
ようやく目覚めたか、今度は機敏な動きでキョロキョロしだす。
「とりあえず説明を頼む」
経験上こういう場合は俺が何か言ったらむしろ余計変な誤解を与えかねない。
「あっ……なるほど」
そう言ってハイリは申し訳なさそうに笑みを浮かべると、俺のところから飛びのき、小さめの丸テーブルの椅子に座る。
「ゴホン、まぁあれだな。まずはティミー、アキ、入団おめでとう。俺も昼、夜と見張りさせられて疲れてな、すっぽかして木の上で寝ようとしてたら隊長に見つかって、たまたまここに逃げ込んでそのまま力尽きたってわけだ。もしこの場所が割れても隊長の立場上ここが女子部屋だったら入れないからな!」
ハッハッハ、と高らかにハイリは笑う。いやいや何笑ってるんですかね?
「さて、俺は隊長に怒られたくないからしばらく消えるぜ! じゃあな!」
凛々しく言い放つと、ハイリは素早い身のこなしで俺の目の前で飛翔。割れたような鋭い音が耳を突き抜ける。
「ど、どうしたんだい!?」
そこへ、慌てた様子のバリクさんが俺の部屋の中をティミーの後ろから覗きに来る。
「ハ、ハイリがあそこから……」
ティミーもびっくりしたのか、うろたえながらだが俺の背後を指さすので、その先を見てみると、盛大にガラスが割られていた。え、なに、あいつ飛び降りたの?
「はぁ、いつまでも世話のかかる奴だ……」
バリクさんは大きなため息をつくと、ありがとうと言って慌ただしく駆けていった。
あいつ、試験前の時は割とちゃんと働いてるんだなとか思ってたのに……。俺の感心を返せ。
「あっ……」
ティミーは何かに気付いたのか、小さく声を発する。
あ、そうか、そういえばやばいんじゃないのこれ。一応説明はあったけどあれじゃティミーが納得するか微妙じゃないのか?
「そ、そのなんだ、さっきのはだな……」
何かもっとちゃんと納得がいくような説明を考えようと口を開くと、ティミーがこちらに駆け寄ってくる。……あれ?
「ケガしてるから治すね」
「え、ケガ?」
ティミーがこちらに手を向けると、緑色の暖かな光に包まれた。
ああ、確かに頬に生暖かいのが伝ってる気がする。
そしてふと目線を下に向けると、ベッドには凄惨にガラスの破片がぶちまけられていた。……ハイリほんと次会ったらしめてやる。
「治った」
ティミーはそう言ってクスリと笑いだすと、こちらの頬も自然とゆるんでくる。
「まったく、ハイリも気を付けてほしいよな」
「そうだよね、今のはちょっと私も怒らないといけないかも」
「ティミー怒らないもんな、きっとハイリもかなり反省するだろうな」
「アキもね……?」
……え?
マイナス二百七十三度の笑顔にただただ身がすくむばかりだった。
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