異世界転移~俺は人生を異世界、この世界でやり直す~
フィナーレ
ここはどこだろうか?
目を開けると、そこにはどこまでも紅い空が広がっていた。
どうやら地面上で仰向けにに倒れていたようで何を思うでもなく立ち上がる。傍には農具にされていた頃と同じ姿になったザラムソラスがあったので拾っておく。
前方を見やる。目の前に広がる荒野はどうやら先ほどの場所ととても似ている。いや、先ほどなのかもわからない。どれくらいあれから時間が経ったのか、いやあるいは死後の世界なのか。それならいい。生きていて楽しい事は何も無いのだから。そしてもし仮にここが死後の世界なのだとすれば、きっとあいつらもどこかにいるはずだ。
荒野をひたすら歩き続けると、多くの峡谷が俺の行く手を遮るが、まだ微かに残っているらしかった魔力を行使し、かろうじで乗り越えていく。
どれくらい進み続けたのか分からない。いつの間にか視界の先に広がる紅い空の面積の割合が大きくなっていた事から、どうやらこの荒野の最果て付近まで来たらしい。
少し歩き、果ての向こうを見ると、眼下には残酷な光景が広がっていた。
視線の先、見えるあれは完全に王都だ。しかしその近くに広がっているはずの不帰の森はその色を緑から灰色へと姿を変えていた。それだけじゃない。この世界にあったはずの自然という自然が朽ち果てているらしかった。
つまり、俺のいる世界は決して死後の世界ではなく、ジュダスによって滅亡させられた世界だった。
「なんでだよ……」
思わず声が漏れる。
なんで俺だけが生きてるんだよ……。なんで俺だけがここに立ってるんだよ……。いや待て、もしかしたら王都には人がいるかもしれない。この朽ちた世界でも俺みたいに生きてるやつは、きっといる。
俺は下へ続く道を探しだすと、まっすぐ王都へと進んでいく。
途中で何かの生物に出会う事は無かった。人間はもちろん、動物や魔物すらにも出会わなかった。
それでも俺は王都へ向かって歩き続けた。ひたすら歩いた。
この世界には昼と夜の概念がなくなっていたらしい。終始紅い光を放つ空の下、ようやく王都の正門前にたどり着いた。揺れる身体に鞭打つと、王都の中へと入る。
しかし出迎えてくれたのは建造物だけだった。王都中を歩いた。でも誰もいなかった。
王都に人がいないとなれば、もうこの世界には人間はおろか、生物すらは存在しないに違いない。
「ハハ……」
最悪だ。こんな結末があっていいのか? なんで俺は立っているんだ。なんで俺だけがこの世界に取り残されてるんだよ。
思わず倒れ込んだ。もう立つ気力も無かった。
もうどうでもよかった。このまま眠り続けて死のう思った。
ふと、視線の先に自分が腕が見えた。そこには大きさがまばらの青い石が連なったブレスレットが装着されている。既にこれが腕にある事が普遍となっていてこんなものを装備している事すら忘れていた。
「みんな……」
目頭が熱くなる。このブレスレットはかつて学院生時代、初めて訪れた休日の時、ティミーと色違いで買ったアクセサリーだった。
あの頃は、楽しかったなぁ。ちょっとしたハプニングとかもあったけど、なんだかんだ楽しい毎日を過ごしていた。子供の姿をいいことにやんちゃしたりもした。
この世界に来て、俺はたくさんのものを得ることが出来た。それはもう語り切れないほど色々なものだ。
確か最初、人生をやり直してやるって意気込んでたよな……。おごり高ぶってハイリに叱咤されたよなぁ。そう、やり直そうとしたんだ。やり直そうと……。人生を、やり直そうと。
――――やり直し。
できないこと、ないんじゃないのか? だって俺は現に子供の姿になってこの世界にやってきた。それはつまり俺の中の時が逆流したと考えられないだろうか? 時の干渉を経てまでジュダスは俺を転移させる事が出来た。そしてそれは魔力があってこそなされた事。
俺の世界では過去は取り戻せないというのが通説だ、でもそれは魔力を存在しない世界の話だ。
でも、世界間移動をも可能とさせる魔力さえあれば、時間を逆流させる事も可能なんじゃないだろうか。
地面の砂を握りこむと、力の入らない身体を無理やり動かし、騎士団本部へと向かう。
食料の備蓄庫に向かうと、大量の保存された緑の塊、サラダコンニャク(俺命名)を見つけた。ティミー曰く、これは栄養価も高いし、魔力補給にもつながるし、味のベースはサトイモにも似たヒャクネンだから不味くない。たぶん、ジュダスが使ったあれは生きたものを全て消し去る魔術か何かだったのだろう。人は存在しないが、食べ物や飲み物は存在した。既に加工されたり干されたりした果物や肉はいわば死体だ。
サラダコンニャクをとにかく食らう。空っぽに近い身体に活力が沸き、魔力がどんどんと増えていくのが分かった。俺の魔力量は凄まじい。という事はそのぶん、器も大きなものになっているはずだ。百個くらい食べると身体中が魔力で満ち溢れてくるのが分かった。
「やってやるよ……」
独りきりでも研究くらいできる。先んじては情報の収集だ。魔力研究所の資料室なら凄まじい量の研究報告を閲覧する事が出来るはずだ。そいつらを全部読み漁って新たな魔術、時間移動の魔術を開発してやる。確か時の研究もあったはずだ。だいぶ前石碑にその功績が載っていた気がする。
この魔術を創造した暁には世界をこんな事にしたすべての根源、ジュダスを討ち取り、時空改変をこの手で引き起こす。
たぶん、タイムパラドックスで俺は消えるだろう。ジュダスを消し去る事はつまり転移魔術で俺がこの世界に飛ばされないという事。でも、それでいい。あいつがいなければ誰も傷つかなかったはずだ。怪術師も復讐によって王都を混乱に陥れる事もしなかっただろう。ティミーの病の原因もあいつだったのならティミーが苦しむことは無かったはずだ。
「待ってろよ……」
目指す時間軸はジュダスが堕天したその日だ。
目を開けると、そこにはどこまでも紅い空が広がっていた。
どうやら地面上で仰向けにに倒れていたようで何を思うでもなく立ち上がる。傍には農具にされていた頃と同じ姿になったザラムソラスがあったので拾っておく。
前方を見やる。目の前に広がる荒野はどうやら先ほどの場所ととても似ている。いや、先ほどなのかもわからない。どれくらいあれから時間が経ったのか、いやあるいは死後の世界なのか。それならいい。生きていて楽しい事は何も無いのだから。そしてもし仮にここが死後の世界なのだとすれば、きっとあいつらもどこかにいるはずだ。
荒野をひたすら歩き続けると、多くの峡谷が俺の行く手を遮るが、まだ微かに残っているらしかった魔力を行使し、かろうじで乗り越えていく。
どれくらい進み続けたのか分からない。いつの間にか視界の先に広がる紅い空の面積の割合が大きくなっていた事から、どうやらこの荒野の最果て付近まで来たらしい。
少し歩き、果ての向こうを見ると、眼下には残酷な光景が広がっていた。
視線の先、見えるあれは完全に王都だ。しかしその近くに広がっているはずの不帰の森はその色を緑から灰色へと姿を変えていた。それだけじゃない。この世界にあったはずの自然という自然が朽ち果てているらしかった。
つまり、俺のいる世界は決して死後の世界ではなく、ジュダスによって滅亡させられた世界だった。
「なんでだよ……」
思わず声が漏れる。
なんで俺だけが生きてるんだよ……。なんで俺だけがここに立ってるんだよ……。いや待て、もしかしたら王都には人がいるかもしれない。この朽ちた世界でも俺みたいに生きてるやつは、きっといる。
俺は下へ続く道を探しだすと、まっすぐ王都へと進んでいく。
途中で何かの生物に出会う事は無かった。人間はもちろん、動物や魔物すらにも出会わなかった。
それでも俺は王都へ向かって歩き続けた。ひたすら歩いた。
この世界には昼と夜の概念がなくなっていたらしい。終始紅い光を放つ空の下、ようやく王都の正門前にたどり着いた。揺れる身体に鞭打つと、王都の中へと入る。
しかし出迎えてくれたのは建造物だけだった。王都中を歩いた。でも誰もいなかった。
王都に人がいないとなれば、もうこの世界には人間はおろか、生物すらは存在しないに違いない。
「ハハ……」
最悪だ。こんな結末があっていいのか? なんで俺は立っているんだ。なんで俺だけがこの世界に取り残されてるんだよ。
思わず倒れ込んだ。もう立つ気力も無かった。
もうどうでもよかった。このまま眠り続けて死のう思った。
ふと、視線の先に自分が腕が見えた。そこには大きさがまばらの青い石が連なったブレスレットが装着されている。既にこれが腕にある事が普遍となっていてこんなものを装備している事すら忘れていた。
「みんな……」
目頭が熱くなる。このブレスレットはかつて学院生時代、初めて訪れた休日の時、ティミーと色違いで買ったアクセサリーだった。
あの頃は、楽しかったなぁ。ちょっとしたハプニングとかもあったけど、なんだかんだ楽しい毎日を過ごしていた。子供の姿をいいことにやんちゃしたりもした。
この世界に来て、俺はたくさんのものを得ることが出来た。それはもう語り切れないほど色々なものだ。
確か最初、人生をやり直してやるって意気込んでたよな……。おごり高ぶってハイリに叱咤されたよなぁ。そう、やり直そうとしたんだ。やり直そうと……。人生を、やり直そうと。
――――やり直し。
できないこと、ないんじゃないのか? だって俺は現に子供の姿になってこの世界にやってきた。それはつまり俺の中の時が逆流したと考えられないだろうか? 時の干渉を経てまでジュダスは俺を転移させる事が出来た。そしてそれは魔力があってこそなされた事。
俺の世界では過去は取り戻せないというのが通説だ、でもそれは魔力を存在しない世界の話だ。
でも、世界間移動をも可能とさせる魔力さえあれば、時間を逆流させる事も可能なんじゃないだろうか。
地面の砂を握りこむと、力の入らない身体を無理やり動かし、騎士団本部へと向かう。
食料の備蓄庫に向かうと、大量の保存された緑の塊、サラダコンニャク(俺命名)を見つけた。ティミー曰く、これは栄養価も高いし、魔力補給にもつながるし、味のベースはサトイモにも似たヒャクネンだから不味くない。たぶん、ジュダスが使ったあれは生きたものを全て消し去る魔術か何かだったのだろう。人は存在しないが、食べ物や飲み物は存在した。既に加工されたり干されたりした果物や肉はいわば死体だ。
サラダコンニャクをとにかく食らう。空っぽに近い身体に活力が沸き、魔力がどんどんと増えていくのが分かった。俺の魔力量は凄まじい。という事はそのぶん、器も大きなものになっているはずだ。百個くらい食べると身体中が魔力で満ち溢れてくるのが分かった。
「やってやるよ……」
独りきりでも研究くらいできる。先んじては情報の収集だ。魔力研究所の資料室なら凄まじい量の研究報告を閲覧する事が出来るはずだ。そいつらを全部読み漁って新たな魔術、時間移動の魔術を開発してやる。確か時の研究もあったはずだ。だいぶ前石碑にその功績が載っていた気がする。
この魔術を創造した暁には世界をこんな事にしたすべての根源、ジュダスを討ち取り、時空改変をこの手で引き起こす。
たぶん、タイムパラドックスで俺は消えるだろう。ジュダスを消し去る事はつまり転移魔術で俺がこの世界に飛ばされないという事。でも、それでいい。あいつがいなければ誰も傷つかなかったはずだ。怪術師も復讐によって王都を混乱に陥れる事もしなかっただろう。ティミーの病の原因もあいつだったのならティミーが苦しむことは無かったはずだ。
「待ってろよ……」
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