シュレーディンガーのぱんつ
シュレーディンガーのぱんつ
「頼む、お前のパンツを見せてくれ!」
男、十文字泰人は土下座をしている。
理由は簡単だ。俺の目の前にいるクラスメートで幼馴染の結崎花音のパンツを見るためだ。結崎は容姿端麗スタイル抜群成績優秀で、俺とは似ても似つかないほどだ。月と鼈みたいな、そんな感じ。
「なんで……?」
結崎は少し引いた感じに言った。まあ、そうだろうな。そうなるかもしれない。俺だってそうするかも。
けど、男にはしなくてはならないことがある。決意しなくてはならないことがあるんだ……!
「シュレーディンガーの猫、って知ってるか?」
俺は頭を上げて、結崎に言った。
結崎は少し後退るが、俺の話を聞いて頷く。
シュレーディンガーの猫、とは――。
量子力学の問題を突く思考実験として、一九三五年にエルヴィン・シュレーディンガーが提示したものである。
蓋のある箱の中に猫を入れてガイガーカウンターと放射性物質のラジウム、それと青酸ガスの発生装置を入れておく。
もし、ラジウムがアルファ粒子を出したならばガイガーカウンターはこれに反応して青酸ガスの発生装置が発動する。そして、猫は死ぬ。
だが、発動しなかったらどうなるだろうか? それは即ち、ラジウムがアルファ粒子を出さなかった場合……ということになる。
そしてその結果は箱を開けるまでは解らない。解るはずもないのだ。猫の死亡条件をアルファ粒子によるものだけと位置づけることができるのならば、最終的に死ぬ確率とそうでない確率はフィフティーフィフティーになる。あくまで、そういう仮定の上でのことになるが。
そして、箱を開けるまでは猫が生きているか死んでいるか解らない、重ね合わせの状態にあるといえる。これがシュレーディンガーの猫だ。
「……いや、シュレーディンガーの猫は知ってるよ? けど、それがどうしてこれとつながるわけ?」
「パンツも一緒だ」
俺は立ち上がり、言った。
「は?」
溜息を漏らす結崎。
「解るか? 例えばスカートを履いているとしたら、その中にはパンツはあるのかないのか解らないんだよ。実際に捲ってみれば解るかもしれないが、それまでは解らない。パンツを履いているのか履いていないのか、仮に履いているとしたらその色は何色なのか、それは解らないだろ? あくまでも、観測者の話になるけど」
「うーん……、理解したくないけど理解出来る。悔しい」
そう言いながら結崎は頷く。
俺は笑みを浮かべる。
「だろ? だからお前のパンツを見せて欲しいんだよ」
「……いやしい意味ではなかったのね」
いや、いやしい意味がなくて女の子のパンツを見ようなんて男はこの世にはいない。
……そんなことを言ったら殴られるのは確実なので、言わないでおく。
「それじゃ、泰人は科学の発展のため、シュレーディンガーの猫のような重ね合わせの状態が気になるから……それで私のパンツが見たい、と。そういうことなのね?」
こくこく、と俺は機械のように頷く。
「ほんとに?」
結崎は念を押してもう一回訊ねる。
俺も機械めいた動きで頷く。
結崎は足をもじもじさせながら、机に腰掛けた。あとちょっとでパンツが覗ける、そんな位置に。
俺は見えなかったから屈もうとしたが――。
「だーめ」
そう言って結崎は口に手を当てる。
そして、スカートの裾を手に取った結崎は、ゆっくりと俺に見せつけるように、スカートを捲った。
俺の目に映ったものは――。
「……これで満足した?」
俺は鼻血が出そうになっている衝動とその恥じらいが可愛い結崎を襲いたくなる衝動を抑えながら小刻みに頷いた。
結崎は顔を赤らめながら、スカートを元に戻す。
「……で、結論は?」
結崎から訊ねられ、俺は笑顔で答えた。
「女の子のパンツってサイコーだな!」
そのあと、結崎が俺の頭をマジ殴りしてきたのは、まあ、言うまでもないことだろう。
男、十文字泰人は土下座をしている。
理由は簡単だ。俺の目の前にいるクラスメートで幼馴染の結崎花音のパンツを見るためだ。結崎は容姿端麗スタイル抜群成績優秀で、俺とは似ても似つかないほどだ。月と鼈みたいな、そんな感じ。
「なんで……?」
結崎は少し引いた感じに言った。まあ、そうだろうな。そうなるかもしれない。俺だってそうするかも。
けど、男にはしなくてはならないことがある。決意しなくてはならないことがあるんだ……!
「シュレーディンガーの猫、って知ってるか?」
俺は頭を上げて、結崎に言った。
結崎は少し後退るが、俺の話を聞いて頷く。
シュレーディンガーの猫、とは――。
量子力学の問題を突く思考実験として、一九三五年にエルヴィン・シュレーディンガーが提示したものである。
蓋のある箱の中に猫を入れてガイガーカウンターと放射性物質のラジウム、それと青酸ガスの発生装置を入れておく。
もし、ラジウムがアルファ粒子を出したならばガイガーカウンターはこれに反応して青酸ガスの発生装置が発動する。そして、猫は死ぬ。
だが、発動しなかったらどうなるだろうか? それは即ち、ラジウムがアルファ粒子を出さなかった場合……ということになる。
そしてその結果は箱を開けるまでは解らない。解るはずもないのだ。猫の死亡条件をアルファ粒子によるものだけと位置づけることができるのならば、最終的に死ぬ確率とそうでない確率はフィフティーフィフティーになる。あくまで、そういう仮定の上でのことになるが。
そして、箱を開けるまでは猫が生きているか死んでいるか解らない、重ね合わせの状態にあるといえる。これがシュレーディンガーの猫だ。
「……いや、シュレーディンガーの猫は知ってるよ? けど、それがどうしてこれとつながるわけ?」
「パンツも一緒だ」
俺は立ち上がり、言った。
「は?」
溜息を漏らす結崎。
「解るか? 例えばスカートを履いているとしたら、その中にはパンツはあるのかないのか解らないんだよ。実際に捲ってみれば解るかもしれないが、それまでは解らない。パンツを履いているのか履いていないのか、仮に履いているとしたらその色は何色なのか、それは解らないだろ? あくまでも、観測者の話になるけど」
「うーん……、理解したくないけど理解出来る。悔しい」
そう言いながら結崎は頷く。
俺は笑みを浮かべる。
「だろ? だからお前のパンツを見せて欲しいんだよ」
「……いやしい意味ではなかったのね」
いや、いやしい意味がなくて女の子のパンツを見ようなんて男はこの世にはいない。
……そんなことを言ったら殴られるのは確実なので、言わないでおく。
「それじゃ、泰人は科学の発展のため、シュレーディンガーの猫のような重ね合わせの状態が気になるから……それで私のパンツが見たい、と。そういうことなのね?」
こくこく、と俺は機械のように頷く。
「ほんとに?」
結崎は念を押してもう一回訊ねる。
俺も機械めいた動きで頷く。
結崎は足をもじもじさせながら、机に腰掛けた。あとちょっとでパンツが覗ける、そんな位置に。
俺は見えなかったから屈もうとしたが――。
「だーめ」
そう言って結崎は口に手を当てる。
そして、スカートの裾を手に取った結崎は、ゆっくりと俺に見せつけるように、スカートを捲った。
俺の目に映ったものは――。
「……これで満足した?」
俺は鼻血が出そうになっている衝動とその恥じらいが可愛い結崎を襲いたくなる衝動を抑えながら小刻みに頷いた。
結崎は顔を赤らめながら、スカートを元に戻す。
「……で、結論は?」
結崎から訊ねられ、俺は笑顔で答えた。
「女の子のパンツってサイコーだな!」
そのあと、結崎が俺の頭をマジ殴りしてきたのは、まあ、言うまでもないことだろう。
「現代ドラマ」の人気作品
書籍化作品
-
-
22803
-
-
157
-
-
768
-
-
93
-
-
238
-
-
35
-
-
4112
-
-
4405
-
-
104
コメント
ノベルバユーザー601496
文体も丁寧で魅力的です。
シチュエーションもいろいろあり最高です。
今まで読んだ事ないタイプでした。