プラネット、アイラブユー
春の話
1
春は始まりの季節――とはよく言ったものだ。
東京都内のとあるワンルームで、今日から私は生活をはじめる。
新生活をこの部屋ではじめることを思うと、私は嬉しく思うのであった。
荷物の整理を終え、床に寝転がった。
――その時だった。
「あ、あの……?」
私を覗き込むように、ひとりの少年が姿を見せた。
大きめのサイズの服を着た少年は、どこかあどけない表情を見せていた。
と、いうか。
「ねえ、あなた。どうしてここにいるの? ここは私の家なのよ?」
「いや……その、宇宙船が不時着したというか……その……」
頭を掻いた少年は顔を赤らめて、そう言った。
宇宙船? 不時着?
……この少年は、どこか頭をこじらせているのだろうか。
と。
私は思って起き上がると、そこには円盤が置いてあった。
ちんまい、ミニサイズのそれ。
人っこひとり乗れるかも怪しい、それである。
「……え? ほんとうにそれに乗ってきたの」
こくり、と少年は頷く。
そんな馬鹿な。ファンタジーでもあるまいし。
でも、少年は目の前にたっているのだ。
事実にほかならないのだ。
そう思うと私は頭を掻いて、右手を差し出した。
「?」
少年は首を傾げる。
「握手よ。はじめましての挨拶」
それを聞いて、少年は笑って何度も頷いて、私の手を握り返した。
――それが、私と少年の最初の出会いだった。
2
何度も交流していくうちに、少年は日本語を話すことが出来ないようだった。
でも、私はきちんと少年の流暢な日本語を聞いた。はて、どうしてだろう?
少年曰く。
「この首についている機械が言語を読み取って解析してくれて自動的に言語を翻訳してくれます。僕の場合も同様です」
……つまりは最新鋭の翻訳装置を持っている、とのことらしい。
でもそれじゃ身につかないよ、なんてことを話したら恥ずかしそうにもじもじして、
「それじゃ……教えていただけますか?」
「いいよ」
私はその言葉に、「いいえ」なんて言えるはずもなかった。
少年には先ず書くことを教えた。あいうえおから始まる平仮名に、カタカナ、漢字とグレードアップしていく。少年は何度も「難しいですよ!」とか言っていたけれど、数日もしていくうちに文字を書くのを覚えていった。
どうやら、少年は頭がいいらしい。
少年は僕だけ教えてもらうのはダメです、と言っていろんなことを教えてくれた。例えば、宇宙について。宇宙はどうして無限にあるのか、だとか。
「宇宙って無限にある、って私の星では言うんだけど」
「いいや、そんなことはないです。宇宙は限りあります」
「えーっ、そりゃ大発見だ」
「一番端っこには星があって、その先は何もない暗闇が待っています。その惑星に人は住めないですけど、宇宙言語で看板が書かれてありますよ、『この先 宇宙ではありません』って」
へえ。
面白い話だけど、なんだかイメージ崩れちゃうな。
「それに宇宙って場所によっては重力が存在するんですよ。宇宙はゆっくりと回転していますから、それによって遠心力が働くんです」
「そうなの? でも、宇宙=無重力ってよくある話じゃない?」
「場所によって、ですけどね。少なくとも銀河系にはそんな場所はありませんね」
「じゃ、それを見ることは出来ないわけだー」
「僕の宇宙船が治れば三日で見に行けますよ」
三日……ってどれだけ速い速度で航行するんだ、あの宇宙船は。もしかしたらタイムマシンみたいに過去に行くことが出来るんじゃないよね。
……とまあ、そんな話を続けていたりして。
気が付けば、春が夏に変わっていた。
春は始まりの季節――とはよく言ったものだ。
東京都内のとあるワンルームで、今日から私は生活をはじめる。
新生活をこの部屋ではじめることを思うと、私は嬉しく思うのであった。
荷物の整理を終え、床に寝転がった。
――その時だった。
「あ、あの……?」
私を覗き込むように、ひとりの少年が姿を見せた。
大きめのサイズの服を着た少年は、どこかあどけない表情を見せていた。
と、いうか。
「ねえ、あなた。どうしてここにいるの? ここは私の家なのよ?」
「いや……その、宇宙船が不時着したというか……その……」
頭を掻いた少年は顔を赤らめて、そう言った。
宇宙船? 不時着?
……この少年は、どこか頭をこじらせているのだろうか。
と。
私は思って起き上がると、そこには円盤が置いてあった。
ちんまい、ミニサイズのそれ。
人っこひとり乗れるかも怪しい、それである。
「……え? ほんとうにそれに乗ってきたの」
こくり、と少年は頷く。
そんな馬鹿な。ファンタジーでもあるまいし。
でも、少年は目の前にたっているのだ。
事実にほかならないのだ。
そう思うと私は頭を掻いて、右手を差し出した。
「?」
少年は首を傾げる。
「握手よ。はじめましての挨拶」
それを聞いて、少年は笑って何度も頷いて、私の手を握り返した。
――それが、私と少年の最初の出会いだった。
2
何度も交流していくうちに、少年は日本語を話すことが出来ないようだった。
でも、私はきちんと少年の流暢な日本語を聞いた。はて、どうしてだろう?
少年曰く。
「この首についている機械が言語を読み取って解析してくれて自動的に言語を翻訳してくれます。僕の場合も同様です」
……つまりは最新鋭の翻訳装置を持っている、とのことらしい。
でもそれじゃ身につかないよ、なんてことを話したら恥ずかしそうにもじもじして、
「それじゃ……教えていただけますか?」
「いいよ」
私はその言葉に、「いいえ」なんて言えるはずもなかった。
少年には先ず書くことを教えた。あいうえおから始まる平仮名に、カタカナ、漢字とグレードアップしていく。少年は何度も「難しいですよ!」とか言っていたけれど、数日もしていくうちに文字を書くのを覚えていった。
どうやら、少年は頭がいいらしい。
少年は僕だけ教えてもらうのはダメです、と言っていろんなことを教えてくれた。例えば、宇宙について。宇宙はどうして無限にあるのか、だとか。
「宇宙って無限にある、って私の星では言うんだけど」
「いいや、そんなことはないです。宇宙は限りあります」
「えーっ、そりゃ大発見だ」
「一番端っこには星があって、その先は何もない暗闇が待っています。その惑星に人は住めないですけど、宇宙言語で看板が書かれてありますよ、『この先 宇宙ではありません』って」
へえ。
面白い話だけど、なんだかイメージ崩れちゃうな。
「それに宇宙って場所によっては重力が存在するんですよ。宇宙はゆっくりと回転していますから、それによって遠心力が働くんです」
「そうなの? でも、宇宙=無重力ってよくある話じゃない?」
「場所によって、ですけどね。少なくとも銀河系にはそんな場所はありませんね」
「じゃ、それを見ることは出来ないわけだー」
「僕の宇宙船が治れば三日で見に行けますよ」
三日……ってどれだけ速い速度で航行するんだ、あの宇宙船は。もしかしたらタイムマシンみたいに過去に行くことが出来るんじゃないよね。
……とまあ、そんな話を続けていたりして。
気が付けば、春が夏に変わっていた。
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