レイニー・デイズ・ストーリー

神城玖謡

ロマンティック乙女モード

  5

 キラキラ

「絶賛お目々キラキラ読書中の所申し訳ないんだけど……」
「ふわぁぁ……」

 キラキラ

「あの~、聞こえてる?」
「ふうぇぇ……」

 キラキラ

「ねぇ」
「はぁぁ……」

 キラキラ

「うん、これはロマンティック乙女モードだね……」
「ほわぁぁ」

 キラキラ

「お願いだからつっこんでぇ~」




「──ふぅ」

 パタりと、本を閉じる。

 7月の初め頃、雨が降る放課後、文芸部の部室での会話。…………会話?

「どうだった?」

 恋人同士になった、次の日の放課後。

「うん、 おもしろかったぁ。こんなにぃいいほんがぁあるならぁ(こんなに良い本があるなら)、もっとぉはやくからぁよみたかったぁ(もっと早くから読みたかったぁ)」
「そ、そう……ちなみにこれ三十巻くらい持ってるんだけど……」
「多いなぁっ」
「続きも……読む?」
「いいのぉっ!?」
「ぅ、視線がまぶシィ」
「いやぁ、やっぱりぃあのぉシーンだよぉ。はくばのおぉじさまぁがぁでてくるところぉ~」

 ウットリとその光景を想像していると

「絶賛ロマンティック乙女モードの所悪いんだけど……」
「え、なぁに?」
「否定しないんだ……。いやね、予想より女心化が進んでるんだよね」
「そうなの?」

 すると、今読み終えたばかりの本を指差した。

「この本、去年も一回貸したんだよ」
「……」

 全然記憶にない。

「その時ね、読み終わったキミが『……駄目だ。あまりにも定番かつ、ベタかつ、ご都合主義かつ、甘~いかつ、キラキラな話で付いていけねぇわ』って言ったんだよ」

 ……そう、それは3日前に『一言で言えば───』と言っていたアレだ。

「だから同じ事言ったら思い出すかな? って思ったんだけど……」
「ぜんぜんおぼえてないとぉ」
「うん。……まぁその本ね、ロマンティック系が好きなだけに人気なんだけどさ、読んで此処まで イイネ! って言ったって事は………」
「ついったぁ? にょしんかがぁすすんでるとぉ」
「予定では半年くらいかけて現状になるはずだったんだけどね」
「へぇ」
「それに、今日の体育の時なんか普通に周りの人としゃべりながら着替えてたし」
「うーん、気付かない内にぃ、女心化進行中って事かぁ」
「でも良いんじゃない? むしろ体と心の性が逆の方が、精神的に悪いよ」
「うーん、そうだよねぇ」
「…………所で、その“ロマン乙”っていつまで続くの?」
「その略し方は駄目だろっ!」
「あ、戻った」
「はぁ」

「う~ん、ツッコむとこっちに戻るって感じだね。はっきり言ってロマン乙の時、天然系ポワポワ女子だもん」
「天然系、ポワポワ女子……」

 新しい人格に、新しい属性……俺っていったい………

「そもそも女に成りたかったのも、ある意味、男のロマンなんでしょ?」
「う〜ん、つまり……」
「キミが前からロマンチストってことだよ」
「……」
「どうしたの?急に黙って」
「いや さ、ロマンチストな男って……気持ち悪くないか?」
「そう?」

 いや、考えても見ろ。だいの男が、雨降ってる外見ながら、溜め息付いてる様を。

 俺は考えただけでも……

「もう、男ならシャキッとしろ! って、言いたくなるよ」
「ふ~ん、つまり男らしい方が好き、と」
「……何て言うか、単純に男らしい方が、こう、良くない?」
「まぁ、分からなくもないけど……。ふふっ」
「な、なんだよ……」
「いやぁ、何か普通にガールズトークしてるなぁって」
「……」

 そういえば、特に気にせず男のタイプ言ってたような……

「何だか微妙な気持ちになっていた俺は「男らしい方が………」と、私が、珍しく真面目な顔で呟いてる事に、気が付かなかった…………」

「いや、それをお前が言うのかよ」
「フフフッ、私の数少ない夢の1つに、プラグを立てるって言うのがアルンダヨ」
「なんだ、それ……」
「それともう1つ」
「?」
「最近、地の文少ないね」
「それ言っちゃ駄目なヤツっ!」

「今回は落ち無し!」
「えぇっ!」

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