オリガミ

穂紬きみ

000【物語のはじまり】

ここに、イザナキとイザナミが産んだ弓形の列島がある。

スサノオはアマテラスが治める高天原を追放されて地上に下り、この島で小さな国・出雲を造った。

スサノオは国王となり、建国を手伝ったオオトシはその補佐官となる。

高天原の最先端技術を取り入れた出雲は僅か30年足らずで劇的に発展し、やがて大きな街が出来た。

街には高層ビルが立ち並び、道路には自動車やバイクが走り、昼と夜の区別なく光り輝く。

光りあるところ影あり。
人が集うところ罪あり。

急増する凶悪犯罪に立ち向かうべく、スサノオは絶対的権力を持った警察組織を作った。

オオトシの息子であるミトシは、そんな警察組織に所属するひとりである。

出雲暦30年3月。
まだ肌寒い春だった。

「……みつけた」

事件解決の為に忙しく駆け回るミトシの姿を、低いビルの屋上からジッと見つめる幼女がひとり。

長い黒髪と黒いセーラー服が風に揺れる。

その整った顔に表情は無い。

欠落した感情。
殺意だけが、彼女に与えられた唯一の表現。

凍りついた心は、春風にも揺るがない。

ふたりの出逢いが、出雲に何をもたらすのか。

物語の始まりは、すぐそこまで迫っていた。


【つづく】

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