ブレイブ!

桃楓

2

 駅からでると、目の前に巨大な白い壁がみえた。
どう見ても、擁壁だ。中に何があるのか全く見えないし、音も聞こえてこない。ただ、見渡す限り壁だ。
「うわぁ…。これ学校なの?敷地広いけど…校舎見えないねっ‼︎」
「んー、まあ傭兵の養成校だからな。攻め込まれることも想定してぢゃないか?」
「え、ここモンスターとかの駆除が重だって書いてあったよ?」
「表向きはっだろ。大体、ずっと家にいなかった親父がいきなり帰ってきて、編入手続きしたからってとこだぜ。怪しいだろ。」
テルはそう言って笑った。
 ママが死んだのが 14歳の時…今から3年前。
その後、すぐに今度はパパが家を出た。調べたい事があるとだけ言って…。
学費や生活費は振り込まれていたから、全然困らなかった。不安な事はあったけど、テルがいたから平気だった。
 偉そうにしてるけど、本当に困ったときは助けてくれた。
 でも、1ヶ月前にいきなりパパが帰ってきた。
『この学校に編入しろ。手続きはしといたから、かならずだ。』それだけ、言うとまたすぐ家をでた。
 守衛室でテルが入校手続きをし、重い扉が開いた。開けてくれた守衛のおじいさんにお礼をすると、頑張れよと手を振ってくれた。
  外観とは違い、なかは華やかだった。塀の中に校舎と、学生寮、カフェやショッピングモールもあった。もちろん、ウェポンショップや魔導書専門店もある。
 「うわぁ!すごいね!街がまるまる入ったみたい!」
「いいから、行くぞ。あと30分あるけど、この広さだろ。試験会場の案内、確認するから。」そう言って、テルは手を出した。
 そういえば、鞄はずっと私が持っていたんだ!自分でもてば良いのに!怖くて言えないけど…
鞄をガサガサ漁ると、紙が1枚ヒラリと落ちた。落ちた紙を見ると、編入試験案内とかいてある。拾おうとしゃがんだ瞬間、強い風が吹いて紙を巻き上げた。入試案内は、大空をひらひら舞い、校舎の一室に入っていった。
「あれは、3階かな?すごく舞いあがったね!」
「何のん気にいってんだよ!早く取りに行けよ!会場分かんねーだろ!」
「はいっ‼︎」
テルの余りの剣幕に驚き、猛ダッシュで校舎に向かった。
…見つからなかったら、テルに殺される!
「っ!ちょっまて!方向音痴だろっ!ユリア
!」テルが後ろから大声で叫んだが、ユリアは校舎の中に消えた後だった。

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