ゲームの世界で天下統一を目指す俺

ハタケシロ

第二十四戦

『戦国最強』

それは単に兵を沢山倒しただけでは名乗れない。
`千人切り,がいい例だろう。
また、一対一の勝負をすべて勝ってきた、あるいは負けたことのないだけでも
『戦国最強』は名乗れないだろう。

ではどういう人物を『戦国最強』というのか。
あるいは呼ばれるのか。

それは初めて武器を持ち戦った時から今まで一度も傷をつけられたことのない者を呼ぶ
『戦国最強』と

つまりは一度も攻撃を食らったことが無いということ。
それは圧倒的な攻撃力と戦センスを持っているということであり、
戦国の世界では最強ということ。

何が言いたいのかというと
『戦国最強』
と呼ばれる本田忠勝が初めて傷をつけられたのだ。



右頬を流れる血を感じ
本田忠勝はこの時自分が攻撃を食らったのだと理解した。
目の前には前田家の当主、前田慶次。

本田忠勝は自身が攻撃を食らった驚きよりも悦びに満ちていた。

(やっと本気で戦える武将てきが現れた)

それは初陣からずっと願っていたことだった。
類まれな才能を持つ本田忠勝は初陣から今まで、
自分と互角に戦える武将がいなかった。
大心とは従関係のため戦えなかったから。

だからこそ本田忠勝は悦んでいた。

「今のは雷撃斬か?」

本田忠勝は自分の頬を掠めていった攻撃の正体を知るために
前田慶次に問う。
速さも申し分なかったが何よりも攻撃力が凄まじかった。
本田忠勝の防御を上回ったのだ。
(本田忠勝にとって久しぶりの防御)
その攻撃の正体がただ知りたかった

そして前田慶次も答えないほど性格は悪くない

「ああ、普通の斬撃だけじゃお前を倒せないと思ったからな。雷を加え、特殊攻撃にした。だがさすがだな『戦国最強』。びくともしないなんて」

「ふん。初手の攻撃のくせに何を言っている?まあ初手からこれ程の威力。さすがは前田慶次と言ったところか」

「俺を知ってんのかい?そりゃ光栄だっ!」

「自分が天下に名が轟いているということを自覚しろ」

それから暫し無言の間が続く

最初に口を開いたのは前田慶次だった。
だが本田忠勝にではなく、本来この場にいない自分を呼んだ者に

「嬢ちゃん下がってな。もしくは撤退しろ。大丈夫だ、ここは前田が引き継ぐから敗戦にはならねぇ。」

「嫌じゃ!妾も戦う!」

「言いたかねぇが、邪魔だ。俺はお前を庇いながらの戦は無理だ」

「あうぅ。わ、分かった」

「いい子だ。これが終わったらお前の稽古、いや戦に付き合う」

「ほ、本当か!?本当なんじゃな!?」

「ああ。本当だ。それと秋田の方も気にすんな。あっちにもちゃんと援軍を送ってある」

「了解じゃ!じゃが妾も一武将として敗戦同様の撤退は気が引ける。妾は慶次が勝つと信じここに残る!」

「そうかい。一武将としてならしゃーねーな。その代り本陣の隅にいろ。巻き込まれるなよ」

「分かっておる。それくらいは弁えておるわ」

伊達政宗は前田慶次との交わした約束通り
自本陣の隅に移動し、巻き込まれないようにした

前田慶次は再び本田忠勝に向かい合う

「攻撃してこないなんてな。隙だらけだったろ?今」

「ふん。伊達政宗と会話しながらちゃんとこちらを警戒していた者の言葉とは思えねぇな。だが俺は例えお前が警戒していなくても、無防備なお前を攻撃したりはしない。やっと本気でやりあえる敵を見つけたからなあ!」

本田忠勝が前田慶次に向かって突進する。
無論、槍でだ。

前田慶次も矛でそれを応戦し、二人の間には火花が散った。

『戦国最強』対前田慶次の本気の戦いが始まった



今頃は慶次さんも援護してるのかなと思いつつ、
俺は秋田で苦戦している伊達軍の救援に来た。

今いるところは伊達軍の本陣だ

「サクラ、状況は?」

俺達は武田との戦のあと
慶次さんの伝令を預かってきたというソードに
秋田の伊達軍の救援に向かえという慶次さんの伝令を聞き
急ぎ、秋田に来た。伊達とは天下を取りあうライバルだが、
慶次さんの命令もあるし何より今はそんなの関係ないと思った。

着いたのはついさっき。
サクラは伊達軍から戦の状況を聞き出すためにあちこち行っていたが今戻ってきた。

「思ったよりは悪くなかったわ」

「というと?」

「敵の幹部クラスが一人しかいないという情報を得たわ。」

「ホントに?じゃあ何で伊達は劣勢なんだ?」

俺は少し考えたが分からなかった
敵の幹部は一人、通常ならたった一人の幹部では優勢は築けない
(『総大将』レベルならできるけど)
なのに何で伊達は劣勢なんだ?兵の数で勝ってるというのに

そんな俺を見てサクラが劣勢の理由を話してくれた

「確かに通常の伊達軍なら劣勢になるどころか逆に圧制していたでしょうね。でも今伊達は二か所を同時に攻められてる。一方の戦場は敵本体が攻めてきてるからそれなりの戦力をつぎ込むしかない。となると必然的に伊達も本体で迎え撃たなきゃならない」

「ああ。でも普通なら本体並にとは行かないが、もう一方の方も、それなりに守り切れる戦力を置かないか?」

「普通ならね。でも今回は相手が悪かった。なんせ相手は名家、名門が揃う青森を制定した舞剣よ?私達が長宗我部をうちに加えたように名だたる武将を取り込んだに違いないわ。となれば・・・」

「伊達本体も最高の物にしなきゃならないか」

「そ。だからここの布陣は弱い。でもそんな状況下でよく途中までだけど均衡状態にしたものよ。」

「そう考えると凄いな」

「でしょ?それを可能にしてたのが片倉という伊達の幹部」

「ん?伊達にも幹部がいたのか?」

しかも片倉と言えば言わずと知れた伊達政宗の補佐役として某ゲームの人気キャラじゃねーか
なんで片倉っていう凄いのまでいて伊達は劣勢なんだ?

「ええ。いたのよ。そして戦死したらしいわ」

「え・・・」

声にならなかった。
戦死という言葉を初めて聞いたからかもしれないし、
片倉という俺でも知っている名補佐役が死んだからかもしれない。

「敵の幹部と交戦して弱っているところに敵兵に囲まれて戦死したらしいわ。そして武力の面、精神的な面でもここの伊達軍を支えていた人が死んじゃったから・・・」

「劣勢になったのか・・・」

弱い戦力しかない状態で多分、
一人で獅子奮迅の活躍をしていたのだろう。
その人が死んだのだ。伊達の被害は内面的に大ダメージを受けたのだろう。

「切り替えるしかないわ。私達までしょぼくれたら援護に来た意味がないもんね」

「確かにその通りだな」

「注目すべきは敵の幹部クラス・・・いえ幹部よ。もしかしたら「美蝶姫」かも」

「「美蝶姫」?」

「うん。迅の存在が大きすぎて忘れてたけど、迅と同じ時期くらいに活躍している武将よ。戦場に舞う綺麗な蝶の様子から「美蝶姫」」

「そんなやつが今、ここにいるのか」

「たぶんね、伊達の人の話だと女の武将が強いって言ってたから」

「そうかいっちょ拝見がてら行きますか」

「一応聞くけどやましい気持ちはないのよね?」

「無いとは言い切れん」

だって見てみたいじゃん

「はあ、まあいいわ、敵の強戦力は「美蝶姫」?しかいないというのは確かだから、それに気をつけて援護しに向かいましょう」

「ああ。とりあえず近場の拠点から行くか」

俺とサクラは伊達本陣を出て陥落寸前の拠点の援護に向かった



「迅!ここは後は私に任せて、隣の落ちかかってる拠点に向かって!多分、「美蝶姫」がいる!」

「分かった!じゃっここは任せた」

俺はサクラの命令に従い、落ちかかっている拠点に向かった。

俺達は最初の拠点の援護に成功した後、拠点を一つ奪還し、
今はサクラが後処理をしている拠点を奪還した。

落ちかかっている拠点付近に着くと
かなり伊達が押されているようだった

俺は刀を抜きつつ拠点に入り、
視界に入った敵兵を斬り倒していく

敵兵の

「もしや前田の`千人切り,!?」

「姫様!強敵が!」

という声を聞き

姫と呼ばれている方に体を向ける
どうやらあれが舞剣幹部、「美蝶姫」らしい
少し距離があって顔は認識できないが、
服装からみても、呼ばれ方からしても、周りに倒れている多くの伊達兵を見ても
間違いないだろう。

俺は敵兵を斬りつつ「美蝶姫」との距離を詰める

俺がどんどん近づくたびに敵兵も多くなる
そして弓矢が飛んできた。
俺は躱したり、刀で弾きながら距離を詰める
どうやら「美蝶姫」は弓をつかうらしい

もう少しのところまで来たとき俺は
水平に飛んだ。
ゲーム補正で俺は通常の体よりもスペックが高い。
傷の治りが早いのが例だ。(死なないためかもしれない)

そして一気に間合いを詰めて
刀を振る

だが相手も短刀で防いだ
弓のほかに短刀も持っているとは分からなかった

ここで俺はもう目の前にある相手の顔「美蝶姫」の顔見た
同じくして相手も俺を見た

そしてどちらも素っ頓狂な声を上げた

「え・・・・?」

「・・え・・?」

そして長い、いや一瞬の出来事だったが
交差が終わり、俺は地面に着地する。

そして振り返り声出した。
同じくして相手も、いや彼女も声を出す

「咲・・・・」

「迅・・・・」

彼女の久々の顔を俺は見た




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