ギルティ・アビリティ

皐月 遊

2話 「異変」

ピリリリリリリリ‼︎

セットしていたスマホのアラームが鳴る。

僕の頭の上で鳴っているため、凄くうるさい。

僕は重い身体を無理やり起こし、アラームを止める。

時刻は朝の6時、今日は日曜日だ。 本来なら日曜日は9時くらいまで寝ている僕だが、今日は違った。

「さて…情報収集しに行くか」

そう、僕が今日早めに起きたのは、情報収集をする為だ。

サラさんの事……能力者のこと……何故僕が生き返ったのか……知りたい事は山程ある。

とりあえず歯を磨き、必要最低限の物を持ち、僕は家を出た。

家を出て少し経つ頃、僕は眠気に耐えられず大きな欠伸をした。

「……ん〜…やっぱりまだ眠いな…」

昨日カイとハンバーグを食べに行き、家に着いたのは夜中の3時だ、つまり僕は3時間しか寝てないのだ。

そりゃ眠いに決まってるだろう。

「コーヒーでも買うか」

コーヒーは眠気覚しに良いと聞く。

なので近くにあった公園に行き、公園の中の自動販売機でいつもは絶対に飲まないブラックコーヒーを買い、近のベンチに座ってコーヒーを口に含んだ。

「うぇ…やっぱり苦い…よくこんなの飲めるなカイの奴」

少しは目が覚めた気がする。

僕はベンチに座りながら今日の事を考えていた。

「さて…どこから調べるか……」

駅前は…行っても何もないな。

サラさんを探すわけにもいかない、もしもう一度殺されたりしたらもう生き返る事は出来ないだろう。

警察は……信じてくれないだろうなぁ…

ならあの公園しかないか。

「よし…行くかー」

そうと決まれば即行動だ。

僕は昨日自分が殺された公園を目指して歩き出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれから道に迷いながらも何とか昨日の公園に辿り着いた。

「……で、来たは良いものの…」

何をすれば良いんだろうか。

ぶっちゃけ僕はこの公園で殺されただけだ。 どうやって殺されたかも分かってるし、犯人が誰かももちろん分かっている。

「まぁ、とにかく進むか」

考えても仕方がない、せっかく来たんだから中に入ってみよう。

僕はそう決心し、昨日僕が殺された場所まで歩いた。

「…この辺りか…」

そうだ、ここだ。 この公園の地面は砂なので、足跡がくっきり残る。 そして僕の視線の先の地面は人1人が横になったように凹んでいた。 間違いない、ここで僕はサラさんに……

思い出すだけで身体が震えだす。

「…震えてる場合じゃないだろ僕…今は何か手がかりを…」

何かないかと地面を見た。

そこには昨日のものと思われる足跡があった。

僕の足跡と、これは…サラさんの足跡だな。

足跡は来た時の足跡て帰る時の足跡がくっきり残っていた。

…………あれ?

「1つ多くないか?」

もう一度数えてみる。

昨日の夜僕とサラさんがここに来た時で2人分、サラさんが僕を殺して帰る時で1つ、僕が生き返って公園を出た時の足跡が1つ。

そして今来た時の僕の足跡が1つ。

来る時と帰る時の足跡を合わせて5個の足跡があれば良いのだ。

だが足跡は……

「1人分…多い」

僕とサラさんの足跡のほかに来る時と帰る時の足跡……2つの足跡があったのだ。

ただの一般人という事もありえるが、この足跡はちょうど僕の身体によって出来た凹みの前で止まっている。

ただの一般人ではない。

ならサラさんか? 

いや、足跡の大きさが違う。

「この足跡…誰の足跡なんだ…? 」 

昨日は夜中だったから気づかなかったが、まさかこんなものがあったとは……思わぬ収穫だ。

スマホを見るともう8時を過ぎていた。

道に迷ったせいで思ったより時間がかかってしまったのだ。

「お腹減ったし、弁当買って一旦家に帰るか」

作るのは面倒臭いしコンビニ弁当でいいか。

そう決めて僕は公園を出た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、あった!」

公園を出て大分歩いたが、全然コンビニが無く、20分くらい歩いた時、目の前にコンビニが見えて来たのだ。

ここら辺は本当に来た事がない。 住宅街であり、マンションや家が沢山ある。

コンビニの前は工事中で、何か新しい建物ができる予定なのか、鉄骨がぶら下がっている。

あんなの落ちて来たら即死だな。

「……なんて言ったら降って来たりして…」

上を見て見たが、鉄骨は揺れているだけで落ちはしなかった。

まぁ、そんな簡単に落ちたら危ないしな。

見た所業者の人も居ないっぽいし、今日は休みなんだろう。

「さて、何にするか」

そう言いながら僕はコンビニに入った。

「唐揚げ弁当かハンバーグ弁当……迷うな」

ハンバーグは昨日食べたし、唐揚げでいいか。

僕は唐揚げ弁当を持って行き、会計をした。

「ありがとうございました〜」

「よし、あとは帰るだけだな」

コンビニから出た僕は帰ってから何をするか考えていた。

もう外を歩いても何もないだろうし……ネットで調べて見るか。

と、そう思っていた時。

僕の真上でブチッ…と言う音が聞こえた。

「ブチッ…?」

嫌な予感がして上を見て見ると、先程見た数十本の鉄骨が落ちて来ていた。

マジかよ…‼︎

まさか本当に落ちて来るとは思わなかった。

僕は急いでその場を離れようとした……だが、こんな時に躓いて転んでしまったのだ。

「嘘だろ…!」

今から立っても間に合わない。

もう鉄骨はすぐそこまで来ている。

終わった。 折角生き返ったのにすぐこれだ。

嫌だ……死にたくない。

「嫌だ…っ!」

意味が無いと分かっているのに、手を頭の上に乗せて蹲る。

こんな事しても無駄だろ僕……

もう諦めかけていた時……

ビリビリビリビリッ‼︎

と言う音がすぐ側で聞こえた、そしてその数秒後、鉄骨の落ちる大きな音がこの辺りに響いた。

「……え?」

なんで生きてるんだ僕……明らかに鉄骨に潰される筈だったのに…

僕はゆっくりと顔を上げ、周りを見てみた。

「なんだよコレ…」

目の前には、異様な光景が写っていた。

鉄骨が、僕だけを避けるように転がっていたのだ。

そして、全ての鉄骨の一部分だけが焦げていたのだ。

「大丈夫ですか⁉︎」

目の前のコンビニから店員さんが走って来た。

そりゃそうか、あんなに大きい音が鳴ったら集まるわな。

僕はとりあえず頷き、辺りをもう一度見て、そして考える。

鉄骨が僕を避けるように転がっていて、鉄骨の一部分が焦げている。 そして鉄骨が落ちる前、確かに聞こえた電気のような音……


なんだ、もう答えは出てるじゃないか。


鉄骨は避けるように転がっていたんじゃない。
”僕が避けさせたんだ”

鉄骨を焦がしたのも僕、すると必然的にあの電気のような音も僕が出した事になる。

それはつまり……

僕は、能力者になったという事だ。

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