覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜

鉄道王

第33話「ギャンブラー」

「アザゼル……」

空から降りて来た男にアスモデウスは言った。

ガブリエルだけですら危ない感じだったのに、もう1人の天使が来るなんて……!!

それでもあくまでアスモデウスは余裕の表情を崩さない。

「えーっと……こいつ、アスモデウス?……強いの?」
「えぇまあ……そう思ってお前を呼んだのですがね……ただの凡夫です」

ただ、と、ガブリエルは付け加え

「何か余裕がありますし……隠していることがあるのかもしれませんね」
「ふーん……ってあれ?お前依り代は?」
「あぁ、殺しました。気に入らなかったので」
「ははは、まあ俺もいるし負けることはない」

アザゼルとガブリエルは会話を終えると、2人アスモデウスに向かって走り出した。

「一瞬で終わるだろ、こんなのよ……!?」

アザゼルの拳をアスモデウスは受け止め、片手からアスモデウスCを創り出し、D、E、と何人も生み出していく。

「面倒ですね……時間稼ぎですか?」

ガブリエルは鬱陶しそうに何人ものアスモデウスを斧で薙ぎ払っていく。

飛び散るアスモデウスの破片からもまた、アスモデウスが増殖する。

アスモデウスたちは、一斉にアザゼルに掴み掛かり、アザゼルの動きを止めた。

「ちょっ!邪魔なんだよ……!!」

アザゼルの体がぼうっと赤く染まり、アザゼルに触れていたアスモデウスたちの腕が焼ける。

「君の能力は、『熱』……か」
「うらああああああ!!」

アザゼルの体はさらに真赤に染まって行き、発せられた熱気は4,5メートルほど離れた私の肌にまで伝わった。

「近づけねえだろ!近づいてやるよ!!」

アザゼルは、さらに温度を上げながらアスモデウスに歩み寄っていく。
近くの窓ガラスがバリバリと割れていき、破片が散乱する。

アスモデウスは、アザゼルが近づいて来ても、退こうとすることはない。

アザゼルが、アスモデウスの目の前まで来た時、ガブリエルが叫んだ。

「アザゼル!無防備に近づくのはやめなさい!!どんな能力を隠しているか分からないんですよ!」

「もう遅い」
「ア?」

アスモデウスはふらっとアザゼルにもたれかかると、アザゼルを押し倒した。

すぐに起き上がると、アスモデウスの体はダラダラと濡れていた。

傍に倒されたアザゼルは、ピクリとも動かず、喋ることもしなかった。

「お前……何をしたのですか……?」
「何をしたんだと思う……?」

アスモデウスは、微笑し、ガブリエルに歩み寄っていった。

アスモデウスB〜Eに抑えられ、身動きが取れないガブリエルは、迫り来るアスモデウスを無言で睨みつける。

「安心してくれガブリエル。アザゼルは死んじゃいないよ」
「安心しろですって……?」

ガブリエルは、くつくつと静かに笑い出した。

「私が心配していることなんて、なに一つありませんよアスモデウス」

ガブリエルがそういうと、彼は死んだようにその場に倒れた。

「……?なにしてるんだ……?」

アスモデウスBがガブリエルの腕を掴んで持ち上げた。
すると、アスモデウスBの身体がかっと光り、大爆発を起こした。

「うわぁあっ!?」
「きゃぁぁああ!!」

私は、近くにいた子供たちをかばうようにしてアスモデウスBに背を向けた。

「いったぁ……ってか熱い……!」

背中に火傷を負ってしまったみたいだ。
煙が収まると、そこにはガブリエルが立っていた。

「くくくく、これが私の能力ですよ」

これが能力?ってことは、人を爆発させる能力!?そんなの、絶対に勝てるわけないじゃん!
私がびびっていると、いや、と、アスモデウスが言った。

「君の能力は、一つじゃあないだろ?それか、発動する条件がかなり厳しいものか」
「どうでしょうね?」
「君の能力が任意の相手を爆発させるなんて能力だったら、はじめから僕を爆発させればいいだけだろ?それをしないってことは、発動になんらかの条件があることは間違いないんだ。
あとは、その条件の大きさだな。条件が大きいものなら能力は、それだけかもしれない。でも、小さな条件で相手を即死させるなんてありえない。他の能力と複合させた力か」

アスモデウスの推理を聞いて、ガブリエルは笑みを浮かべる。

「その通りですよアスモデウス。これは、2つの能力を合わせた力です。では特別に、それが何の能力なのかを教えてあげましょう」

ガブリエルは、私たちの方に歩いてくると、私の首を掴んだ。

「おい!触るな!!」

アスモデウスが怒鳴ると、ガブリエルはその場に倒れこんだ。
すると、私の意識は朦朧としてきて、代わりに私の口からはガブリエルの言葉と思われるセリフが吐かれた。

「私の能力の1つ、『憑依』。これは、相手の肌に直接触れることで発動できる能力です」

ガブリエルは私の体ですっと立ち言った。

「そして私の2つ目の能力、『自爆』!今これを使えば、この女は木っ端微塵にできますよ?あぁ、ちなみに、憑依した状態で『自爆』すれば、私の意識は憑依前の最後の肉体に戻ります」
「な……」

さて、とガブリエルはアスモデウスを見て笑った。

「今私がここで『自爆』すれば、この女だけでなく、このガキどもも巻き込んでバラバラにできますよ?」

ガブリエルの脅迫に、アスモデウスは慎重な様子でゆっくりと口を開いた。

「僕にどうしてほしいんだ?」
「そうですね、ま、この女をよこしなさい。この女……面白い」

面白い……?ガブリエルと会ったのはこれが初めてだよね……?大して話もしてないし、ガブリエルの前で大した動きもしてないんだけど……
一体私のなにが面白いのだというのだろう。

* * *

僕は……どうすればいいのだろう?
今ガブリエルに逆らえばノエルは自爆させられ死んでしまい、さらに子供たちも巻き込んでしまう。
だからと言って、このままノエルを見捨ててガブリエルに渡すというのはありえない。
ガブリエルの能力が、こんな能力だったなんて……

ガブリエルの操るノエルの目が酷く凶悪に見えて、僕は一刻も早くノエルを解放したかった。
しかし、僕の能力、武器でこの状況を打破する手立ては見つからなかった。

「ガブリエル」
「なんです?」
「後ろを見てみろよ」

ノエルの視線の先には、ガブリエルの首を折る寸前の、僕の姿があった。(正確には僕の複製)

「ノエルをから出ていけよ。そうしないと、こいつの首を折るぞ。この体がないと、ノエルを爆発させても戻る体がないだろ?そうなったらお前は消滅するんじゃないのか?」

正直これでは、解決にはなっていない。しかし、何か進展させなければならないと思った僕は、賭けに出た。
その賭けにガブリエルがどう出るか……

「ガブリエル、はやくしろよ……」
「………………」

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