覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜

鉄道王

第27話「赤坂ノエル」

「えーまぢー!チョベリグ」
「まぢまぢ、まぢバイブス上がる!」
「ねーきーてーぅちこないだダーにやぐられてさー!」
「やばばばばばば」
「チョベリバ」
「したらダーまぢ激おこプンプン丸でさーだからとりまゎかれる?ってゅってゎかれてショッキングピーポーマックス」
「やばばばばばば」
「でさーギロッポン行かねー?ぅち、服買いたいんだけど!」
「ぇ、ぃこー!てかトッポギ!」
「ノエルも行くっしょ〜?」
「ん?あーうん、行くよー」

(会話の意味わかんねえ……)

* * *

私、赤坂ノエルは日本ナンバーワンといっても過言ではないほどのギャルグループの一員だった。

高校に入学してから、特に仲の良い友達もいなかった私は、いつも1人でいた。
いつものように1人でいたある時、ギャルグループの1人から声をかけられた。



「ノエルちゃんさー、よく見たらメッチャ可愛くない!?」
「え……そ、そうかな?」
「うん!あのさー今度ぅちらと服買いにぃかなぃ?」
「えっ、あ、うん!」



正直服とかシャレオツとかはあんまり興味がなかったけど、その時は一緒にいられる友達ができたことが嬉しくて、二つ返事でついて行った。

その後も、ギャル達とはよく一緒にいるようになり、特に気の合うわけでもないまま、1年の付き合いになった。

* * *

「いらっしゃいませー」

「へー、こんなとこ初めて来たよ」
「まぁーぢ!?いつも服とかどこで買ってんの!?」
「えっ、そのへんで」
「ノエルチョォーもったいなーい!もっとオシャレしなよォ!」
「うん、そうだね」

(苦手なんだよね……こういううるさい店は……)

「キャハハハハ!これ可愛いィ!」
「ヤバーイ」
「こーれまぢ欲しィ!!」

客のテンションも非常に高くて居心地が悪い……
こういう店ってすぐ店員が話しかけてくるのも嫌なんだよね……
なんて考えていると、心を監視されているかのようなタイミングで店員が話しかけてきた。

「お姉ーさんここ来んの初めてじゃない?」
「あぁ、そうですけど……」
「あーやっぱ!?見ないカオだったからさ。どんな服探してる?飴食べる?はい」
「あっ、ありがとうございます。でも別に服は探してないです。友達に連れてこられただけだし……」

さっさと店員に離れてほしくて適当にあしらったのだがこの店員、非常にしつこい。

「あっ、お姉ぇーさんこの服とかイイんじゃない!?試着してみる!?しようか!」
「ええ……」

(やばい、欲しくもないのに買わされる〜!)

しかし、押しに弱い私はとりあえず試着してみることにしたのだった。

「うーん、ちょっと小さいねぇ」
「はぁ、なのでこれは買わないでいーです」
「いや、もーちょっと痩せたらピッタシでしょ!?」
「えぇ……」

(どーしよ、断りづらいなー。この店員)

「ノエルー!帰ろーかー!?」
「あっ、うん!」

押しの強い店員の態度に困っていると、それを察してくれたのか、ギャルの1人が声をかけてくれた。
ギャルに気を使うということができるということを初めて知った。

「ん?帰るの?じゃ、痩せたらまた試着しに来てよ!」
「そですね…」

* * *

そして、1週間ほどが経ち、私は再び、あの洋服屋に足を運んでいた。

「あっまた来てくれたの!君、名前なんていうの?」
「赤坂ノエルです」
「ノエルちゃんね!はい飴」

いつものように飴を渡され、それを口に入れる。

(この飴、変な味……)

しかし私は、この飴が目的でこの店に来ていた。

「この飴ってさぁ、どこで売ってんの?」
「……この飴?」
「うん。なんかこの飴食べて痩せたんだよねー、これダイエット商品?」
「あぁ!そういうこと!だったらこっちのがイイよ!」

そういって店員がくれたのは錠剤のサプリメントのようなもの。

「へー、これ痩せるの?」
「そーだね。20000円よ」
「たっか!!ひどくない?まだ効果もわかんないんだしさ……」
「んーじゃ、初回限定で半額ならどう?」
「うーん、だったら……」

そういって買ってしまった。
今思えばそれは、かなり怪しすぎるものだったのだけれど、当時の私にはそんなことを考える力はなかった。

* * *

「つかノエルすげー痩せたよね」
「まぢで〜チョベリグ」
「でしょー、私これ使ってんだよね」
「えーなにそれシャブ?」
「違うよ!ただの薬でしょ」
「シャブでしょゎら」

正直この時、私もそんな気はしていた。
でも、認めるのが恐くて、考えないようにしていた。

「ナンシーとキュアも使ったら?あげるよ」
「えー恐い」
「無理っしょ」

* * *

2ヶ月が過ぎた頃、異変に気付く(ネテロかよ)

体重が40kgを下回っている!

(なにこれシンデレラ越えてんじゃん……やばっ)

そして、喉が渇いて仕方がない。

「はぁー、はー、はぁ、水……お母さーん、喉渇いたァ」
「水?飲めばいいじゃない」

冷蔵庫を開けて、どこを探しても缶の飲み物はない。

「はぁ、買いに行こっかな……」

その時私は、周りが見えていなかった。
足取りもふらふらとおぼつかないまま、歩いていた。

「あ……?」

気付いたときにはもう時すでにお寿司、時既に時間切れ、遅かった。

目の前には自動車があった。

この時私が薬などを使っていなければ、私の身体はこの程度の衝撃、耐えられただろう。
しかし、薬に蝕まれたこの身体では、私はこの衝撃に耐えることはできなかった。

* * *

目を覚ました私は、まずポケットを確認した。

(や……っば…。ない……)

薬がなくなってる。没収されたのかな……
だったら私、捕まっちゃうのかな。

「っていうかここ……病院よね?」
「いや、ここは病院じゃないよ」

私のベッドの隣にいたのは、すっげぇカッコいいイケメンの兄さん。
年は20歳くらいだろうか?

兄さんは、私に微笑みかけて続ける。

「ここは、ストレスフル学園。その保健室」
「……え?ストレスフル学園?なにそれ……」
「うん、多分信じられないと思うけど、本当のことなんだ。君は、死んだんだよ」

私は、静かに彼を見た。

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