覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜

鉄道王

第21話「レヴィとお話し」

「ふー……」

俺たちは今、ズゴーグ駅から、ゲーググ駅へと向かう電車に乗っていた。
次の目的地は、私立ピースフル学園。
ゲーググ駅から少し歩いたところに建てられている。

俺とベルゼブブはそのピースフル学園には用はないのだが、マモンとレヴィが用事があると言うので、先のGダム村の件もあり、俺も手伝うことにした。

「それにしても」

シャーザク駅からズゴーグ駅に向かう時はかなり混んでいて乗り心地も最悪だったが、今回は時間が昼過ぎということもあり、朝よりはマシになっていた。
朝は通勤、通学が多いからなあ。

そのおかげで、車内は非常に空いており、座席に座ることができた。

「今日は座れてよかったなー」
「そうね。混んでいると酔うもの」
「まあ、私たちは馬車に乗ってればいいだけなんだけどね」

今回は、全員が乗るスペースがあるのでレヴィを除いた3人で乗っている。
レヴィは乗り物酔いが激しいので電車には乗らないとか。
馬車は名前だけだから大丈夫らしい。まーそりゃそうだけど。

「でもお前ら、ピースフル学園ってとこに何の用があるんだ?」
「ええ、それは今から話そうと思っていたわ」

もともと、マモンとレヴィが俺たちの旅に同行していたのはそのピースフル学園までの道が同じだったからなのだ。
しかし、2人がなぜピースフル学園を目指すのかはまだ聞いていなかった。

「私たちがピースフル学園を目指すのは、『憤怒』の悪魔 サタン様の復活を遂げるため。
サタン様は、現在ピースフル学園でねむっているわ」
「へー…そいつも悪魔なんだ。そういえば、残りの悪魔ってなんて名前なの?」
「私たち悪魔は…というか、私たちのように名の知られた悪魔は、全部で7人。
『憤怒』のサタン様。
私、『強欲』のマモン。
『嫉妬』のレヴィアタン。
『暴食』のベルゼブブ。
『怠惰』のベルフェゴール。
『色欲』のアスモデウス。
『傲慢』のルシファー。で、全部よ」

俺たちが今探しているのは『色欲』のアスモデウスだな。
アスモデウスって『色欲』の悪魔なのかー…エロかったら嫌だなー。
苦手なんだよね、そういう奴。

「あとさ、悪魔って女しかいないの?マモンもレヴィもベルゼブブも女じゃん?」
「そういうわけではないわよ。アスモデウス、ベルフェゴール、ルシファーは男よ」
「へぇ、そうなんだ」

そんなことを話していると、ゲーググ駅に到着したようだ。

* * *

「はー、着いた。ピースフル学園ってどこにあるんだ?」
「ここから少し西に向かったところね」
「くはははははー!ではゆくぞ!」

馬車でずっと待機だったレヴィはようやく外に出られてはしゃいでいる。

「それにしても、ズゴーグ駅とゲーググ駅とはそんなに離れてないのに、Gダム村と比べて、ここはすげー都会だな」

電車から降りてまず目に入ったのは背の高い高層ビル群だった。
もともと俺は田舎で生まれ育ったのでこんな本格的な都会に来るのははじめてだったりする。

(田舎者丸出しの言葉とか使わないようにしないとな)

「山崎!見ろ!なんだこの高いビルは!?今にも折れそうだ!」

俺の意気込みに反してレヴィが大声で田舎者丸出しの声をあげた。
無視するのもかわいそうなので仕方なく話にのってあげる。

「ははは。倒れないよ、俺のすんでたところはもっと高いビルがいくつも建ってたもんだ」
「本当か!?すごいな!」

嘘である。

「山崎ー、レヴィー行くよー」
「早くしてちょうだい」

置いていかれてた。
俺とレヴィは小走りで追いついた。


「さて、ピースフル学園へはまだ少し距離があるから、バスに乗っていくわ」
「えっ、貴様ら、また乗り物に乗るのか!?」
「歩いていくには遠すぎるし、そうするしかないわ」
「そんな……馬鹿な……」

レヴィは寂しそうな表情を浮かべながら言った。

「俺が馬車について来てやるよ!」
「何?」
「また1人は寂しいだろうからな!俺が一緒にいてやる」
「フン、孤独など怖くはない。だが、いつ私の魔力が暴走するか不安ではある。ついてこい」
「おう」

レヴィはクールな態度をとっていながらも、嬉しさを隠しきれないでいた。

「ま、それでいいわ。バスに乗るのもお金がかかるんだし、1人でも問題ないことしね」
「私はマモンとバスに乗るよ」

というわけで、俺たちは2人1組に分かれて移動することになった。

* * *

「レヴィ、馬車の中になんか食べ物ある?腹減ったんだけど」
「パンがあるはずだ。そこの部屋に。
私のもとってきてくれ。チョコがはいってるやつ」

レヴィはほとんど素がでていた。
最近気づいたんだけど、レヴィのあれってキャラ作りしてたんだな。
ちょっとショックです。

「これ美味いね、俺が一番好きなのはあんぱんだけどさ」

俺がカレーパンを食べながら言うと、レヴィはとんでもないことを聞き返してきた。

「ん?あんぱん?シンナーのことか?」
「いや違うよ!あんこが入ってるパンだよ!」
「それならそうと初めから言え!」

普通あんぱんのことをシンナーとは思わないと思う。
警察24時じゃあるまいし。

「それにしても、よくあんぱんなんて隠語知ってたな。こっちの世界でもそう呼ばれてるのか?」
「当たり前だろう?こっちにいる人間は、ほとんどお前たちの世界から来た人間なのだからな」
「えっ、そうなの!?」
「何だ、知らなかったのか。
ここで生まれた人間も両親がお前たちの世界から人間の奴だけだ」

さらっと言われたが、びっくりだった。
原住民っていないんだぁ……

「だったら、悲惨なものだよな。
蘭子ちゃんだって、もともとは戦いなんか全然知らない女の子だったんだろ?それなのに、あんな戦いに巻き込まれて殺されて………」

そこまで言ったところで俺はハッとしてレヴィの方を見た。

「っ、ごめんなレヴィ。思い出させるつもりで言ったんじゃないんだ。……ごめん」

俺が謝ると、レヴィは笑って許してくれた。

「くははは、気にするな。感情の強い人間には仕方のないことだ。
私ももう、そのことは乗り越えてゆくと決めたのだよ」

そう言うレヴィの目は、力強く輝いていた。

「……そっか。頑張ろうな」
「フン、貴様に言われなくとも、私は常に頑張っている」
「そうか。はははは!」
「クックックッ」

出会った時から、レヴィはフレンドリーだったが、今はあの時よりももっと打ち解けられていると思う。

もうピースフル学園で2人の依り代を見つけたら別々だけど、最後まで仲良くしたいな。

「このチョコのやつ一個では腹が満たされないな。山崎、もう一個とってきてくれー」
「えー、自分でとれよー」

そういいつつも俺はレヴィにチョココロネを持ってきてやった。
口ではもうふっきれたと言っていても、やはりまだ完全に忘れることはできないようだ。
今のところは優しくしてあげる必要があるだろう。

そんな感じで、レヴィと他愛ない話をしながら過ごしていると、どうやらバスがピースフル学園に到着したようだ。

* * *

「ようし、じゃあ行こうか!」
「ちょっと待って、少し休まない?私たちずっとバスに乗ってたから疲れたよ〜」

俺が出発しようとすると、ベルゼブブが止めた。

「あぁ、そうかごめんごめん。馬車で休むか?」
「えー楽しくないよ!せっかくだから、街を見て回ろうよ〜!」
「それは休むと言うのかしら……」

ベルゼブブの言ってることがよくわからねえ。
まあ気持ちはわかるけどね。都会に来たのが初めてなんだろうな。

「いいよ。マモン、時間は大丈夫なのか?」
「ええ、まあ時間はまだあるわ。それに明日でも別に問題はないし」
「そうか、じゃあ行こうか」
「やった〜!」


……というわけで俺たちは今、ピースフル学園付近の大型ショッピングモールに来ていた。

この街に何しにきたんだっけ…

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