覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜
第16話「世界の車窓から」
がたがたがた……
俺は1人、乗り心地の悪い電車で揺られていた。
「…………」
(くっそ…ベルゼブブのやつ、いいよな、こんな狭くて臭い満員電車に乗らなくて済んでよ…)
1人と言っても仲間内では1人というだけで、今は通勤、通学時間ということもあり、電車の中は大変混雑していた。
マモン、レヴィの2人は馬車があるので満員電車に乗る必要もない。ベルゼブブも俺の中に入っているので馬車乗る必要はない。
(ベルゼブブはともかくとして、次の駅からはマモンかレヴィに代わってほしいな…)
俺たちが目的としているジオンg駅に行くまでは、
俺たちが出発したシャーザク駅→ズゴーグ駅→ゲーググ駅→ジオンg駅
となっている。
(ってそういえばマモンとレヴィはゲーググ駅で降りるんだった。せめてズゴーグからゲーググまでの間だけでも代わってくれ…)
そんな事を考えながらぼーっと立っていると横から声が聞こえてきた。
耳をすませなければ聞こえないほどの小さな声だったが、
「やめてください…削るぞおっさん…」
「………」
「やめてください…引きちぎるぞオヤジコラ…」
「………」
「誰か…助けてください。痴漢されてます…」
少女が痴漢されているようだ…
他の乗客は面倒に巻き込まれたくないのかスルーだが、俺は正義感の強い紳士だからな…
痴漢なんて行為は見逃さんのよ。
「おいおっさん、やめろよ痴漢とか。次の駅で降りろよ」
「なにっ!?私が痴漢だと!?心外だ!私はそんなことしていない!証拠を!証拠を見せろ!」
(出た…最悪やなこのおっさん)
多分こういうのが面倒で周りの人も何も言わなかったんだろうな。
ズゴーグ駅に着いたのでとりあえず降りて話すことになった。
「この人に痴漢されてました!」
「わたしは痴漢などしていなぁあああいィ!!」
「叫ぶな叫ぶな、落ち着け。みんな見てたと思うぞ?あなたが痴漢してたところ…」
「うるさい!そんなわけあるか!証拠を見せろバカ!」
「あのねー…俺が見たって言ってんでしょ」
「それだけで証拠になるか!お前らグルだな!?私を嵌めようとしているんだな!?」
さすがにそろそろ面倒くさくなってきた…
そこで、電車の方から声が聞こえてきた。
「私たちも見ましたよ。その女の子が痴漢されていたところ。ねえ?」
「あぁ、私もしかとこの目に焼き付けたぞ」
マモンとレヴィが出てきてくれていた。
助かった。これ以上時間がかかったら紳士の俺でも立ち去りたくなるところだった。
マモンとレヴィが来てくれたおかげで俺たちと女の子は助かった。
「マモン、レヴィありがとな」
「なぁに我が眷属のためだ。この程度造作もない。クックックッ…」
「うん。まあ俺はベルゼブブの依り代だけども」
「困った時はお互い様よ。仲間だもの」
イイハナシダナー(泣
「あの…」
「ん?」
さっき痴漢に遭っていた少女が話しかけてきた…
「助けてくれてありがとうございます。何かお礼したいんですけど…何かできることないですか…?」
「あぁお礼なんていいよ。俺紳士だからさ」
「でも、そんな…」
まあ正直お礼をくれるってんならお菓子でも食べたい。
でもここはお礼なんていいっていうところだよな…
(山崎…!)
「ん?」
「え?どうかしましたか?」
「あ、あぁ…いや…」
頭の中に直接声が聞こえた気がしたけど…
(山崎!私だよ。ベルゼブブ)
(ベルゼブブ!?)
(うん。私は今、山崎の中にいるから頭の中で会話できるの)
そんな便利な機能があったなんて、俺が依り代になってすぐに言ってくれればよかったのに。
(あぁそうなの。それでどうしたの)
(その女の子、お礼してくれるって言ってるんだし、マモンかレヴィの依り代になってもらうのはどうかな…!)
(なるほどね。でもこの子、マモンとレヴィはどう思ってるのかな)
「マモン…!」
「ん?どうかしましたか?山崎」
「この子に依り代になってもらうのはどうかな…」
「痴漢から助けただけで?」
「いや、まぁそれはそうだけど…」
「あの、何かあるんですか?私にできることならなんでもしますよ」
「あぁ、ありがと。じゃあ…さ」
「山崎」
「ん?」
「私はいいのでレヴィの依り代を頼んであげて」
「あぁわかった」
「じゃあ、信じられるかどうかわからないんだけどさ、聞いてくれる?」
「はい…?」
「この世界にはさ、天使と悪魔っていうのがいるんだ」
少女は不思議そうにこちらを見ている。
仲間にしますか?
…ってまあそうなるだろな。
「それで、その天使と悪魔は対立してて、その戦いに勝つには依り代っていう…まあ、なんていうか相棒が必要なんだよね」
「はい…」
「それで君には、僕の仲間の依り代になってほしいんだ。…どうかな…?」
まあ信じてもらえるかはわからないが…無視されても仕方ないな。
現に俺も天使と悪魔ってよくわかんねーし…
少女は少し考えるようにして俺に返事をくれた。
「ごめんなさい…それはできません」
うん…まあそうだろうな。別にいいけど。
ただちゃんと答えてくれるのは嬉しかったな。この子くらいの歳の女の子ってすぐきもいとか言うから…
「あぁうん、こっちこそごめんね。意味わかんなかったよね」
「いえ、それであの…その依り代を探しているのって、天使なんですか?悪魔なんですか?」
少女はこちらをじっとみつめて、聞いてきた。
断ったのに関係ないと思うけど…まぁ聞かれたからには答えてあげる。
「悪魔だよ。レヴィアタンっていうんだけど…」
俺がそう口にした途端に少女の瞳は暗く沈み、刺すような目つきに変わり俺を睨みつけた。
その無言の圧力には指一本動かすことすら許されていないようにも感じた。
「それは、とても残念です」
「……え?」
少女がそう言ったことを俺が認識して間も無く俺の視界は大きくぶれた。
「ーーーーッ!!?」
背中に強い衝撃を受けたのと同時に肺が押しつぶされたような苦しみを覚えた。
「くっ…は!?」
(何が起きた…!?あの女の子が何かしたのか?まさか殴られてここまでぶっ飛んだってことは…)
(いや、そうみたいだよ)
(!?ベルゼブブ…!)
ようやく呼吸も整ってきたので、あたりを確認してみると、先ほどまで俺たちがいた駅からは少し離れた、農道のような所だった。
「どこだよここは…!」
(あの女の子が山崎を急に殴ってぶっ飛ばしたんだよ。まさかあの子は…)
ベルゼブブがそこまで言ったところで駅のある方からどごーーんと壁が壊れるような音が聞こえた。
その瞬間、マモンがこちらに飛んでくるのが見えた。
「っちょ…うおっ!?」
「っ!」
「大丈夫かマモン!?やっぱり、あの女の子に…!?」
「ええ、私たちが悪魔だとわかるといきなり殴られて…」
「だったらレヴィも…」
と、やはりレヴィもこちらに飛んできた。俺やマモンと違ったのはレヴィと一緒にあの女の子も来たことだ。
とんでもない速さで走って来た彼女は俺たちを一瞥したかと思うとこう言った。
「私はあなたたち悪魔の依り代になることはできない。なぜなら…
私は、天使ラグエルの依り代  杉原 水面!!
あなたたち悪魔を倒すために戦う存在だから!」
「ナ、ナンダッテー!?」
(やっぱり…あの子は天使だったんだね)
「ラグエル…ですか」
「クックックッ、しかし水面とやら…1対3のこの状況で私たちに勝つつもりか?」
「もちろん…恐らく依り代と悪魔のセットはそこの男性だけでしょう?その程度のザコどもに私が負けるはずはないわ。
あなたたち程度、10分かけずに鏖殺してやるよコラ」
(…この子話の中で時折口が悪くやるんだよナア…
それに、敵なら痴漢から助けなければよかった!…っと、今のは紳士にあるまじき発言か。まぁ口に出してないからセーフだな)
「レヴィ、山崎、油断は絶対にしないようにね」
「クックック、では、久方ぶりに我が右腕に眠っている薔薇の魂を目覚めさせるとするか…」
ちょっと緊張してきた。さすがに強そうである。この前戦ったザコみたいな天使とは格が違うということが一目でわかる。
でも、
(山崎、死にそうになった時、逃げられるだけの体力は残すんだよ…!)
「あぁ、そうだな…!」
俺には護るべき存在がいるのだ。
ここで殺されるわけにはいかない。
俺は1人、乗り心地の悪い電車で揺られていた。
「…………」
(くっそ…ベルゼブブのやつ、いいよな、こんな狭くて臭い満員電車に乗らなくて済んでよ…)
1人と言っても仲間内では1人というだけで、今は通勤、通学時間ということもあり、電車の中は大変混雑していた。
マモン、レヴィの2人は馬車があるので満員電車に乗る必要もない。ベルゼブブも俺の中に入っているので馬車乗る必要はない。
(ベルゼブブはともかくとして、次の駅からはマモンかレヴィに代わってほしいな…)
俺たちが目的としているジオンg駅に行くまでは、
俺たちが出発したシャーザク駅→ズゴーグ駅→ゲーググ駅→ジオンg駅
となっている。
(ってそういえばマモンとレヴィはゲーググ駅で降りるんだった。せめてズゴーグからゲーググまでの間だけでも代わってくれ…)
そんな事を考えながらぼーっと立っていると横から声が聞こえてきた。
耳をすませなければ聞こえないほどの小さな声だったが、
「やめてください…削るぞおっさん…」
「………」
「やめてください…引きちぎるぞオヤジコラ…」
「………」
「誰か…助けてください。痴漢されてます…」
少女が痴漢されているようだ…
他の乗客は面倒に巻き込まれたくないのかスルーだが、俺は正義感の強い紳士だからな…
痴漢なんて行為は見逃さんのよ。
「おいおっさん、やめろよ痴漢とか。次の駅で降りろよ」
「なにっ!?私が痴漢だと!?心外だ!私はそんなことしていない!証拠を!証拠を見せろ!」
(出た…最悪やなこのおっさん)
多分こういうのが面倒で周りの人も何も言わなかったんだろうな。
ズゴーグ駅に着いたのでとりあえず降りて話すことになった。
「この人に痴漢されてました!」
「わたしは痴漢などしていなぁあああいィ!!」
「叫ぶな叫ぶな、落ち着け。みんな見てたと思うぞ?あなたが痴漢してたところ…」
「うるさい!そんなわけあるか!証拠を見せろバカ!」
「あのねー…俺が見たって言ってんでしょ」
「それだけで証拠になるか!お前らグルだな!?私を嵌めようとしているんだな!?」
さすがにそろそろ面倒くさくなってきた…
そこで、電車の方から声が聞こえてきた。
「私たちも見ましたよ。その女の子が痴漢されていたところ。ねえ?」
「あぁ、私もしかとこの目に焼き付けたぞ」
マモンとレヴィが出てきてくれていた。
助かった。これ以上時間がかかったら紳士の俺でも立ち去りたくなるところだった。
マモンとレヴィが来てくれたおかげで俺たちと女の子は助かった。
「マモン、レヴィありがとな」
「なぁに我が眷属のためだ。この程度造作もない。クックックッ…」
「うん。まあ俺はベルゼブブの依り代だけども」
「困った時はお互い様よ。仲間だもの」
イイハナシダナー(泣
「あの…」
「ん?」
さっき痴漢に遭っていた少女が話しかけてきた…
「助けてくれてありがとうございます。何かお礼したいんですけど…何かできることないですか…?」
「あぁお礼なんていいよ。俺紳士だからさ」
「でも、そんな…」
まあ正直お礼をくれるってんならお菓子でも食べたい。
でもここはお礼なんていいっていうところだよな…
(山崎…!)
「ん?」
「え?どうかしましたか?」
「あ、あぁ…いや…」
頭の中に直接声が聞こえた気がしたけど…
(山崎!私だよ。ベルゼブブ)
(ベルゼブブ!?)
(うん。私は今、山崎の中にいるから頭の中で会話できるの)
そんな便利な機能があったなんて、俺が依り代になってすぐに言ってくれればよかったのに。
(あぁそうなの。それでどうしたの)
(その女の子、お礼してくれるって言ってるんだし、マモンかレヴィの依り代になってもらうのはどうかな…!)
(なるほどね。でもこの子、マモンとレヴィはどう思ってるのかな)
「マモン…!」
「ん?どうかしましたか?山崎」
「この子に依り代になってもらうのはどうかな…」
「痴漢から助けただけで?」
「いや、まぁそれはそうだけど…」
「あの、何かあるんですか?私にできることならなんでもしますよ」
「あぁ、ありがと。じゃあ…さ」
「山崎」
「ん?」
「私はいいのでレヴィの依り代を頼んであげて」
「あぁわかった」
「じゃあ、信じられるかどうかわからないんだけどさ、聞いてくれる?」
「はい…?」
「この世界にはさ、天使と悪魔っていうのがいるんだ」
少女は不思議そうにこちらを見ている。
仲間にしますか?
…ってまあそうなるだろな。
「それで、その天使と悪魔は対立してて、その戦いに勝つには依り代っていう…まあ、なんていうか相棒が必要なんだよね」
「はい…」
「それで君には、僕の仲間の依り代になってほしいんだ。…どうかな…?」
まあ信じてもらえるかはわからないが…無視されても仕方ないな。
現に俺も天使と悪魔ってよくわかんねーし…
少女は少し考えるようにして俺に返事をくれた。
「ごめんなさい…それはできません」
うん…まあそうだろうな。別にいいけど。
ただちゃんと答えてくれるのは嬉しかったな。この子くらいの歳の女の子ってすぐきもいとか言うから…
「あぁうん、こっちこそごめんね。意味わかんなかったよね」
「いえ、それであの…その依り代を探しているのって、天使なんですか?悪魔なんですか?」
少女はこちらをじっとみつめて、聞いてきた。
断ったのに関係ないと思うけど…まぁ聞かれたからには答えてあげる。
「悪魔だよ。レヴィアタンっていうんだけど…」
俺がそう口にした途端に少女の瞳は暗く沈み、刺すような目つきに変わり俺を睨みつけた。
その無言の圧力には指一本動かすことすら許されていないようにも感じた。
「それは、とても残念です」
「……え?」
少女がそう言ったことを俺が認識して間も無く俺の視界は大きくぶれた。
「ーーーーッ!!?」
背中に強い衝撃を受けたのと同時に肺が押しつぶされたような苦しみを覚えた。
「くっ…は!?」
(何が起きた…!?あの女の子が何かしたのか?まさか殴られてここまでぶっ飛んだってことは…)
(いや、そうみたいだよ)
(!?ベルゼブブ…!)
ようやく呼吸も整ってきたので、あたりを確認してみると、先ほどまで俺たちがいた駅からは少し離れた、農道のような所だった。
「どこだよここは…!」
(あの女の子が山崎を急に殴ってぶっ飛ばしたんだよ。まさかあの子は…)
ベルゼブブがそこまで言ったところで駅のある方からどごーーんと壁が壊れるような音が聞こえた。
その瞬間、マモンがこちらに飛んでくるのが見えた。
「っちょ…うおっ!?」
「っ!」
「大丈夫かマモン!?やっぱり、あの女の子に…!?」
「ええ、私たちが悪魔だとわかるといきなり殴られて…」
「だったらレヴィも…」
と、やはりレヴィもこちらに飛んできた。俺やマモンと違ったのはレヴィと一緒にあの女の子も来たことだ。
とんでもない速さで走って来た彼女は俺たちを一瞥したかと思うとこう言った。
「私はあなたたち悪魔の依り代になることはできない。なぜなら…
私は、天使ラグエルの依り代  杉原 水面!!
あなたたち悪魔を倒すために戦う存在だから!」
「ナ、ナンダッテー!?」
(やっぱり…あの子は天使だったんだね)
「ラグエル…ですか」
「クックックッ、しかし水面とやら…1対3のこの状況で私たちに勝つつもりか?」
「もちろん…恐らく依り代と悪魔のセットはそこの男性だけでしょう?その程度のザコどもに私が負けるはずはないわ。
あなたたち程度、10分かけずに鏖殺してやるよコラ」
(…この子話の中で時折口が悪くやるんだよナア…
それに、敵なら痴漢から助けなければよかった!…っと、今のは紳士にあるまじき発言か。まぁ口に出してないからセーフだな)
「レヴィ、山崎、油断は絶対にしないようにね」
「クックック、では、久方ぶりに我が右腕に眠っている薔薇の魂を目覚めさせるとするか…」
ちょっと緊張してきた。さすがに強そうである。この前戦ったザコみたいな天使とは格が違うということが一目でわかる。
でも、
(山崎、死にそうになった時、逃げられるだけの体力は残すんだよ…!)
「あぁ、そうだな…!」
俺には護るべき存在がいるのだ。
ここで殺されるわけにはいかない。
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