FANTASY WAR ONLINE

海沼偲

第二五話


《只今までの行動により【嗅覚強化】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【聴覚強化】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【徒手武術】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【刀術】を習得しました》
《只今までの行動により【受け】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【回避】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【見切り】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【魔力感知】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【魔力操作】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【心眼】がレベルアップしました》

 見ての通りである。刀を使ってはいたが。当然足も出るし、手も出る。俺が日々鍛錬をしているのはそういう武術である。武器を持っているからと、その武器に頼ることはせず、斬ると見せて殴り、蹴ると見せて斬るのである。だからこそ、このスキルのレベルアップは必然である。

「…………おぬしらやばいのう」

 師匠は眉間を手で押さえながらそう言葉を漏らす。

「これで魔術も扱えたら、どの距離にいても殺されるじゃろ」
「戦場で安全な場所ってないですよね?」
「魔導士の懐に入った近接タイプが返り討ちにあうのがやばいんじゃよ」

 どこがだろう?

「死角がなくて強くないですか?」
「無敵じゃん。どうやって倒すの?」
「師匠、口調が崩れてますよ」
「別に構わんじゃろ。お主らしかおらんし」

 しかし、どうやって倒すねえ。少なくとも、数人に囲まれた程度で殺されるようなやわな鍛え方はしていないと思う。

「三日三晩ひたすら攻勢に出続けるとかすれば、殺せるんじゃないですかね」
「え、三日間も戦い続けられるの?」
「さあ? 実際そこまで長い間戦い続けたことないんでわからないですよ。でも、一日はもってほしいと思いますけど」

 これは本心である。最低でも一日中は戦場に立ち続けられるような継戦能力がほしい。

「お主それで、魔術も覚えようとするのだからのう。十分前線で戦える力があるというのにのう」
「そうですかね。……あ、師匠。どうです?」

 俺はその場で体内の魔力を動かす。戦いながらだとぎこちなく油の切れたロボットのような動きを見せる魔力も今の状態でならスムーズに動いてくれる。それでも、ゆっくりとしているが。

「ふむ……まだまだじゃのう。これぐらいは出来ねばな」

 師匠は今、魔力をただ動かすということだけをしている。それ以外の容量がとられることはないのだから、その魔力が動き回る速度は異常であり、師匠の体内を自動車が走り回っているかのようである。

「……で、これじゃな」

 と、師匠は両手を広げて手のひらから別々の魔術を生み出す。左手には水。もう片方には光である。
 魔術は、対応する属性だった場合、同時に展開することもまあ出来なくはない。火と水、風と土、光と闇のような分け方になる。その対応された属性であるならば、比較的楽に同時に魔術を行使できる。
 とはいえ、比較的楽というだけであり、実際にやろうとすると脳みそがパンクする。日のイメージを生み出しながら水のイメージを生み出すのだからな。普通に出来る気がしない。師匠いわく、いずれ出来るらしい。その時の師匠の顔は謙遜しやがってというような劣等感がこもっていた。
 では師匠は? それよりさらに難易度の高い対応していない属性の同時展開である。頭おかしい。師匠は六属性の同時展開を前に見せていたが、そんなことが出来るのは魔導士でも一握りだと自慢していた。

「くそっ、勝てない」
「いやあ、すぐに勝たれたら師匠の立場がないんじゃが」

 だが、張り合いたい。うーん、なんかインパクトのある魔術でもやるか。一つの属性でもインパクトがあればいいと思う。子供っぽいがここは張り合いたいところ。
 俺はとりあえず、真皮のあたりにとどまっている魔力に目をつける。これを魔術に昇華させよう。えーと……火だな。俺、火が好きなんだと思う。成功率高い魔術は火だし。
 で、真皮の魔力をお互いに擦り合わせる。で、その摩擦熱を基にして魔力を高温状態に持っていき、着火。俺の体から火が噴き出る。

「おおっ! なんじゃそれ!」
「スバル! 大丈夫!」

 っと、かおるが心配してしまった。確かに、今の俺は全身火だるまだからな。これで心配するなというほうが無理がある。

「ああ、大丈夫だ。安心しろ。これは魔術だ」
「そんな魔術は知らんぞ」
「ええと……体を覆う魔力を使ってます」
「ええ……」

 師匠は困惑していた。確かに、その気持ちはわかる。この魔力は、魔法による攻撃から身を守るために存在するものである。だから、そんなものをわざわざ消費しようなどということを考えるわけがない。
 しかし、脳から体全体に魔力で覆うという作業がないため非常に簡単である。
 俺の体から噴き出していた炎はしばらくたつと魔力の枯渇によりしゅんと消える。

「お兄さん、心配させないでください」

 あら、あいかにまで心配されてしまった。これは反省すべきだな。

「ああ、すまんすまん。今度からちゃんと宣言してからするからさ」

 それに、ここまでうまくいくとは思っていなかったというのがある。

「うーむ……」

 師匠はまた何か悩んでいるようである。どうしたのかね?

「スバルよ」
「はい」
「その魔術。登録してみる気はないかね?」

 ……はい?

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