【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜
254 - 「セットデッキ」
飛空要塞都市プロトステガが堕ちた場所から、夜空へと舞い上がる大量の光の粒子。
その光――死んでいった者達から発生したマナを取り込みながら、マサトは海亀との戦いを振り返っていた。
――始まりは、薄暗い牢の中。
この世界に現れたもう1人のプレイヤー、大宮忠に不覚を取り、未来へと飛ばされたマサトが初めに目を覚ました場所だ。
そこは、既に海亀の一派である巨大奴隷船オサガメの中だった。
牢の中で目を覚ましたマサトは、囚人から話を聞き、自分が15年後の世界に飛ばされたことを知った。
そして、元の時代に戻るために必要な魔導具――時の水晶を取り戻すため、中央都市へ向かうことを決意する。
立ちはだかる敵には容赦しないと割り切ったマサトの行動は早かった。
高圧的な態度の看守を始末し、すぐさま牢から抜け出すと、オサガメが誇る最強の門番――双頭の噛み付き亀と、海亀の幹部の一人であり、オサガメの船長であるプセリィを殺し、瞬く間に奴隷船オサガメを奪った。
その過程で、囚人剣闘士に扮していたヴァルト帝国の元第一位王位継承者のキングと、そのキングに同行していた最上位支援魔法師のララ、奴隷として捕らえられていた緑狼族の生き残りで第一級弓剣士のアタランティスと出会った。
キングは帝国を破滅の道へ向かわせた元凶を討つため、ララは親友のアリスを助けるため、アタランティスは助けられた恩を返すため、マサトと行動を共にすることを選ぶ。
その他にも囚われていた奴隷達を解放し、奪ったオサガメでワンダーガーデン大陸西部から南部へと航海する途中、ララに口寄せさせた大海に潜む巨大海蛇を討伐したり、オサガメの宝物庫に保管されていた財宝を発見し、手に入れた白金貨でカードの補給を実施。
着実に戦力を整えようとするマサトに、新たな刺客が現れる。
次にマサトの前に立ちはだかったのは、海亀のNo.2――鳥人族のアヒル種のダックワーズ率いる奴隷軍船団アカガメだ。
アカガメはオサガメと違い、船員全てが鳥人族のアヒル種で構成された鳥人軍団だった。
彼らはその白い翼で空を飛ぶことができた。
逃げ場のない海域において、制空権を支配できる船団はそれだけで脅威だ。
更に、アカガメの軍船には破滅の大砲と呼ばれる――人族を弾として強力な魔法弾を撃てる古代魔導具までもが搭載されていた。
それは、相手が例え軍船だったとしても抵抗不可能な程の過剰な戦力だ。
もちろん、アカガメの船長であるダックワーズもそれは認識しており、あわよくば仲間であるはずのプセリィからオサガメを簒奪する計画すら立てていた程だ。
だが、結果はマサトの圧勝で幕を閉じた。
マジックイーターであるマサトの敵ではなかったのだ。
マサトは水平線を真っ赤に染めるほどの数多の軍船、その全てを海の藻屑へ葬り去ると、船を港都市コーカスへと進めた。
コーカスでは、マサトを父、黒死病の魔女の異名をもつヴァーヴァを母と呼ぶ少年――ヴァートと、後家蜘蛛の最高戦力とも呼ばれていたパークスと再会した。
そして、海亀の本体であるプロトステガの接近を知ったマサトは、遂に海亀墜としへと動く。
海亀の本拠地、プロトステガで繰り広げられた総力戦は、とても激しい戦いになった。
戦いの最中、マサトは闇魔法使い達に殺されそうになっていた金色の鷲獅子騎士団、第十五部隊隊長アネスティー・グラリティを救い、既にヘイヤ・ヘイヤと交戦中だった後家蜘蛛の頭領――黒崖と再会した。
その後、マサトはヘイヤ・ヘイヤと死闘を繰り広げた末に討伐。
暴走した飛空要塞都市プロトステガも、フログガーデンから駆け付けた飛空艇の総攻撃で陥落したのだった――。
まだまだ舞い上がり続けるマナを取り込みながら滞空し続けるマサトに、白い服を風に靡かせた男が近付く。元後家蜘蛛の構成員で、今はヴァートの師に付いているパークスだ。
「これほどの魔力を取り込み続けて、身体は大丈夫ですか?」
「何の問題もない。マナの保有量に上限はないからな」
その言葉にパークスは目を見開き、鼻で軽く笑うと、やれやれと頭を振った。
「そうですか。15年前、あなたと戦った時、私の力が効かなかった理由が分かりましたよ」
銀縁の眼鏡を中指で押し上げつつ、パークスは続ける。
「魔力消失や魔力引力ではどうにもできない程の魔力を保有していただけだった、とね。いっそのこと、その手の防衛系の加護を持っていると言われた方がまだ納得できました」
無言のマサトに、パークスは岬の方へ視線を向けた。
「ヴァートや港の住民達は無事なので安心してください。これだけでの戦いを仕掛けながら、奇跡的にも被害はほとんどありません。ただ、フログガーデンから呼び寄せた戦力の被害はそこそこあったようですね」
「相手があの一つ目の巨人だったしな。ファージやゴブリン達も大分やられた。だが、それも無駄にはしない」
「死した者は全てあなたの力の糧となる……ということですか。その力は、本当に危険ですね」
マサトがパークスへ振り向き、マサトの無機質な黒い瞳と、パークスの氷のように冷たい青い瞳が交差する。
「確かに。パークスの言う通り、この力は危険だ。使い方を誤れば世界を滅ぼせる」
「滅ぼすつもりですか?」
「世界が敵に回るのであれば」
二人の間を一陣の風が吹き抜ける。
マナの放流はいつの間にかなくなっていた。
「俺は、この力で元の時代に戻る。その為に、大量のマナと時の水晶が必要なんだ」
「分かりました。私にあなたを止める資格はありませんし、止めるつもりもありません。ですが、ヴァートの師として、あなたの行く末を見届けさせてもらいますよ」
「ああ。ヴァートのことは、本当に感謝してる。そして、これからもヴァートのことをお願いしたい」
「ヴァートが聞いたら悲しむでしょうね」
咎めるような口調のパークスに、マサトは返す言葉が見つからず、ただ黙った。
だが、ふと気になったことがあった。
「なぜ、他人であるはずのヴァートに、そこまで目をかけてくれるんだ?」
その質問が意外だったのか、パークスは少し目を丸くした。
「なぜ、ですか。確かに、あなたから見たら不思議に感じますか。そうですね……」
少し考えた素振りを見せた後、パークスは再び口を開いた。
「ヴァートと自身の幼少期を重ね、少なからず同情した部分があったのでしょう。黒死病の魔女の子として忌避されるヴァートと、魔力消失のせいで忌み子として扱われてきた自分の境遇に」
「忌み子……」
マサトが絶句する。
パークスの辛い過去を知ったこともそうだが、自分の子であるヴァートが辛い幼少期を過ごしたのではないかという事実に、マサトの胸は張り裂けそうな痛みを覚えたのだ。
マサトの苦しむ表情を見て満足したのか、パークスは口元に少し笑みを浮かべると話を切り上げた。
「それでは、私は地上へ戻ります。フログガーデンのことを詳しく知りたければ、あの飛空艇に乗る者達に聞くと良いでしょう。あなたの行動が、どんな結果を招いたか。あなたは知っておくべきだ。私達の15年間を無駄にしないためにも」
そう告げると、パークスは踵を返して、岬へと飛んでいった。
「俺の消えた後の15年間か……」
港都市コーカスの上空に浮かぶ飛空艇を眺める。
それは、マサトがいなくなった後にできた飛行兵器だ。
「あれは誰が作ったんだ? ハインリヒか? ハインリヒはまだ生きてるのか?」
すると、目の前にシステムメッセージが表示された。
『特殊条件を満たしたため、新たなセットデッキを解放しました』
「新たな……セットデッキ?」
すぐさまデッキを確認する。
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*デッキ名:腐敗のプロトステガデッキ
*マナカード :計20枚
【C】 赤のマナ、(0)、「マナカード ― マナ生成」、[マナ生成:(赤)] [マナ生成限界1] 8枚
【C】 黒のマナ、(0)、「マナカード ― マナ生成」、[マナ生成:(黒)] [マナ生成限界1] 12枚
*モンスターカード:計19枚
【C】 屍肉漁りのガビアル、1/1、(黒)(1)、「モンスター ― クロコダイル」、[捕食:+1/+1] [ステータス上限 4/4] [沼地生息時:能力補正+1/+1] 1枚
【C】 プロトステガの切り裂き魔、2/1、(黒×2)、「モンスター ― 人族」、[先制攻撃] 1枚
【UC】 プロトステガの機巧掘削兵、1/2、(2)、「モンスター ― 機械、アーティファクト」、[鉱山採掘時:マナ生成2倍] 1枚
【UC】 プロトステガの機巧整備兵、1/2、(2)、「モンスター ― 機械、アーティファクト」、[遺物修復Lv5] 1枚
【UC】 七色の麦撫子、0/1、(3)、「モンスター ― 植物、マナ生成」、[生贄時:マナ生成(虹)] [行動不可] 2枚
【UC】 プロトステガの闇魔法使い、1/1、(黒×2)(1)、「モンスター ― 人族」、[飛行] [闇魔法攻撃Lv1] 1枚
【UC】 プロトステガの徴税人、2/2、(黒)(2)、「モンスター ― 人族」、[プロトステガの奴隷市民が配下にいる場合、能力補正+2/+2] 1枚
【UC】 プロトステガの伝書影、1/1、(黒×3)(1)、「モンスター ― シェイド」、[飛行] [手札帰還] [(黒):一時能力補正+1/+0 ※上限3] 1枚
【UC】 プロトステガの家禽商人、1/2、(黒)(5)、「モンスター ― 人族」、[召喚時:獰猛なホロホロ鳥1/1召喚3] 1枚
【UC】 一つ目の浮島巨人兵、4/6、(赤)(5)、「モンスター ― 巨人」、[熱光線攻撃Lv3] 1枚
【R】 プロトステガの奴隷市民、0/1、(黒)(X)、「モンスター ― 人族」、[追加召喚X] 2枚
【R】 プロトステガの暗殺少女、1/1、(黒)(1)、「モンスター ― 人族」、[致死毒攻撃Lv1] [神経毒攻撃Lv1] [魅了Lv1] 1枚
【SR】 プロトステガの大魔導師、テスガの影、0/3、(黒×3)、「モンスター ― シェイド」、[飛行] [不死] [制御不能] [闇魔法攻撃Lv3] [(黒):一時能力補正+1/+0 ※上限3] 1枚
【SR】 プロトステガの機巧巨人兵、8/8、(8)、「モンスター ― 機械、アーティファクト」、[熱光線攻撃Lv5] 1枚
【UR】 プロトステガの魔法探究者サリエラ、1/1、(黒×3)、「モンスター ― 兎人族」、[カリスマ:飛空要塞都市、プロトステガにいる全てのシェイド] [支配下モンスター生贄時:シェイド0/2召喚1] 1枚
【UR】 悪食の悪魔ヘイヤ・ヘイヤ、4/8、(黒×8)、「モンスター ― 悪魔」、[飛行] [防御無視攻撃] [捕食:(黒)、再生Lv4] [悪食Lv2 ※耐久Lv2以下の魔導具を捕食可能] [(黒×2):眠り鼠1/1召喚1] [死亡時:眠り鼠1/1召喚X ※Xは捕食した数に等しい] 1枚
【UR】 飛空要塞都市、プロトステガ、5/15、(虹×5)(10)、「モンスター ― 要塞、土地、アーティファクト」、[飛行] [(赤×8):巨人兵の踏み荒らし] [(8):プロトステガの機巧巨人兵8/8召喚1] 1枚
*付与魔法:計4枚
【C】 影の憑依、(黒)(2)、「エンチャント ― モンスター」、[飛行] [(黒):一時能力補正+1/+0 ※上限3] 1枚
【UC】 遺物腐敗、(黒)、「エンチャント ― アーティファクト」、[魔導具破壊Lv3] [腐敗Lv1] 2枚
【SR】 悪魔的集団憑依、(黒×5)、「エンチャント ― 領域」、[人族憑依Lv3] [憑依補正+2/+0] 1枚
*簡易魔法:計4枚
【C】 墓石落とし、(黒)、「インスタント」、[墓石落としLv1] 1枚
【UC】 夜空への放逐、(黒)(X)、「インスタント」、[上空転移LvX] 1枚
【UC】 死体焼却、(黒)(1)、「インスタント」、[火魔法攻撃Lv2] [再生不可] 2枚
*大型魔法:計3枚
【R】 疫病散布、(黒×5)、「ソーサリー」、[疫病Lv3 ALL] 1枚
【SR】 一つ目の浮島巨人軍団、(赤×3)(X)(X) ※Xは赤マナのみ、「ソーサリー」、[X:一つ目の浮島巨人兵4/6召喚X] 1枚
【SR】 プロトステガの魔術師ギルド軍団、(黒×6)(X) ※Xは黒マナのみ、「ソーサリー」、[X:プロトステガの闇魔法使い1/1召喚X] 1枚
*アーティファクト:計3枚
【R】 灼熱の巨釜、(4)、「アーティファクト ― マナ生成」、[支配下モンスター生贄時:マナ生成(赤)(黒)] [耐久Lv3] 2枚
【SR】 魔力晄炉、(5)、「アーティファクト ― 建物」、[マナ生成:(赤)(黒)] [マナ生成限界20] [耐久Lv3] 1枚
【UR】 プロトステガの聖刻石碑、(5)、「アーティファクト ― 石碑」、[生贄時、(10):飛空要塞都市、プロトステガ5/15召喚1] [(5):飛空要塞都市、プロトステガ一時無敵Lv5] [耐久Lv9] 1枚
*土地:計6枚
【C】 澄んだ沼地、(黒)、「土地 ― 沼」、[マナ生成:(黒)] [マナ生成限界3] [召喚条件:陸地] 2枚
【R】 ルベライト鉱山、(赤)(X)、「土地 ― 鉱山」、[マナ生成:(赤)] [マナ生成限界XX] 2枚
【R】 巨人の住処、(赤)(4)、「土地 ― 山」、[マナ生成:(赤)] [(赤×6):一つ目の浮島巨人兵4/6召喚1] 1枚
【SR】 ヘマタイト鉱山、(赤)(黒)(X)、「土地 ― 鉱山」、[マナ生成:(赤)or(黒)] [マナ生成限界XX] 1枚
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「これは……」
そこにはプロトステガに関連したカードで構築されたらしいカードが並んでいた。
「プロトステガを堕としたからか……? 特殊条件とは何だ……?」
そう疑問が浮かぶも、マサトはデッキの中に、ヘイヤ・ヘイヤだけでなく、飛空要塞都市であるプロトステガすらもカード化されていたことに気が付く。
「まさか、確定ドロップ?」
単体カードのドロップが一定数を超えると、上位カードになるという現象は以前もあった。
その上位カードですら一定数を超えると、セットデッキという形で確定ドロップ報酬に変わるのかもしれない。
現に、その後もカードドロップのメッセージは表示されなかった。
「は、はは……」
乾いた笑いが漏れる。
「力が欲しければ皆殺しにしろ、か。どこまでもこの世界はゲーム的なんだな」
◇◇◇
(な、何がどうなってるの!? あの悪魔の群れは何!? それにあの炎の翼の男は!?)
紅蓮の炎の翼を広げ、夜空に滞空し続けるマサトの側で、暗闇にじっと息を潜め、震える者がいた。
その者は、プロトステガの魔術師ギルド所属、闇魔法使いの生き残りだ。
暗闇に姿を隠すことのできる特殊な加護を得ていたため、その力で運よく生き残れたのだ。
(お、落ち着くのよ……私のこの加護なら見つかりっこない。安全になるまで、が、我慢よ)
女は必死だった。
加護で姿を消しながらも、両手で口を塞ぎ、未だに夜空を飛び交う悪魔の群れに気付かれぬよう息を殺した。
見つかれば、それが自身の最期となることは一目瞭然だったからだ。
すると、マサトが急に踵を返した。
(えっ……)
運悪く、飛空艇へと向かおうとしたマサトの進路上に女は隠れていたのだ。
(な、なんでこっちにっ!?)
女は、急接近してきたマサトの迫力に思わず強く息を吸い込み、僅かな音を発生させてしまう。
そして、気配の機微を察したマサトが移動をぴたりと止めると、鋭い眼光で気配のした方角を凝視した。
(き、気付かないで! お願い!)
だが、女の願いは叶わなかった。
マサトは気配のした周辺を焼き払おうとしたのだ。
肌を焦がすほどの熱風に我慢できず、女は懇願しながら姿を現した。
「や、やめて! 殺さないで!?」
「っ!?」
咄嗟に先手を取ろうとしたマサトだったが、炎に照らされた女の表情に違和感を感じ、動きを止めた。
(と、止まった!? み、見逃してもらえる!?)
脅える女の瞳に、三対の炎の翼を広げるマサトが映っている。
その瞳をマサトはじっと見つめ、問いかけた。
「お前は海亀の魔法使いだな?」
「う、海亀? わ、私が?」
「この状況で恍けるのか?」
「ち、違う! 本当に何が何だか分からないの! 私もなんでこんな場所に飛んでいるのかすら……」
「何?」
マサトが凄むも、女は脅えるだけだ。
「ひぃ、こ、殺さないで!? わ、私はロゼアー所属の魔術師ギルド、陰日向(カゲヒナタ)のアーノ! ほ、本当にここに何故いるのか記憶がないの!!」
その言葉に、マサトが放出していた炎の勢いが弱くなる。
「ロゼアー? 知らないな」
「す、スペード領の北東にある港都市の名よ!?」
「ワンダーガーデンの北部か。そのお前がなぜ海亀にいる」
「し、知らない! ほ、本当よ!」
マサトがじっと女を見つめる。
無言の圧力に女は涙を浮かべるも、マサトは解放されたセットデッキの中にあった1枚のカードを思い出していた。
「まさか……悪魔的集団憑依か?」
【SR】 悪魔的集団憑依、(黒×5)、「エンチャント ― 領域」、[人族限定、悪魔憑依Lv3] [悪魔憑依補正+2/+0]
それは、人族限定で悪魔を憑依させ、能力を飛躍的に高める付与魔法だ。
仮に、あのセットデッキが、ヘイヤ・ヘイヤによって腐敗したプロトステガをテーマとしたデッキなのであれば、奴隷商人という立場を最大限利用したヘイヤ・ヘイヤにより、優秀な魔法使いが誘拐され、悪魔憑依によって精神操作されてきたという仮説も成り立つ。
マサトはその可能性を考えていたのだ。
アーノは訳が分からず動揺するも、マサトはその仮説を確かめるために、構わず続けた。
「動くな。目を見せろ」
「え? え?」
顔を引きつらせて後退る女を無視し、マサトが距離を詰め、女の瞳を覗き込む。
暗がりで炎で照らされているため、瞳の色までは分からなかったが、女の瞳は、闇魔法使い達に共通していた黒一色で染まった瞳ではないことは確かだった。
それだけでは十分な証拠にはならないが、マサトは確信めいたものを感じていた。
「最後に覚えていることは?」
「う、海亀がスペード領に攻撃してきて……皆で戦ったけど、か、勝てなくて。逃げる途中で捕まって、それで……そ、そこまでしか覚えて……ない」
「分かった。生き延びたいなら、ついてこい」
「え? あ……」
アーノの手を掴み、マサトは白群色の大型飛空艇、リヴァイアス号へと向かう。
リヴァイアス号には、ファージ達に連行された金色の鷲獅子騎士団が次々に収容されているところだった。
▼おまけ
【C】 澄んだ沼地、(黒)、「土地 ― 沼」、[マナ生成:(黒)] [マナ生成限界3] [召喚条件:陸地]
「例え沼と呼ばれていても、池や湖と何ら変わらないさ。唯一の違いは、マナが澄んでいるか淀んでいるかの差だよ――沼地の研究者マーシュ」
【UC】 プロトステガの家禽商人、1/2、(黒)(5)、「モンスター ― 人族」、[召喚時:獰猛なホロホロ鳥1/1召喚3]
「この種のホロホロ鳥は家畜として優秀だぞ? 警戒心が強いから平時は番犬代わりになる。産み落とす卵はでかい上に旨い! 肉も最高だ。ほら、お宅も欲しくなっただろ?――プロトステガの家禽商人」
【C】 獰猛なホロホロ鳥、1/1、(黒)(1)、「モンスター ― 鳥」、[警戒Lv1]
「クソッ! あの野郎騙しやがって! 何が番犬代わりになるだ! 獰猛過ぎて近寄れないじゃねぇか! どうやって家から出るんだよッ!――ホロホロ鳥に包囲された家主」
【R】 プロトステガの奴隷市民、0/1、(黒)(X)、「モンスター ― 人族」、[追加召喚X]
「国の庇護を受けるために、善良な市民は休まず働き、高い税を納め続ける。だが、市民達が困窮しても国が市民を助けることはない。国からすれば、彼らはただの奴隷だ――プロトステガの徴税人」
【UC】 夜空への放逐、(黒)(X)、「インスタント」、[上空転移LvX]
「プロトステガの市民にとって、陸地より下に広がる空は、都合の良いゴミ箱であり、ちょっとした娯楽だ。モノが落ちていく様子は滑稽で、少しの間、自分が最下層民だということを忘れさせてくれる――背後に忍び寄る隣人」
【SR】 プロトステガの大魔導師、テスガの影、0/3、(黒×3)、「モンスター ― シェイド」、[飛行] [不死] [制御不能] [闇魔法攻撃Lv3] [(黒):一時能力補正+1/+0 ※上限3]
「プロトステガを創造した偉大なる大魔導師は、不老の力を得るため、自らの肉体を手放した。その結果、彼はプロトステガを彷徨う影となってしまった。彼の誤算は、肉体とともに大切な思考力をも手放してしまったことだろう――プロトステガの魔法探究者サリエラ」
【UR】 プロトステガの魔法探究者サリエラ、1/1、(黒×3)、「モンスター ― 兎人族」、[カリスマ:飛空要塞都市、プロトステガにいる全てのシェイド] [支配下モンスター生贄時:シェイド0/2召喚1]
「思考能力の欠如したシェイドを操るのは、性欲に溺れた男を弄ぶくらいに容易い。愚かな男達は、私が部屋に誘っただけで喜んで訪れる。実験体にされるとも知らずに――誘惑するサリエラ」
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