【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜

飛びかかる幸運

162 - 「成長の気付き」


 シャボン玉の膜のように薄く、絹のようにきめ細かい羽を羽ばたかせて、大小様々な光の球体を見に纏った妖精が、目の前を瞬間移動するかのように消えては現れ、消えては現れを繰り返し、周囲を無邪気に飛んでいる。

 その妖精の頭部は、放つ光が強くて視認できない。

 微かに見えた身体は、昆虫のようにも、魚のようにも思える。

 妖精と呼ぶには奇怪で、昆虫と呼ぶには生々しい身体。

 ハチドリのように空中静止ホバリングする姿は、鳥のようにもみえる。

 そして、蝶が鱗粉を撒き散らすように、光の粒子を振り撒きながら飛ぶその光景は、幻想的ですらあった。

 その、誰もが見たこともないような、奇怪な姿の生き物の名を、俺は知っている。


[SR] またたきのスピリットブリンキング・スピリット 1/1 (白x4)
 [飛行]
 [手札帰還]
 [精神攻撃Lv1]


 死にそうになっても手札に戻せる優秀な能力―― [手札帰還]と、相手の防御力関係なしにダメージを与えられる能力―― [精神攻撃Lv1]を持つモンスターだ。

 そして、名前のイメージ通り、目で追うことすら難しい程に動きが素早い。

 このまたたきのスピリットブリンキング・スピリットなら、動きの速いあの二人も凌駕できるはず。


「次はこっちの手番ターンだ。覚悟しろよ」


 地上にいる暗殺者の二人を見据えると、吸血鬼ヴァンパイアがこちらが仕掛けるより先に口を開いた。


「なるほど、そうきましたか。どうやら、貴方は不利を装うのが得意のようですね。罠にかかったのは、むしろ私達の方かもしれないと……」


 そう告げながら、脇にいる口裂け少女へと小声で話しかける。


「オーチェ、少々予定が狂ったようです。先程、彼が召喚してみせたあの生き物。嫌な予感がします。一度出直しましょう」

「クククッ、力を解放したヴァゾルが怖気付くとは珍しい。いや、私が知り得る限りでは初めてか?」

「そうかもしれませんね。ですが、私の勘は当たりますよ」

「クククッ、勘か。しかし、出直すにしても、手ぶらでは闇の手エレボスハンドとして面目が保てない。もう少し確かめてからの方がいいだろう」

「それはそうですが…… 分かりました。ですが、無理だと分かったら素直に退きましょう」

「それでいい。それで…… ククク…… キィハハ! 面白くなってきたじゃないか!!」


 吸血鬼ヴァンパイアとは対照的に、オーチェと呼ばれた口裂け少女は抑えきれぬ殺気を溢れさせていた。

 耳まで裂けた大きな口から涎を撒き散らし、嬉々として挑発で返してくる。


「大層なことを言っておきながら、その小さい生き物が次の護衛? その程度がマジックイーターの力か? クククッ、手品師にしては中々だと思うぞ? だが、街の外に飼っているペットと、その光る虫で何ができる?」


 腹立たしい怪物だ。

 この状況下で挑発してくるとは。


「さぁ、何ができるだろうな。まぁそこで見てろ。いけ、またたきのスピリットブリンキング・スピリット!」


 俺が指示を出すと、またたきのスピリットブリンキング・スピリットはその姿を明滅させながら、無規則に飛んだ。

 周囲に、またたきのスピリットブリンキング・スピリットが飛んだ軌跡であろう光の残像だけが無数に増えていく。


「くっ、速い……」


 吸血鬼ヴァンパイアまたたきのスピリットブリンキング・スピリットの動きを捉えようと集中しているようだが、上手く捉えられないのか、先程までのポーカーフェイスが嘘だったかのように苦々しく顔を歪ませている。

 一方、口裂け少女は――

 こちらに向かって飛翔してきていた。


「キィハハ!!」

「なっ!?」


 まさか一直線に突っ込んでくるとは思わず、一瞬驚いてしまったが――口の裂けた少女が真っ赤な大口を開けて飛びかかってきたら流石にビビる――すぐさま気持ちを気持ちを切り替え、攻めに転じる。

 身に纏う炎をより濃く、激しく炎上させ、突っ込んでくる怪物を迎え討つ。

 すると、少女は炎の膜の手前で口から大量の黒い何かを吐き出し、炎の膜との接触を回避。

 視界だけが真っ暗に遮られた。


「ちっ、これじゃあ前が見えないだろ…… オラァァアア!!」


 有り余る赤マナを追加投入し、巨大な火柱を周囲に発生させ、その炎の勢いと、その熱によって発生した急激な上昇気流によって、黒い靄を上空へと吹き飛ばす。

 視界が開けると、すぐ目の前に、真っ黒に焼け焦げた何かが「キィハハ!」と甲高い声をあげて迫ってきていた。


「そのまま突っ込んできたのか!?」


 怪物が突き出してきた左手を、咄嗟に宝剣で斬り落とすも、大口を開けて迫ってきた本体に接近を許してしまう。


「ほぉら、入れた」


 毛が全て焼け落ち、肌が過度の熱傷で焼けただれた怪物――少女がニタリと笑う。

 だが、その不気味に笑う顔に向けて、俺は左手をかざし――


「あぁ、そうだな。おめでとう。じゃあ特別にこれをくれてやるよ」


 灼熱の火球をプレゼントした。

 火球が大量の火の粉とともにボンッと放たれ、その火球を抱くようにして、丸焦げの少女が火球と一緒に吹き飛ぶ。

 その焦げた身体からは、血のように黒い靄が飛び散り、飛行機雲のように後を引いていた。

 そして地面へと落ち、爆発。

 森の中に巨大な赤い花が咲き、もくもくと黒い煙をあげた。


「意外に呆気なかったな…… ん?」


 ふと、右足に違和感を感じ視線を下げると、そこには先程斬り落とした少女の真っ黒に焼けただれた左手が、がっしりと足に掴まっていた。


「げっ!? なんだこれ!?」


 足を振り払うも、離れる様子はない。

 すると、その左手の切断面から黒い靄が噴き出し、急に膨張し始めると、瞬く間に少女の輪郭を形取った。

 黒い靄で作られた少女がケタケタと笑う。


死人しびとと戦うのは初めてか? この程度で私は死なんぞ?」

「そうきたか…… 魔法も物理も効かないなんてどんなチートだよ」


 少しずつ実体を取り戻してきた少女が、真っ黒で鋭利な爪を突き立て、俺の下半身をよじ登ってくる。

 最初は恐怖でしかなかったその顔も、ある程度余裕が出た状態で見てみれば、そこまでビビるほどのものでもないと気が付いた。

 俺の周囲を旋回するように舞う光の粒子。

 その光が、俺に余裕をもたらしてくれる。


「キィハハ! 次はどうする? 次は私に何を見せてくれる? クククッ、キィハハハ!!」

「はぁ…… 楽しそうなところ悪いが、もう終わりだ。取り敢えず、そのだらし無い口を閉じとけよ。舌噛むぞ」

「何……?」


 言葉の意味が分からず、僅かに目を細めた次の瞬間、少女の黒く塗りつぶされた瞳が、今度は飛び出さんばかりに大きく見開いた。


「ギィヤヤヤアアア!?」


 突然の絶叫。

 しがみ付いていた手を離し、頭を抱え、勢いよく身体を仰け反らすと、悲鳴をあげながら落ちていく。

 成功だ。


「MEでのルールではな、物理無効でも魔法無効でも、相手が無機物じゃなけりゃ精神攻撃は効くんだよ。今回は、相手が悪かったな」


 落ちていく少女の周りに発生する光の軌跡。

 またたきのスピリットブリンキング・スピリットが周囲を飛びながら、口裂け少女へ [精神攻撃Lv1] を行使し続けている。

 その攻撃には、色も、音もない。

 実態のない攻撃故に、防ぐことも、逃げることもできない不可視の攻撃。

 どんなに防御力を高めても、どんなに強固な魔法障壁で守りを固めても、いとも簡単に直接本体へダメージを与えてくる必中の一撃でもある。

 この [精神攻撃Lv1] に、目で捉えることすら難しい圧倒的な素早さと、例え倒されそうになっても [手札帰還] できるという優秀な回避性能を持つのが――またたきのスピリットブリンキング・スピリットというモンスターなのだ。

 まさにSRという価値が相応しいカードでもある。

 吸血鬼ヴァンパイアと口裂け少女という、見るからに厄介そうなこの二人相手に、礼拝堂の守護霊ガーディアン・オブ・チャペルを犠牲にしてまたたきのスピリットブリンキング・スピリットを召喚した俺の判断に間違いはなかった。


「オーチェ! くっ、嫌な予感が当たってしまいましたか! 眷属達よ!」


 それまでまたたきのスピリットブリンキング・スピリットの攻撃を受けていたのだろう。

 先程まで苦悶の表情で膝を折っていた吸血鬼ヴァンパイアが、何処からともなく大量の蝙蝠を飛び立たせると、その蝙蝠達の一部が一直線にこちらへ突っ込んできた。

 短い悲鳴をあげながら、次々と灰と化していく小さな蝙蝠達。

 突っ込んで来なかった蝙蝠は、こちらの視界を妨害しようと周囲へ散っている。

 その時、落ちていく少女へ接近する黒い影が視界に入った。


「逃すかよ!」


 いつの間にか追う立場になっていることにも気付かず、口裂け女を助けようと移動した吸血鬼ヴァンパイアへ目掛け、全力で降下する。

 集中力が高まり、先程までは捉えられなかった吸血鬼ヴァンパイアの動きも、今でははっきりと見えていた。


(見える! これなら…… いける!!)
 

 少女へ向けて飛翔する吸血鬼ヴァンパイアと、その吸血鬼ヴァンパイアの移動先目掛けて真っ逆さまに降下する俺。

 俺の存在に気付いた吸血鬼ヴァンパイアがすかさず剣を振り抜くと、自身の腕を躊躇なく斬り落とした。

 切断された腕の断面から真紅の血が勢いよく噴き出し、瞬く間に少女へと伸びる。


(く、血を自在に操れるのか!)


 伸びた血が、まるで意思を持った手のように少女の身体を掴むと、吸血鬼ヴァンパイアは少女を自身へと引き寄せた。

 だが、またたきのスピリットブリンキング・スピリットがその動きに追従し、少女への攻撃を継続する。


「ギィイイイイイ!?」

「オーチェ! 気を確かに! こ、このままでは……!!」

「逃すかっ!!」

「なぜ貴方が私の動きについて来れる!? まさか…… 今までの動きもブラフだったのですか!?」


 追いすがる俺を見て、吸血鬼ヴァンパイアが驚き、焦る。

 勝手に驚いているが、今まで力の出し方を今一掴みきれていなかっただけで、弱く見せていた訳じゃない。

 ニドとの一戦は、無我夢中だったので無意識に実行していたみたいだが、今回の戦いは、序盤から不意打ちの連続で圧倒され続けたせいで、目に見えない程に素早く移動する相手に対応しきれないと無意識に萎縮してしまっていただけだったようだ。

 だが、それも対応できる力があると分かれば、話は早い。

 土台、元々の性能に差があり過ぎるのだ。

 5/5のステータスに、ライフ40超えの化物の身体で、圧倒できない訳がなかった。


「逃げ場はないぞ。諦めろ」


 周囲を炎の壁で囲い、吸血鬼ヴァンパイアの逃げ場を封じた俺は、少女を抱きながら地に座り込む形で苦々しい表情を浮かべている吸血鬼ヴァンパイアの首へ向けて、宝剣を差し向けた。

 そのまま攻撃の手を止めた俺に、吸血鬼ヴァンパイアが話しかける。


「優しいですね…… 私に命乞いをさせてくれるのですか?」

「仲間の女を抱いて逃げたと見せかけて囮になるような奴に、命乞いさせると思うか? その胸に抱いている人形はなんだよ」

「やれやれ…… 見破られていましたか……」


 吸血鬼ヴァンパイアが胸に抱いていた少女の姿が崩れ、無数の蝙蝠へとなって飛び立った。

 だが、その蝙蝠達も、炎の熱に晒されてすぐに焼け死んでいく。

 吸血鬼ヴァンパイアが落下を受け止め、胸に抱いていたと思っていた少女は、いつの間にか消えていた。


「あの女には、俺の使役モンスターがそのまま追従している。運が良ければ逃げられるかもな」

「運が良ければ逃げられる? なるほど…… 最初とは違い、かなり余裕がありますね……」

「実際、お前達との戦いで余裕ができたからな」

「余裕ができた? どういうことですか? まさか、この短時間で成長したとでも?」


 成長したというより、成長していたという方が正しい気もする。

 吸血鬼ヴァンパイアに教える必要もないが。


「これ以上、お前と無駄にお喋りするつもりはない。質問は俺がする。言われたことにだけ答えろ」


 そう告げられた吸血鬼ヴァンパイアが、口元に笑みを浮かべ、「フッ」と短く笑った。

 含みのある笑い方だ。


「いいでしょう。質問をもらえますか? 長く生きてきた私の知識で良ければ、お貸ししましょう」

「知識? そんなもの今は必要ない。俺が聞きたいのは二つ。まず一つ目、依頼主は誰だ」


 少しの間をあけて、吸血鬼ヴァンパイアが答える。


「いいでしょう。本来なら依頼主の情報は渡せませんが、この状況ですし、教えましょう。依頼主は、公国の王――ハインリヒ三世、当人です」

「公国……」

「そう、公国の王です。一国の王が、他国の王の暗殺を依頼したに過ぎません。ですが、例え闇の手エレボスハンドでも、普通なら受けることのない仕事です。王というものは、その立場上、横の繋がりが広いもの。意図せずに不可侵を結んでいるギルドと敵対することにもなりかねません。仕事を受けることでの影響範囲が広く、リスクが大きすぎる。しかし、今回は少し状況が違いました。ローズヘイムが新興国であり、規模が小さかったのが大きな理由だと考えています。勿論、国落としに加担するのですから、相応の依頼料が動いたことは言うまでもないでしょう」

「早い話が、俺の国は暗殺ギルドで落とせる程度だと、舐められてるということだな」

「ええ。そういう表現をしても間違いではありませんね」

「これが大人しくしていたツケか…… くそ…… 腹立つな…… まぁいい。二つ目の質問だ。お前が殺した俺の民のことを教えろ」

「そんなことが聞きたいのですか? 分かりました。そうですね。洗濯物を干していた恰幅のいいご婦人に、その子供と思わしき少女。後は、私達の気配に目敏く気付いた猫耳の女性でしょうか。どのお方も大変美味でしたよ」


 挑発なのか、はたまた素で言っているだけなのか。

 そう話した吸血鬼ヴァンパイアの表情は至福そうで、その食事の際の感動を思い出しているかのようだった。


「……亡骸はどうした」

「亡骸ですか? 私は残飯を放置するようなマナー違反はしませんよ。しっかりと全て灰にして、土に返しました」

「……そうか」

「ああ、ですが一人だけ。猫耳の女性だけはまだ利用価値がありそうだという話になりましたので、私達の仲間が人質として拘束しています。と言っても、このままでは数時間で命を落としかねない状態ではありますが」


 吸血鬼ヴァンパイアの瞳が鋭く光る。


「その猫耳の女性の名前は、ロア・ニニスというそうです。冒険者ギルドの受付嬢らしいですね。ご存知ですか?」

「ロア…… さん……」


 胸の奥に、ギリギリと何かに締め付けられたような痛みが走る。

 冒険者ギルド、ローズヘイム支部の看板受付嬢のうちの一人。

 犬歯が可愛い猫耳の女性だ。

 俺の心の動揺を察したのか、吸血鬼ヴァンパイアが交渉を持ちかけてきた。


「どうでしょう。人質と引き換えに、この一戦は痛み分けにしませんか?」


 吸血鬼ヴァンパイアが停戦を持ちかけてきた。


 ――痛み分け。

 ――痛み分け?


 俺を暗殺しようとしたことに対しては、腹は立つが、それ相応の見返りが得られれば我慢はできる。

 ニドや後家蜘蛛ゴケグモ相手には、そうやって許してきた。


 ――許してきた?

 ――まさか、その甘さが、この事態を招いたのか?


 サーズでは、仲間を傷つけたグーノム達を皆殺しにして見せしめにした。

 その効果は覿面だったと聞く。

 だが、ローズヘイムでの俺は、聖人であり、ドラゴンをも従える英雄王だ。

 サーズで密かに広まっている暴虐王とは真逆の人物像になっている。

 もし、それが理由で招いた事態だったら?

 暗殺しても、許されると思われているのだとしたら?

 そう考えると、怒りが沸々と込みあげてきた。

 少なくとも、公国へ示威行為をするなりして牽制していれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。

 公国が暗殺を依頼することも、闇の手エレボスハンドがその暗殺を受けることも、ローズヘイムで静かに暮らしていた親子が殺され、ロアさんが人質に取られることもなかった――


「……分かった。理解した」

「そうですか。それは良かった。では、この光の剣を退けてもらえますか?」

「ふざけたことを…… ここでお前を見逃せば、またお前や公国みたいな連中が仕掛けてくるだけだろ」

「私を見逃さなくても、それは変わらないかと。しかし、いいのですか? 猫耳の子がどうなっても」

「黙れ。闇の手エレボスハンドはレイアの古巣だと知っていたから、出来れば穏便に済ませられないか考えていたが、人質を返して欲しければ停戦しろ? 舐めるなよ」

「ああ、レイアがそちらについているのは承知していますよ。今頃、他の簒奪者タロンがレイアと接触している筈です」

「何だと!?」

「人質は、一人とは限らないということです」


 その言葉を受けて、頭の中で何かが切れる音がした気がした。


 ――レイアにも刺客が?

 ――ふざけるな。

 ――絶対に許せない。


「俺のレイアとクズノハに少しでも傷をつけてみろ。この世の地獄をお前達に見せてやる」

「それはできない約束です。私達が干渉するのです。無傷とはいかないでしょう」

「何? そこまでしておいて…… 仲間に手を出したお前を、お前達を、俺がそう簡単に許すと本当に思ってるのか?」

「それでも、仲間の命が大切ならば、貴方はこの条件を飲むしかありませんよ」

「……そうかよ。じゃあ、お前の仲間全員に、自分達の行動が愚かだったと思い知らせるだけだ」

「私達に? それは現実的ではありませんね」

「それはお前が決めることじゃない。お前の仲間が、お前の末路を見て決めるだけだ」


 問われた言葉の意図が掴めなかったのか、吸血鬼ヴァンパイアが怪訝な表情に変わる。


「どういうことですか? 質問の意味が……」

「すぐに分かる」

「何を……」


 左手に黒い光の粒子を発現させる。


吸血鬼ヴァンパイアは不死身なんだろ? 生きたまま喰われた場合、死ぬのか? それとも、永遠に喰われ続けるのか? どっちだ?」


 殺意の篭ったその言葉と視線に、吸血鬼ヴァンパイアの身体が強張った。

 だが、逃げようとしても無駄だ。

 この炎の膜の外へは、絶対に逃がさない。


 俺は、警戒する吸血鬼ヴァンパイアを冷たく見下ろしながら、死刑執行人に相応しいモンスターの召喚を行使した――



「肉裂きファージ、召喚」

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