【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜

飛びかかる幸運

89 - 「ローズヘイムの地下通路にて」

 ローズヘイムへ到着したクラン「竜語りドラゴンスピーカー」とソフィー達は、目を覚ました「アンラッキー」メンバーと共に、「グレイフォックス」メンバーの案内で地下通路を進んでいた。


「あたしらが居ない数日で、まさか本当に土蛙人ゲノーモス・トードの連中が攻めてきてるとはね。ローズヘイムの城壁に、茶色のデカイ蛙が大量に貼り付いてるのを見たときは、さすがのあたしでも一瞬目眩がしたよ」

「マーレさんもですか…… わ、わたしも目眩がしました……」


 人一人がようやく通れる程度の狭い地下通路を、一列になって話しながら進んでいく。

 マーレが少し屈みながら進み、その後ろをパンが追う。先頭はグレイフォックスで、最後尾はワーグだ。ワーグは大きい身体を時より壁に擦らせながら窮屈そうに進んでいる。

 そうして歩くこと数分。

 狭い通路は、外壁を石で補強された通路へと繋がっていた。

 カビ臭い淀んだ空気が鼻をつく。


「ローズヘイムの地下にこんな通路があったなんて……」


 ソフィーの呟きに、マーレが食い付いた。


「流れ者のあたしらが知らないのはまぁ分かるけどさ、まさか冒険者ギルドのサブマスターも知らない地下通路があるなんて、この都市は大丈夫なのかい? しかも城門を通らずに中へ入れるんだろ?」

「この街にとっては大問題でしょうね。でも、それはあくまでもこの街の問題。私には何の関係もないわ。それに、冒険者ギルドも全てを把握している訳じゃないのよ」


 マーレの問いに、あまり興味がないように返答するソフィー。


「そうかい。冒険者ギルドも大して頼りにならないもんさね」

「マ、マーレさん!」


 マーレの皮肉にソフィーが睨み、パンが慌てた。

 だが、睨まれたマーレは涼しい顔だ。


「でもこんな隠し通路、偶然見つけられるもんかねぇ〜。なぁ? デクスト坊や」

「そ、そんなこと言われても…… 依頼中に偶然見つけたって何度も説明したじゃないですか……」

「偶然ねぇ〜」


 尚も疑いの目を向けるマーレに、グレイフォックスのリーダーであるデクストは気まずそうに背を丸めながら通路を案内する。

 すると、突然フェイスが短く声をあげた。


「静かに!」


 その言葉に身構える一同。


「この先で誰かが交戦してる…… いや、こっちに向かってくるぞ!」

「ライト! 前方を限界まで照らして!」

「は、はい!」


 ソフィーに促され、ライトが光の呪文を行使する。その直後、地下通路がまるで白熱灯を点けたかのように明るくなった。

 同時に「ぎゅぇえ」という低い叫びが聞こえる。

 声のした方向――光で照らされた領域に最初に駆け込んできたのは、漆黒のローブに身を包んだ集団だった。

 手にはそれぞれ短剣と思わしき武器が見える。


「そこで止まりなっ!」


 マーレが声をあげるも黒いフードローブ姿の集団が止まる気配はない。

 それどころか、それぞれが武器を構えながら加速したようにも見える。


「あ、あれは、まさか……」


 その集団を見たソフィーが目を大きく見開いた。

 だがそれも一瞬。

 すぐさま全員の前に躍り出ると、両手を広げながら叫ぶ。


「私は冒険者ギルドのサブマスター、ソフィーよ! 今はあなたたち闇の手エレボスハンドと交戦する気はないわ!」


 ソフィーの言葉に、黒いフードローブ姿の集団が突如ピタリと動きを止める。

 その集団が放つ殺気に、全員が針を突きあてられたかのような痛みをチクチクと感じていた。


「ほほぅ。何が出てきたのかと思えば、蛙の次は冒険者ギルドのサブマスター様とは。それにどうやら我々を知っているらしい。日陰者の我々も有名になったものだ」


 そう言いながら姿勢を正し、ゆっくりと近付いてくるのは――闇の手エレボスハンド、ローズヘイム支部の長である死人しびとのオーチェだ。

 背は低く、目元深くまで被ったフードローブからは、石灰を塗りたくったように白い肌に、耳まで裂けているかのような血のように紅い口が見える。そのコントラストが、オーチェの不気味さをより際立たせていた。

 オーチェの狂気染みた笑顔と、その小さな身体から放たれているとは思えない程の異様な威圧プレッシャーに、ソフィー以外のメンバー全員が後退る。


「ククク、そう怖がらなくてもいい。本来ならそのまま殺して終わりだが、既に竜語りドラゴンスピーカーとはやり合わない契約をしていてね。そちらが道を開けてくれるなら、我々も何もしないと約束しよう」


 なぜ竜語りドラゴンスピーカー闇の手エレボスハンドと不戦契約をしているのか。そもそもなぜ裏の組織と繋がりがあるのか。ソフィーはその事実に強い引っかかりを覚えたが、今はそれどころではないと新たに生まれた好奇心を振り払った。


「そう…… なら話は早いわね。それなら、私たちもあなたたちの邪魔はしないと約束するわ」

「宜しい。契約成立だ。竜語りドラゴンスピーカー 見逃そう」


 マーチェのその発言に、強い殺気を感じたライトが、反射的に応戦しようと動いた。

 素早く杖に魔力マナを込め、詠唱を発しようと口を開く――

 だが、ライトは次の行動に移すことができなかった。

 ライトの背後にはいつの間にか背の高い黒ローブが回り込んでおり、冷や汗を浮かべるライトの喉元へは赤黒い剣が突きつけられていた。


  「うぐっ!?」

「動かないことをお勧めしますよ。まだ生きたければですが」


 音もなくライトの背後に現れた長身の黒ローブに、全員の視線が集まる。


「い、いつの間に!?」


 ライトの隣に立っていたフェイスが驚きつつも、黒ローブへ向けて素早く短剣を構えた。

 それをワーグが止める。


「止せフェイス! 手を出すな!」

「なっ!?」

「フェイスだけじゃない! 全員だ!いいな!?」


 最後尾にいたワーグが武器を捨て、両手を上げながら間に割って入る。

 するとそれを見たオーチェが「ククク」と笑った。


熊の狩人ベアハンターのリーダー、ワーグか。賢い判断だ。契約とはいえ、我々が自己防衛をしない訳ではないからな。攻撃されたとあっては応戦するしか……」


 すると、ライトの喉元へ剣を突き付けていた男が、オーチェの話を遮って話し始めた。


「オーチェ、その辺にしておきましょう。それ以上は、他の簒奪者タロンが勘違いします。貴方が率先して契約を破らせようとするのは、私としても感心しません」

「そう言うなヴァゾル。ちょっとした冗談じゃないか。挨拶代わりのようなものだ」


 ヴァゾルと呼ばれた男が、軽く首を振りながら少し肩を落とす。そしてそのまま、ライトの喉元へと回していた剣をローブの袖の中へと引っ込めた。


「それが貴方の挨拶の仕方ですか…… 頭の痛いことです。ですが、私としても契約違反はしたくありません。今後の仕事に差し支えますからね」


 首を振った反動で少し浮いたフードローブの隙間から見えたその男の瞳は、黒い結膜に血のように紅い瞳孔をしていた。


「ヴァ…… 吸血鬼ヴァンパイア!?」


 その瞳を見たパンが悲鳴に近い叫びをあげ、その言葉に全員が動揺する。


「おっと失礼を…… これは……」

「ククク…… ヴァゾル、吸血鬼ヴァンパイアとバレてしまっては、このまま生かしておくのは危険ではないか?」

「貴方のその発言のお陰で、誤解を解くのが更に難しくなったように思えますよ」

「私のせいか? ヴァゾルが瞳を見られなければ起きなかった問題だろう?」

「そういうと思っていましたよ。予想通りで嬉しい限りです。そうですね…… どうしましょうか…… また吸血鬼ヴァンパイア狩りが始まっても厄介ですし……」


 一人悩み始めたヴァゾルを尻目に、解放されたライトがソフィーと共に後退。自然と竜語りドラゴンスピーカー側の面々が集まり、闇の手エレボスハンドと対峙する形になった。

 黒いフードローブの隙間から鋭い眼光を向けてくる闇の手エレボスハンドのメンバーと、武器を構え直す竜語りドラゴンスピーカー側のメンバー達。

 その沈黙をソフィーが破る。


「あなたが吸血鬼ヴァンパイアかどうかは知らないけど、知ったところでどうにもしないわ。他人に話したところで鼻で笑われるのがオチよ」


 ソフィーの言葉に、オーチェがニヤニヤと口元に笑みを浮かべながら応える。


「どうにもしない? 口では何とでも言えるだろう。それに冒険者ギルドのNo.2の言葉だ。たとえ絵空事だとしても言い方一つで印象は大きく変わる。それを信じ込ませるための手段だって考えれば山程あるぞ? 何より、他の者が信じずともギルドマスターは信じるのではないか? 信用のない者をサブマスターになどしないだろう。特に、あのヴィクトル・マリー・ユーゴという男は」

「ぐっ……」


 オーチェの言う通り、仮にソフィーがヴィクトルに報告した場合、それがたとえ絵空事だとしても最悪を想定して動くのがヴィクトルだ。その性格を知っているだけに、ソフィーとしては上手く反論が出来なかった。

 闇の手エレボスハンドとの交戦は百害あって一利なしだ。たとえ今回のような非常事態状況でなくとも、全力で回避策を講じただろう。

 一瞬の躊躇いの後、ソフィーは説得を続けた。


「し、仕方ないわ…… ならこちらも相応の情報を……」


 吸血鬼ヴァンパイアが存在するという情報に等しい価値を持つ情報――マジックイーターの存在を渡そうとしたソフィーは、ふと、なぜ闇の手エレボスハンド竜語りドラゴンスピーカーと不戦契約をしているのかということに思い至る。


(一度冷静になるのよ…… たとえ闇の手エレボスハンドだとしても、マサトをマジックイーターだと知っているのなら、彼を敵に回すようなことはしないはず…… それなら……)


 ソフィーは努めて冷静に、相手にブラフを見破られないようオーチェを見据え直す。

 そして話し始めた。


「表向きの立場や所属は違うけど、私達は竜語りドラゴンスピーカーのクランリーダー、マサトの部下よ。私達を傷付ければ、マサトが黙っていないわ。それでも本当に私達を襲うつもり?」


 ソフィーはオーチェを睨みつつ、はっきりと言い放つ。その言葉と態度に、オーチェが「ほほぅ」と声を漏らした。


「我々が竜語りドラゴンスピーカーのクランリーダーを恐れるとでも言いたいのか?」

「恐れるかどうかまでは知らないわよ。でも、あなた達ほどの手練れなら、マサトを敵に回すのと手を組むのとで、どっちに利があるのか正しく理解しているはず。違うかしら?」

「ククク…… その自信の根拠は何だ? お前は何を知っている?」

「さぁ何かしら。あなた達と知っている内容は然程変わらないと思うけど」


 マーチェは絶えず口元に笑みを浮かべている。瞳はフードが邪魔で見えないが、ソフィーはオーチェの顔から視線を外すことが出来ないでいた。


(くっ…… お願いだからこれで引いて頂戴!)


 すると、そのやり取りに痺れを切らした黒いフードローブの一人が突然会話に入ってきた。


「…オーチェ、竜語りドラゴンスピーカーのマサトは、大通りでボンボ相手に騒ぎを起こした奴だろ? からかう相手を間違っている気がするが」


 喉が枯れたようなガラガラ声で話すその黒いフードローブ姿の下半身からは、蜥蜴人リザードマンと思える特徴的な尻尾がローブから出ている。

 その言葉を受けたオーチェが、右手を口に当て、口元を隠しながら小刻みに笑った。その手は真っ白で、爪は真っ黒に変色しており、まるで死人のようにとても不気味に見えた。


「ククク…… 仲間に諭されては仕方ない。おふざけはここまでにしよう」


 そう言うと、オーチェが何もなかったかのようにソフィーの脇を通り抜ける。

 その後に続くようにして、他の黒いフードローブ――闇の手エレボスハンドのメンバーも歩き出す。

 竜語りドラゴンスピーカー側のメンバー全員に緊張が走ったが、結局は何事もなく闇の手エレボスハンドは通り過ぎ、再び闇へ消えていった。


「た、助かった……」

「生きた心地がしなかったでござる……」

「うん、怖かった……」


 三葉虫トリロバイトのセファロ、ラックス、ジディがそれぞれ吐息を洩らす。

 すると突然セファロの背後に黒い影が現れ――「誰が怖いって?」と耳元で囁いた。


「きぃゃぁああああ!?」


 セファロが叫び、その叫びに全員が目を剥いて驚いた。


「ククク…… 心地良い叫びだ」


 再び現れたオーチェに、驚きのあまり尻餅をついたセファロは、後ずさりながらも必死にオーチェを指差しながら抗議した。


「な、何すんだ!? 行ったんじゃなかったのかよ!? ま、まさか、わざわざ脅かしに来た訳じゃないだろ!?」

「そのまさかだとしたら?」

「だ、大成功だよコノヤロー!」


 セファロのビビりながらも物怖じせずに発言する姿と、先ほどの異様な雰囲気とは対照的に、まるで子供が悪戯を成功させて喜ぶように口に手を当ててクスクスと笑うオーチェに、他のメンバーは動揺を隠せなかった。

 一通り笑ったオーチェは満足したのか、再び不気味な笑みを見せると、この状況を見守るメンバーへこう告げた。


「良い悲鳴を聞けたお礼に、私から一つ情報を与えよう。背中の赤い蜘蛛達がお前たちを捕まえようと至る所に網を張っている。気をつけ給え。奴らはいつの間にか懐へ忍び込んでくるぞ? ほらそこにも……」


 そう言いながら指を指したオーチェ。

 その方向にメンバーは視線を一瞬移動させるも、そこには誰もいない。

 すぐ視線を戻したときには、既にオーチェの姿はなかった。


「き、消えた」


 セファロが呟き、周囲を注意深く見回す一同。

 誰もいないことを確認すると、ソフィーが眉間に皺を寄せながら口を開いた。


「背中の赤い蜘蛛…… 後家蜘蛛ゴケグモの連中のことよね…… 土蛙人ゲノーモス・トードを相手しないといけない状況で後家蜘蛛ゴケグモに背中を狙われるなんてことがないといいけど」

「厄介事は重なるもんさね」

「うむ、先を急いだ方が良いな。今は土蛙人ゲノーモス・トードの侵攻を食い止めるのが最優先だ」


 ワーグの言葉に、全員が頷く。

 闇の手エレボスハンドがやって来た道を進むと、周囲には通路に侵入したと思われる土蛙人ゲノーモス・トードの死体が無数に転がっていた。

 暫くすると、通路は迷路の様に分岐し始めたが、デクストの案内で迷うことなく進み続けることができた。

 そして壁の細工を弄って出現させた通路から地上へ上がると、そこは古びた屋敷の倉庫へと繋がっていた。

 ソフィーが今回の一件が落ち着いた後に屋敷の持ち主を調べよう心に決めると、一同は街の中を闊歩する土蛙人ゲノーモス・トード達を見て唖然とする。


「そんな…… 城門は破られてなかったはずよ! なんでこんなに土蛙人ゲノーモス・トードで溢れているのよ!?」


 ソフィーが声を荒げると、すかさずライトが宥めようと声を掛ける。


「ソ、ソフィー姉さん! お、落ち着いて! まずはマスターを探しに行きましょう!」

「そ、そうね、まずは冒険者ギルドへ行くわよ。あなた達はどうするつもりかしら?」


 声を掛けられたワーグが、マーレやフェイスに目をやり、互いに頷き合った。


「儂等は一度拠点の屋敷へ戻る。屋敷に残ったメンバーの無事を確認せねば」

「そう、分かったわ。グレイフォックスのメンバーはどうするつもり?」


 ソフィーの問いに、デクストが答える。


「ぼ、僕たちもワーグさんたちに同行します。マサトさんに報告もあるし……」


 スクープとラフレイも、デクストの言葉に頷いた。

 結局、ソフィーとアンラッキーメンバーは冒険者ギルドへ。竜語りドラゴンスピーカーとグレイフォックスメンバーは、竜語りドラゴンスピーカーの拠点へと移動することとなった。

 街内には敵襲を知らせる警鐘が絶えず響き渡り、地上へ出た一同の不安を囃し立てるのだった。



 ◇◇◇



 竜語りドラゴンスピーカーのメンバーと別れたソフィー達は、悪臭の酷い道を鼻をつまみながら、冒険者ギルド目指して小走りに走っていた。

 すると、突然大きな衝撃音とともに地面が揺れた。


「何!? 今度は何が起きているの!? ライト、今すぐ光の魔力探知ライトディテクションで周囲を探って!」

「は、はい!」


 ソフィーの指示に従い、ライトが周囲の魔力を探知する魔法を行使する。

 ライトの杖の先端ヘッドが光り輝き、ソナーの様に薄い光の膜が周囲へと広がった。その光の膜は一定間隔で次々に放たれている。


「中央広場に何か大量に湧いてます! それと…… と、とても巨大な魔力マナが新たに一つ見えます!」

「きっと敵の主力ね…… こちらの状況は分かる?」

「か、数が多くてそこまでは…… あ」

「何? 厄介な報告ならもうお腹いっぱいよ」

「い、いえ! 東から凄いスピードで何かやって来ます! 大量に…… これは…… 騎兵キャヴァリィ?」


 数分後、ソフィー達の目の前を洗練された鎧に身を包んだ騎兵の一団が通り過ぎた。

 その一団に真っ先に反応したのは、王都勤めのアンラッキー達だ。

 騎兵キャヴァリィを目で追いながら、スフォーチがバラックへと声を掛ける。


「な、なぁバラック。あ、あれって…… 女王陛下だったよ、な?」

「いや、俺は直接見たことはないから分からないが…… 周りの騎兵キャヴァリィが着ていた鎧は、確かに近衛騎士団クイーンズガードのものに似ていた気がする。でもなぜここに?」


 バラック達のやり取りを耳にしたソフィーがハッとした顔をした。


「まさか…… もしあなた達の言ったことが本当なら私達もすぐ後を追うわよ!」

「えっ!? マスターとの合流が先じゃないんですか!?」

「この状況で、ヴィクトルがボロギルドにずっと立て籠もってるはずもないわ。アローガンスから近衛騎士団クイーンズガードが援軍に来たとなれば、ヴィクトルも連携しようと動くはず。つまりは追うのが正解よ!」

「ええっ!? あ、は、はいっ! あ、ソフィー姉さん待ってください! 一人で突っ走らないで!」

「お、おい! スフォーチ、俺たちも走るぞ!」

「そ、そうだな。アンハー遅れるなよ!」

「も、もう疲れたんだな……先に行ってほ――」

「アンハー早くして! 土蛙人ゲノーモス・トードに襲われてもいいの!?」

「それはもう懲り懲りなんだな…… というよりぼくより足の遅いイルフェに言われたくないんだな」

「なんですって!」

「二人とも置いていきますよ!」

「あ、ピレス待ってよー!」


 一行が向かう中央広場からは、再び大きな爆発音が轟き、土煙がもくもくと立ち昇っていた。

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