【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜
16 -「卒業と夢」
目の前のダークエルフが、突然脱ぎ始めた。
褐色の肌に、形の良い乳房、そして肌よりも黒い色をした突起。
腰はくびれて、腹筋も程よく割れている。
縦に切れ目を入れたような綺麗なヘソ、下腹部に毛はなく、その先端は二つに割れている。
心臓が痛いくらいに高鳴る。
童貞の俺には刺激が強過ぎる光景だ。
まだ現実かVRかの区別もついていないというのに!
俺が黙っていると、痺れを切らしたレイアが声をかけてくる。
「取引をしよう。いや、お前に命を握られているこの状況で取引を持ち出すのも可笑しい話だったな。お前にお願いがある。私からお前に対しての一方的なお願いだ」
「………」
「私の身体をお前に捧げる。だから私の願いを聞いてほしい」
「………」
「……ダークエルフという卑しい身体では嫌か?」
俺が言葉を失っている間、レイアは何を勘違いしたのか、俺の態度を否定的なものだと受け取ったらしい。
少しずつ態度が弱々しくなっていく。
(か、考えろ…… 俺)
あの極上の身体を好きに出来る権利という至高の餌の奥に隠れる釣り針の存在を!!
(うむ…… むむむ…… 無理だっ!!)
よく分からないが、あの獣肉を食べてから、下半身が今にも爆発しそうなくらいギンギンになってしまっているんだ!!
この状況で女性の裸体を前に、冷静になれという方がどうかしてる!!
据え膳食わぬは男の恥!!
もう思考はこれからの行動を正当化しようとする考えで埋め尽くされている。
理性が息をしていない。
そして導き出した答えは、欲望にとても忠実なものだった。
「むしろ大好きです」
この夜、俺は少し大人になった。
◇◇◇
…。
………。
……………。
俺は夢を見ていた。
空を飛ぶ夢だ。
いや、飛んでいるというのも少し違う。
漂っているという方が正しいかも知れない。
そう、夢の中での俺は、空気中を漂う魔力だった。
俺は暗闇に覆われた山々と、地平線まで続いているかのような立派な城壁、そしてその双方に挟まれた平原を遥か上空から見下ろしている。
不思議と恐怖心はない。
これも夢だからだろうか?
だが、意識はある。
不思議な感覚だ。
平原や城壁を、月明かりが照らしている。
しかし、反対側の山は何故か暗闇に覆われたままだった。
(なぜあそこだけ月明かりが届いてないんだ……? ……ん? ……何か動いてる?)
理由はすぐに分かった。
暗闇に見えたのは、山を埋め尽くすようにひしめき合う黒い魔物のせいだったのだ。
その数、数十万から数百万にも見える。
地には食屍鬼やゾンビ等のアンデッド系モンスターが、空にはインプが、一面を漆黒に染めるほど大量に蠢いている。
そして、その軍団の中央には、赤い眼をした死神が、城壁の中央に立つ黒いローブ姿の男を見据えて微笑んでいた。
対する城壁側には、全身を鋼鉄の鎧と盾に身を包んだ兵士が1〜2万程。
城壁を背に整列している。
城壁の上には弓兵が大勢待機しているが、とてもじゃないが多勢に無勢な様子だ。
(なんか、映画のワンシーンみたいな場面だな…… 闇の軍団に立ち向かう人間達、みたいな……)
マサトはその光景を見守りながら、他人行儀にもそんなことを考えていた。
突然城壁の中央に立っていた男が、何か言葉を発した。
その男の言葉に、大気が震える。
(あのローブの人は魔法使いか何かかな? あの軍団に勝つ秘策でも、あるんだろうか)
ローブ姿の男の手は、平原へ向けられている。
すると、大気中の全ての魔力がそれに呼応するかのように動いた。
それは男の手へ集まり、膨大な量の魔力の塊となって、男の命令を待っているようだった。
(おお、凄い大量の魔力。何する気だろ)
マサトはその男の行動が気になったが、それで何ができる訳でもなかった。
実体のないマサトは、ただ流れに身を任せるしかなかった。
魔力と共に漂い、少しずつその男のもとへ流れていくマサト。
そこに己の意志は挟めない。
男の手へ集まった、膨大な量の魔力の塊は、その男の叫びを合図に、平原へと一気に流れ込んだ。
その魔力は、次々にあらゆる形へと姿を変えていった。
長槍を持ったスケルトン、筋骨隆々のガーゴイル、巨大な蛞蝓、鋭い爪に腹部に大きな口と牙がある異形の種の数々……
(召喚魔法!?)
その光景を見た人間達に、動揺が走った。
それもそのはずだ。
異形の種と決死の戦をしようとしている目の前に、新たな異形の種が現れたのだから。
動揺で済んでいるのは、その異常な光景にその場にいた全員の理解が、ただ追いついていないだけに過ぎない。
動揺が恐怖に変わるのは時間の問題だった。
だが、その男の召喚は止まらない。
ついには、平原の1/3を埋め尽くす程のモンスター達が目の前で具現化された。
(す、凄い…… どうやればあんな大量のモンスターを一度に召喚できるんだ……)
人間達の眼には、一瞬で何十万ものモンスターを召喚してみせた男がどう見えたのだろうか。
その答えは見るより明らかだ。
何せ国一つ容易に潰せる程の軍団を、たった1人の男が召喚してみせたのだ。
たとえそれが味方であろうとも、行き過ぎた力は人の心に畏怖を植え付ける。
そして恐慌状態に陥った兵士をきっかけにして、恐怖は爆発的に伝播していく。
兵士達の隊列が乱れようとしたとき、再び男が何かを叫んだ。
大気中に漂う魔力は、その男の叫びに歓喜し、再び震えた。
何故だかは分からない。
ただ、その男が万物の源である魔力に好かれているということだけは感じ取れた。
(まだ何かする気なのか……?)
大気中の魔力が男の叫びに応じ、突風となって兵士達の間を通り過ぎる。
魔力に触れた兵士達は、皆一度俯き、その後すぐ顔を上げた。
不思議なことに、顔を上げた兵士達の眼からは、怖れや迷いが綺麗に消えている。
そして彼らに異変が起こった。
身体の内側から溢れ出る己への自信と、自らの命を脅かす存在への殺意が同時に湧き上がったのだ。
そして兵士達の眼に、一様に狂気の光が生まれる。
その瞬間、マサトはその男の思考に触れた。
理由は分からない。
もしかしたら、魔法を行使する際の魔力への命令が伝わってきたのかもしれない。
(これは…… 配下全てを同時に強化する黒魔法――狂気の熱気? やっぱりここは、MEの世界? じゃあ、あのローブ姿の人は……)
士気の高まった兵士達が盾を打ち鳴らし、戦への衝動を更に高め合う。
兵士達の眼にあった敗北への不安の色は、既に消え去っていた。
あるのは憎き敵の殲滅のみ。
その様子に、男と対峙していた死神は、怒りを露わにした。
紅い眼をした死神は、闇の軍団へ進軍を命じる。
地からは食屍鬼が、空からは大量のインプ達が大都市を守る城壁へと突き進み、ゴゴゴと大きな音とともに大地を揺らす。
最初の異変は空から起きた。
平原の丁度半分、山と城壁を結ぶラインの中央に差し掛かった当たりの上空で、インプ達が何かに引き裂かれて次々に地上へ落下していったのだ。
無事切り抜けたインプ達も、その後ろに控えていたガーゴイル達に次々に駆逐されていく。
地上では城壁から大量の火矢が放たれ、インプ達諸共、地上にいる食屍鬼達を巻き込んで炎上させる。
だがこれだけでは食屍鬼達の勢いは弱まらなかった。
ローブ姿の男は、それでも動じない。
男が自然な動作で右手を振ると、地上で新たな変化が生まれた。
食屍鬼達が平原の中央に差し掛かったとき、突如地面から数多の骸が隆起し、骸の壁となって闇の軍団を分断したのだ。
山側と城壁側とで大きく分断させられた闇の軍団は、混乱した。
進軍を止められた山側の食屍鬼達は、止まらずに進軍してくる後続と骸の壁に挟まれるように圧死していく。
恐ろしいことに、骸の壁は圧死した食屍鬼達を取り込んで更に巨大化していっている。
そして城壁側へ分断された食屍鬼達は、一糸乱れず隊列を組んで突撃してくるスケルトンの軍団に次々に討ち取られていった。
スケルトンの合間を上手く突破した食屍鬼達も、その後に続く巨大な蛞蝓や異形の怪物の餌食になっていく。
後続の援軍なしで、この統率の取れた鉄壁の守りを崩すには、ただ数が多いだけの食屍鬼達には不可能だった。
(す、凄い…… 戦況を五分にまで戻した…… いや、このまま行けば人間側が勝てる?)
あっという間に何万、何十万もの食屍鬼達が倒されていく。
そして人間側の被害は皆無である。
それだけではない。
男の召喚したモンスター達の被害も、恐ろしく少なかった。
身体を破壊されたスケルトン達も、いつの間にか再生して数を戻している。
その事実に死神は憤怒し、自ら空へ飛び上がった。
死神に対抗するように、黒いローブの男が何かを叫ぶ。
そして再び起こる魔力の放流。
(う、うお!? まだ何かあるの!? この人無茶苦茶だ!)
男の前に召喚されたのは「漆黒のドラゴン」だった。
MEで初めて登場した黒マナで召喚できるドラゴンで、その力はカードバランスを壊すものとして後に禁止カード指定になったカードでもある。
漆黒のドラゴンに飛び乗ったその男は、ドラゴンと共に空へと飛び立ち……
(あれ…… どこかで…… あ、兄貴? 兄貴!!)
急激に薄れていく意識の中で、マサトは必死に兄に向かって叫び続けた。
なんでここにいるんだと。
今、何処にいるんだと。
だが、マサトの叫びは兄に届くことはなかった。
褐色の肌に、形の良い乳房、そして肌よりも黒い色をした突起。
腰はくびれて、腹筋も程よく割れている。
縦に切れ目を入れたような綺麗なヘソ、下腹部に毛はなく、その先端は二つに割れている。
心臓が痛いくらいに高鳴る。
童貞の俺には刺激が強過ぎる光景だ。
まだ現実かVRかの区別もついていないというのに!
俺が黙っていると、痺れを切らしたレイアが声をかけてくる。
「取引をしよう。いや、お前に命を握られているこの状況で取引を持ち出すのも可笑しい話だったな。お前にお願いがある。私からお前に対しての一方的なお願いだ」
「………」
「私の身体をお前に捧げる。だから私の願いを聞いてほしい」
「………」
「……ダークエルフという卑しい身体では嫌か?」
俺が言葉を失っている間、レイアは何を勘違いしたのか、俺の態度を否定的なものだと受け取ったらしい。
少しずつ態度が弱々しくなっていく。
(か、考えろ…… 俺)
あの極上の身体を好きに出来る権利という至高の餌の奥に隠れる釣り針の存在を!!
(うむ…… むむむ…… 無理だっ!!)
よく分からないが、あの獣肉を食べてから、下半身が今にも爆発しそうなくらいギンギンになってしまっているんだ!!
この状況で女性の裸体を前に、冷静になれという方がどうかしてる!!
据え膳食わぬは男の恥!!
もう思考はこれからの行動を正当化しようとする考えで埋め尽くされている。
理性が息をしていない。
そして導き出した答えは、欲望にとても忠実なものだった。
「むしろ大好きです」
この夜、俺は少し大人になった。
◇◇◇
…。
………。
……………。
俺は夢を見ていた。
空を飛ぶ夢だ。
いや、飛んでいるというのも少し違う。
漂っているという方が正しいかも知れない。
そう、夢の中での俺は、空気中を漂う魔力だった。
俺は暗闇に覆われた山々と、地平線まで続いているかのような立派な城壁、そしてその双方に挟まれた平原を遥か上空から見下ろしている。
不思議と恐怖心はない。
これも夢だからだろうか?
だが、意識はある。
不思議な感覚だ。
平原や城壁を、月明かりが照らしている。
しかし、反対側の山は何故か暗闇に覆われたままだった。
(なぜあそこだけ月明かりが届いてないんだ……? ……ん? ……何か動いてる?)
理由はすぐに分かった。
暗闇に見えたのは、山を埋め尽くすようにひしめき合う黒い魔物のせいだったのだ。
その数、数十万から数百万にも見える。
地には食屍鬼やゾンビ等のアンデッド系モンスターが、空にはインプが、一面を漆黒に染めるほど大量に蠢いている。
そして、その軍団の中央には、赤い眼をした死神が、城壁の中央に立つ黒いローブ姿の男を見据えて微笑んでいた。
対する城壁側には、全身を鋼鉄の鎧と盾に身を包んだ兵士が1〜2万程。
城壁を背に整列している。
城壁の上には弓兵が大勢待機しているが、とてもじゃないが多勢に無勢な様子だ。
(なんか、映画のワンシーンみたいな場面だな…… 闇の軍団に立ち向かう人間達、みたいな……)
マサトはその光景を見守りながら、他人行儀にもそんなことを考えていた。
突然城壁の中央に立っていた男が、何か言葉を発した。
その男の言葉に、大気が震える。
(あのローブの人は魔法使いか何かかな? あの軍団に勝つ秘策でも、あるんだろうか)
ローブ姿の男の手は、平原へ向けられている。
すると、大気中の全ての魔力がそれに呼応するかのように動いた。
それは男の手へ集まり、膨大な量の魔力の塊となって、男の命令を待っているようだった。
(おお、凄い大量の魔力。何する気だろ)
マサトはその男の行動が気になったが、それで何ができる訳でもなかった。
実体のないマサトは、ただ流れに身を任せるしかなかった。
魔力と共に漂い、少しずつその男のもとへ流れていくマサト。
そこに己の意志は挟めない。
男の手へ集まった、膨大な量の魔力の塊は、その男の叫びを合図に、平原へと一気に流れ込んだ。
その魔力は、次々にあらゆる形へと姿を変えていった。
長槍を持ったスケルトン、筋骨隆々のガーゴイル、巨大な蛞蝓、鋭い爪に腹部に大きな口と牙がある異形の種の数々……
(召喚魔法!?)
その光景を見た人間達に、動揺が走った。
それもそのはずだ。
異形の種と決死の戦をしようとしている目の前に、新たな異形の種が現れたのだから。
動揺で済んでいるのは、その異常な光景にその場にいた全員の理解が、ただ追いついていないだけに過ぎない。
動揺が恐怖に変わるのは時間の問題だった。
だが、その男の召喚は止まらない。
ついには、平原の1/3を埋め尽くす程のモンスター達が目の前で具現化された。
(す、凄い…… どうやればあんな大量のモンスターを一度に召喚できるんだ……)
人間達の眼には、一瞬で何十万ものモンスターを召喚してみせた男がどう見えたのだろうか。
その答えは見るより明らかだ。
何せ国一つ容易に潰せる程の軍団を、たった1人の男が召喚してみせたのだ。
たとえそれが味方であろうとも、行き過ぎた力は人の心に畏怖を植え付ける。
そして恐慌状態に陥った兵士をきっかけにして、恐怖は爆発的に伝播していく。
兵士達の隊列が乱れようとしたとき、再び男が何かを叫んだ。
大気中に漂う魔力は、その男の叫びに歓喜し、再び震えた。
何故だかは分からない。
ただ、その男が万物の源である魔力に好かれているということだけは感じ取れた。
(まだ何かする気なのか……?)
大気中の魔力が男の叫びに応じ、突風となって兵士達の間を通り過ぎる。
魔力に触れた兵士達は、皆一度俯き、その後すぐ顔を上げた。
不思議なことに、顔を上げた兵士達の眼からは、怖れや迷いが綺麗に消えている。
そして彼らに異変が起こった。
身体の内側から溢れ出る己への自信と、自らの命を脅かす存在への殺意が同時に湧き上がったのだ。
そして兵士達の眼に、一様に狂気の光が生まれる。
その瞬間、マサトはその男の思考に触れた。
理由は分からない。
もしかしたら、魔法を行使する際の魔力への命令が伝わってきたのかもしれない。
(これは…… 配下全てを同時に強化する黒魔法――狂気の熱気? やっぱりここは、MEの世界? じゃあ、あのローブ姿の人は……)
士気の高まった兵士達が盾を打ち鳴らし、戦への衝動を更に高め合う。
兵士達の眼にあった敗北への不安の色は、既に消え去っていた。
あるのは憎き敵の殲滅のみ。
その様子に、男と対峙していた死神は、怒りを露わにした。
紅い眼をした死神は、闇の軍団へ進軍を命じる。
地からは食屍鬼が、空からは大量のインプ達が大都市を守る城壁へと突き進み、ゴゴゴと大きな音とともに大地を揺らす。
最初の異変は空から起きた。
平原の丁度半分、山と城壁を結ぶラインの中央に差し掛かった当たりの上空で、インプ達が何かに引き裂かれて次々に地上へ落下していったのだ。
無事切り抜けたインプ達も、その後ろに控えていたガーゴイル達に次々に駆逐されていく。
地上では城壁から大量の火矢が放たれ、インプ達諸共、地上にいる食屍鬼達を巻き込んで炎上させる。
だがこれだけでは食屍鬼達の勢いは弱まらなかった。
ローブ姿の男は、それでも動じない。
男が自然な動作で右手を振ると、地上で新たな変化が生まれた。
食屍鬼達が平原の中央に差し掛かったとき、突如地面から数多の骸が隆起し、骸の壁となって闇の軍団を分断したのだ。
山側と城壁側とで大きく分断させられた闇の軍団は、混乱した。
進軍を止められた山側の食屍鬼達は、止まらずに進軍してくる後続と骸の壁に挟まれるように圧死していく。
恐ろしいことに、骸の壁は圧死した食屍鬼達を取り込んで更に巨大化していっている。
そして城壁側へ分断された食屍鬼達は、一糸乱れず隊列を組んで突撃してくるスケルトンの軍団に次々に討ち取られていった。
スケルトンの合間を上手く突破した食屍鬼達も、その後に続く巨大な蛞蝓や異形の怪物の餌食になっていく。
後続の援軍なしで、この統率の取れた鉄壁の守りを崩すには、ただ数が多いだけの食屍鬼達には不可能だった。
(す、凄い…… 戦況を五分にまで戻した…… いや、このまま行けば人間側が勝てる?)
あっという間に何万、何十万もの食屍鬼達が倒されていく。
そして人間側の被害は皆無である。
それだけではない。
男の召喚したモンスター達の被害も、恐ろしく少なかった。
身体を破壊されたスケルトン達も、いつの間にか再生して数を戻している。
その事実に死神は憤怒し、自ら空へ飛び上がった。
死神に対抗するように、黒いローブの男が何かを叫ぶ。
そして再び起こる魔力の放流。
(う、うお!? まだ何かあるの!? この人無茶苦茶だ!)
男の前に召喚されたのは「漆黒のドラゴン」だった。
MEで初めて登場した黒マナで召喚できるドラゴンで、その力はカードバランスを壊すものとして後に禁止カード指定になったカードでもある。
漆黒のドラゴンに飛び乗ったその男は、ドラゴンと共に空へと飛び立ち……
(あれ…… どこかで…… あ、兄貴? 兄貴!!)
急激に薄れていく意識の中で、マサトは必死に兄に向かって叫び続けた。
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