崩壊の兆しある世界にて(自主的に更新停止中)

辛味噌

これは天災に違いない

 翌朝、南門で依頼主一行と合流した。
 10頭曳超大型荷馬車の荷台に魔導騎士マギ・ナイトが仰向けに寝かせられている。徒弟だろうか何人かの若いのが幌をかぶせたり馬の世話をしたりと忙しく動き回っている。
 馬の負荷を減らすために昨夜用意した魔化エンチャントメント済の石ころを5つ取り出し地面に落とす。
「我は綴る。第4階梯。与の位。石像、従属、従命、待機。綴る。第13階梯。魔の位。永続、変異、発動。」
 真語魔法の呪文が完成すると5つの石ころは、5体のドワーフほどの大きさの石像となった。効果時間が1刻の石の従者ストーン・サーバント永続化パーマネンスで効果時間を無制限に変更してみた。石の従者ストーン・サーバントは疲れ知らずで怪力であることから荷物運びに最適である。何をやらせるかと言えば馬車を後ろから押させるだけだ。どのみち石の従者ストーン・サーバントのような簡易魔像パペットゴーレムに複雑な仕事はさせられない。
 他の荷物だが飼料を積んだ荷馬車と食材やら野営装備を積んだ荷馬車が付随する。そしてどさくさに紛れてロナルド会頭の馬車が随伴する。結構大所帯だな。いや、そうじゃなくて追加報酬案件だよな。あとで話し合おう。

 エルナの件は別件を頼んであると言ってある。早ければ2つ目の宿場街あたりで追いつくだろうとも。
 さて出発だ。



 判りきっていたが初日は何もなかった。25サーグkmほど移動し野営地を決め現在は交代で見張りの最中である。予想はしていたけどマリアとミズホは疲れ切っていて見張り要員から今回は除外した。明日は25サーグkmほど歩いてもらわねばならない。普段碌に歩かない生活をしていた2人にはきついだろうが頑張ってもらうしかない。ただ明日は日没までに宿場街に入れればいいのでペース自体は落とせる。3日目は荷馬の完全休養日に充てるので、その間に二人にもしっかり休んでもらおう。


 2日目だが。うん。問題なく到着してしまった。ま、俺が襲撃者でもこの辺りでは襲わないしな。
 此処で二手に分かれることになる。相棒は年少組み2人と宿屋で宿泊。モノフェーズ男爵の警護も兼ねる。宿場街では積荷の防犯は持ち主が行う事になっているので、今回は持ち主に代わり俺らが担当するわけだが、アリアがご不満である。見張りは前半をガーランド、アルト、ニナで担当してもらう。
 1刻午前2時頃に起きだして前半組みと見張りを代わる。
 アリアが暇なのか延々と愚痴を聞かされる羽目になる。しかもどこかで調達してきたのかワインを飲んでたらしい。絡み酒も困るが一応警戒態勢なんだが。後でお仕置きだな。

 3日目も4日目も何もなく終了。襲撃があるとすれば明日が一番確率が高い。街道法という街道作成の際の決まりごとがあるのだが、街道から両脇500サート以内に建築物の建造を禁ズと言うのがある。ところがこの先にいつの間にか作られたのか村があり、街道法によって立ち退きはされたものの半壊した建物が残り隠れるところには不足しない。更に困ったことに冒険者ギルドの依頼で街道警備と言う業務があるのだが、その中には街道周辺の雑草などの除去作業も含まれているが、この辺りはギルドからも遠く手を抜かれがちだ。
 特に5日目夜は襲撃にはお薦めだ。今回に限れば雨が降りそうだし接近するにはうってつけである。野営地全体に銀鎖柵シエル・ダーカを張って外敵を防ぎつつ、天候制御コントロール・ウェザーで周囲の天候を晴れに変えておこう。

 そして問題の5日目。休憩も兼ねた昼食も終わり、いざ出発となった時にたまたま空を見たら嫌なモノを見てしまった。
「おい。南西方向からこっちへロック鳥が飛来してくるぞ。全員止まれ。様子を見る。」
 翼長30サートを誇るロック鳥にとって荷馬なんて完全に餌である。
地形幻覚ハリューシネイトリーテレインをかけてやり過ごすか?」
 アルトの提案を聞きそれでいいかと思った時だった。何か違和感を感じた。
「おい。あれ足にぶら下げてるの幼竜インファント・ドラゴンか?」
「いえ、若竜レッサー・ドラゴンですね。」
 相棒が答える。そして俺が何を気にしてるのか気が付いたようだ。
「遠距離で判りにくいが若竜レッサー・ドラゴンだ。龍人族ドラグナーの俺が竜の種別を間違えるはずがない。」
 アルトもそう答える。そして3人で頭を抱えて叫ぶ。
「「「超巨大鵬ガルガンチュア・ロック鳥かよ!」」」
 見事にハモった。
「なにそれ?ロック鳥の親戚か何かなの?」
 事態の深刻さを全く理解していないアリアが能天気に会話に割り込んできた。見回すとガーランドは何時ものように泰然自若である。内心は別として。年少組のマリアとミズホは俺ら3人の雰囲気で事態を察し不安がっている。年少者を不安がらせてはいけないな。ニナは自体が呑み込めていない。

 人生で出会ってはいけない天災とか災厄とか呼ばれる3大魔物と言うのが存在する。

 見た目は前肢が4本ある体高10サートほどの巨大な蟷螂のような外見の螺王蟲スレディッド・パロット。強靭で大きさのわりにかなり素早く動き、飛行もする。とにかく動くものはなんでも襲い、雑食だが哺乳類の肉を好む傾向にある。人間などの味を覚えたこいつによって滅んだ都市国家などもある。

 翼長200サートを誇る超巨大鵬ガルガンチュア・ロック鳥。巨大すぎてなんだかわからないうちに死んでいるであろう。ある意味こいつが一番質が悪い。

 龍種の中でも限りなく長く生きた老古龍エルダードレイク。体長100サート超巨大鵬ガルガンチュア・ロック鳥には一歩譲が、灼熱の息は魔導騎士マギ・ナイトの小隊を瞬時に蒸発させる。高い知性と強靭さ、強力な再生力、物理的破壊力に加えて真語魔法の秘儀も使う。そして魔法に対する耐性も高い。

 対策取るか。
「全員上空監視を厳に!落下物を見たら即報告。」
 全員が上を見上げる。今は餌を抱えているから襲われる確率はほぼないだが問題は___。
「何か落ちたぞ!」
 アルトが真っ先に見つけた。
 落下物は地平線の向こうか。超巨大鵬ガルガンチュア・ロック鳥は大きすぎて距離感狂うな。
 状況の分かってない者は拍子抜けしているが普通はそうだろうな。でももうすぐわかるさ。

 再出発し1刻半ほど過ぎたころ惨劇が見えてきた。幸いこちらは風上だった。廃村が見えてきたが、茶色い物体がそれを覆い隠している。
「師匠___。まさかあれって___。」
 アリアも事態を理解したらしい。超巨大鵬ガルガンチュア・ロック鳥のフン爆撃である。襲われるよりこいつの方が恐ろしい。巨体に見合った分量が爆撃されるのである。気が付かずにフン死とか死んでも死にきれない。
 臭いの問題もあるから先には進みたくないがそうも言っていられないので、年小組の周囲だけ風の精霊シルフを周回させて臭いを届かないようにしておく。更に近づくと予想していたものが見えた。魔導従士マギ・スレイヴ3騎が茶色い物体から覗いてる。多分茶色い物体の下には傭兵とか冒険者が居たんだろうな。考えたくない。

「多分襲撃はもうないでしょうね。こちらの予想外の方法で退場されましたが___。」
 相棒が笑いを堪えている。問題は野営地だ。風向きは変わりそうなので臭いを考えればもう少し先に進んでから野営したいが
「臭いの問題もありますし少し無理しても先に行きましょう。食事は携帯食で済ませれば問題ないでしょう。」
 雇い主であるモノフェーズ男爵に事情を説明し納得してもらい茶色い物体から1刻ほど離れた場所で野営となった。

 あんな死に方だけはしたくないな。




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