崩壊の兆しある世界にて(自主的に更新停止中)

辛味噌

最初の仕事は

「どうもヴァルザス殿。お待たせして申し訳ない。」
 会頭自らお出迎えだった。そのままソファーに座るように勧められる。
「いや。こちらこそ一介の冒険者がアポもなしに突然の来訪失礼した。」
ロナルド会頭は首を振り
「ヴァルザス殿が来たら、最優先でと部下には告知していた筈なのですけどね。私が名誉貴族になったことで何やら勘違いを起こしている部下がいる様で。」
「彼らからすれば名誉貴族にして当代で大陸に名を轟かせたマネイナ商会の会頭と一介の冒険者と言う関係でしかない。詫びは不要で。」
「そうですか。私個人としてはヴァルザス殿に敬意を持ってますし、公的な立場は置いておいて出来ればこれからは公私で懇意して貰いたいものですね。_____では時間も惜しいですし仕事の話に入りましょうか。」

「掲示板では超大型馬車一輌の警護となっていたが中身はアレかな?」
「流石に解りますか。中古の魔導騎士マギ・ナイトです。外装は新品ですし、分解整備オーバーホールも済んでます。余程の者でないとあれを中古品とは思わないでしょう。」
 少し考えて
「だが、普通は魔導騎士輸送機マギ・ナイト・キャリアで運ぶ筈だが?」
「それが可能なほど資金のあるお方ではないのですよ。」
「中古を買うくらいだからかなりの貧乏貴族になるのか?」
「5年前に大きな武勲を立てて騎士爵ナイトから男爵バロンへと陞爵しょうしゃくなさったモノフェーズ卿なのですが、下賜された土地が南西方面の海岸沿いの小さな荘園だったのです。」

あれ?待てよ___。
騎士爵ナイトなら魔導従士マギ・スレイヴはどうしたんだ?別に爵位持ちだからと言って魔導騎士マギ・ナイトを所有しなければいけないとか法律はなかった気が____。見栄か?」
 ロナルド会頭はため息をつき
「それならまだ良かったんでしょうけどね。実は半年前にモノフェーズ卿の領地に一体だけですが気功熊プラナ・ベアが現れ、討伐の際に大破したそうです。今回闘技大会に出場する為に急遽用立てしました。カイラース陛下自らが武勇が見たいと仰ったそうで、断るわけにもいかなかったようです。」

 東方西南部域に生息してるはずの気功熊プラナ・ベアに襲撃されたとか____。変だな?
 一流の冒険者でもアレとの戦闘は避けるくらいに強敵だ。体長5mほどと四手熊ほど大きくはないが、熊の分際で気功闘術プラナ・アーツを使うから厄介だ。
「男爵領の位置から考えると南の交易路を横断してるのか。街道警備の依頼を受けた冒険者共は昼寝でもしてたのか?」

「冒険者ギルドの調査委員会でも仕事を請け負った20組の冒険者に非はなかったと発表されていますね。ま、かなり疑わしいのですけどね。」
 貴族の怨恨絡みかね?それとも新参者いびりかな?仕事を受けると巻き込まれる危険もあるのか。
 こちらの考えを読んだのか
「どうします?お辞めになっても違約金は発生しませんがどうします?」
 いざとなれば力技で強引に切り抜けるまでだし、王都観光のついでに旅慣れない娘さんたちを教育しないといけないから受けておくか。
「こちらにも都合があるし受けておくよ。王都で建国祭と聞いたからついでの様なモノかな。経験の浅い面子もいるんで教育も兼ねてだが。」
「最初に楽することを覚えてしまうとイザって時に使えませんしね。」
「王都までの距離は200サーグkmくらいか?超大型馬車は何頭立てなんだ?」
「機体重量が8グロー程ありますので大型の東方産の荷役馬10頭で曳きます。替え馬はありません。ただし飼料を積む荷馬車が同行します。」
 無難な数だが、途中で替え馬が居ないと完全休息日2回は必要だろうし、そうなると単純計算で9日くらいか?道中に宿場町が2つあるからそこを完全休息日の場所にして動くしかないか。
「建国祭の前日にまでは居れればいいのか?」
「そうですね。無理しなければ9日くらいでしょうか?正直ギリギリです。」
 ん___。一日30サーグkm弱か。健脚は冒険者にとって必須技能みたいなものだが、徒歩による移動は旅慣れてないと、この移動距離はかなりきついな。馬を用意するか?筋肉痛とか体力は癒しの魔法でも快復効率悪いんだよな。ま、何人かにはヒィヒィ言って貰おう。
「トラブルがなければそんな感じだろうか。問題は襲撃があった場合で、相手が魔導従士マギ・スレイヴやら魔導騎士マギ・ナイトを出してきた場合だな。」

「その可能性はありますね。他の方が受けたのなら諦めたでしょうね。でもヴァルザス殿ならなんとかできるのでしょ?」
 少し思案する。相棒ならどうするかな?最悪の場合は転移門ゲート開いて終わりだが、まだ王都行った事ないからそれが面倒だ。
「対処は可能だが、その場合は襲撃者の装備はこちらが頂いても構わないのかな?」
「正当な権利ですね。構いません。ただ実行者の方はこちらに預けていただければ現金で追加報酬を出します。」
 ならいいか。後はこっちの魔導騎士マギ・ナイトを出すかどうかだな。襲撃者の数を見て決めるか。う~ん。相変わらず臨機応変いきあたりばったりな方針だ。
「あとは道中の食事と宿ですかね?」
「街道沿いを移動しますので途中で宿場町が2箇所あります。食事と宿泊費用は報酬に込みという事でお願いします。」
 意外とこの依頼は面倒だぞ。確かに報酬は破格だが、何か裏がありそうだな。明日には出発しないと間に合わないから相棒と対策を考えよう。

 ロナルド会頭との話はその後半刻ほど続きいくつか貴重な情報も手に入れた。さてお嬢さん方を迎えに行きますか。


 運が良かったのか悪かったのかお嬢さん方の下着類の買い物はちょうど終わって会計も済んだところだった。物欲は満たされたようで大変満足そうである。これから地獄が待っているとも知らずにな。クククク____。

 荷物はすべて時空収納インベントリに収め夕飯を済ませて館に戻る。離れに戻って一息ついている皆に向かって仕事説明を始める。
 予想通りというかエルナとアリアは嫌そうな顔をしている。装備身に着けて一日30サーグkm弱を何日も歩くのは流石に魔法や魔導機器に慣れてる君らには怠いだろうね。
 マリアとミズホは想像できていないようだ。身体も出来上がてないし多分初日でダウンかな?
 ニナは平然としてる。ここに来るまである程度鍛えていたようだし彼女は大丈夫だろう。
 残りの面々には何も不安はないな。日程を説明し王都到着後は建国祭を満喫してから帰還。
 男性陣には特に問題は感じてないので解散して女性陣のみ残ってもらう。

「師匠!質問が!」
アリアが挙手する。別に挙手しなくてもいいんだが___。続けるように促す。
「口にしにくいなぁ。師匠耳貸して。」
 そう言ってアリアは俺の側までトコトコ歩み寄ってきたので少し腰を屈めてやる。小声で
「一応ボクも年頃の女の子なんだよ。え~と___。その~__。お花摘みとかどうするの?」
 こちらも小声で
「別に王都までずっととは言わないよ。ただ冒険者としては避けられない事だから改めて心構えをだね___。」
一度区切って他の女性陣にも聞こえるように普通に話す。
「昔、恥ずかしいからと我慢に我慢した挙句に戦闘が始まり、危うく尊厳を失う処だったお嬢さんが居たし、実体験と心構え位しておかないとね。」
「師匠!その話はもう忘れてって言ったじゃん!」
 顔を真っ赤にして怒った。他のお嬢さんも気が付いたらしい。ニナは以前の職業柄か、何を今更って感じの態度である。これはこれで悲しい。
「尊厳は守られたんだし良いだろ。」
「よくないよ!」
 アリアを無視して一度女性陣を見渡し
「察して貰った通りだが、別にこれからずっとという話ではない。最初の2日は実体験も含めて今後こういう事態もあるという事をきっちり覚えて貰いたい。3日目は馬を休めるために宿場街で完全休養するしそれ以後はきちんと対策は取る。」
 時空収納インベントリから髪留めヘアピンを取り出す。
「3日目からは希望者には、この中級品ノーマル偶像の髪留めヘアピン・オブ・アイドルズを貸し出す。」

 ミズホが挙手する。
「それはどういう効果の物なのですか?」
「女性冒険者と言うか旅をする女性にとって垂涎の魔法の物品アーティファクトだね。効果は限定的な生理現象の見た目上の停止だよ。」




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