崩壊の兆しある世界にて(自主的に更新停止中)

辛味噌

聖都から脱出

「無事でなりよりだ。」
少女は高価な部屋着を無残に引き裂かれていた。小ぶりな胸が覗いてるが状況が飲み込めないのか晒しっぱなしだ。
ベッドに近づきつつ潜入時は邪魔だったので仕舞ってあった外套マント時空収納インベントリから取り出し掛けてやる。
途端に少女は泣き出し俺にしがみついてきた。
抱きとめてやり頭をなでくりまわしてると暫くして落ち着いたのか
「何方か存じませんが助けて頂きありがとうございました。あの・・・。隣の部屋に私の警護をしてくれた人がいるのですが、無事でしょうか?」
ハンカチを取り出し少女の涙の後を拭いつつ
「大丈夫。アレは見た目より頑丈だから気絶してただけだ。」
記憶はやはり戻ってないか。
ショックな出来事とかあると突然戻ったりするんだがな。俺自身がそうだったし。
「アリアの意思を確認するが、連れ帰る予定だ。君はどうする?此処から出たいなら攫っていこうか?」

「そんなことが許されると思うのか!私にこんなことをして誰かは知らないが生きていけると思うなよ!」

なんか尻から長杖クォータースタッフを生やしている物体が何か喚いている。

少女はキッとその物体を睨んだあと、俺に視線を戻し
「連れて行ってください。此処には居たくありません!」

「なぜだ!」
尻から長杖クォータースタッフを生やしている物体が何か言っているが俺には何を言っているのかさっぱりだな。
こいつは自分なら何をしても許されると思ってるのか?
あ~光輝教総本山のボスだしな。自分がルールってか?
しかし他人には法と秩序を強要し自分は何をしてもいいとかやれやれ・・・。


隣の部屋にいたエルナが駆け込んでくる。
「ヴァルザス大変です。聖騎士パラディンが押し寄せてきました。いまアリアが扉の前に陣取って防衛してます。」
尻から長杖クォータースタッフを生やしている物体を汚物を見るような目で見つつ
「ところで、その喚いてるのどうするんです?」
ここに置いていくのは面白くない。そうだ!
立ち上がり尻から長杖クォータースタッフを生やしている物体に近づこうとしたが少女が俺の服を握ったまま放してくれなかったので予定を変更
「我は綴る。第13階梯。転の意、瞬間、方陣、移動、空間、強化、縮小、場、発動」
右手の人差し指で空中に真語を綴り詠唱を行う。
尻から長杖クォータースタッフを生やしている物体が転がる床を中心に銀色の円が現れる。転移門ゲートが発動した。行き先は自宅ではない。
そしてズブズブと円に飲み込まれていく尻から長杖クォータースタッフを生やしている物体
何か喚いているが聞こえない聞こえない。

必死に抵抗して飲み込まれまいとしているがそれでもズブズブと半分くらい沈んでる。そんな物体を眺めつつ少女をお姫様抱っこして
「彼女は貰っていくぞ。」

「貴様の顔忘れはしないぞぉぉぉぉ!!」
飲み込まれていった。
すぐに転移門ゲートを強制解除する。銀色の円は消えた。

「君の身の振り方は落ち着いてからゆっくり考るとして、とにかく此処を出よう。」
部屋を出る。アリアが扉の前で奮戦してる。
幅の狭さを生かし大楯タワーシールドで塞ぎつつ頑張っているが数による圧力を支えるにはやはり厳しいようだ。
取り合えず両手が塞がっているから援護するにも選択肢が少ないな。よし。
勇気の精霊バルキリーお前の投槍ジャベリンを放て!」
1メートル程の光り輝く投槍ジャベリンが出現し飛んでいき、聖騎士パラディンに突き刺さり光が弾ける。精霊魔法の戦乙女の投槍バルキリージャベリンだ。
聖騎士パラディンは次々と戦乙女の投槍バルキリージャベリンで串刺しにされ倒れていく。5分ほどそんなやり取りが続き、流石に俺でも精神的疲弊で倦怠感がすごい。
「皆死んだのですか?」
少女が尋ねてきた。
「手加減してるから応急手当すれば助かる。だがそれはここの者たちにやってもらおう。」
倒れてる聖騎士パラディンを踏みつつ移動し昇降機を利用して降りることにする。
「師匠。降りたら確実に兵隊に包囲されていると思うんだけど、強行突破でいいんだよね?」
流石に厳しいか。
「そんな面倒はしない。昇降機があるんだし有効活用しないとな。魔法使うからちょっと彼女を頼む。」
御姫様抱っこしていた少女をアリアに預ける。
「階段を見張っていてくれ。」
さてもうひと頑張りするか。
時空収納インベントリから拳大の意思を取り出し、昇降機に放り込む。
「我は綴る。第4階梯。付の位。従僕、石像、発動」
拳大の石が全長1.5メートルほどの人型に変じる。真語魔法の石の従者ストーン・サーバントである。
続いて時空収納インベントリから長さ15センチほどの金属製の筒を取りだし石の従者ストーン・サーバントに持たせ単純な命令をし、昇降機を降ろす。
一分後に炸裂音が響いた。問題なかったな。



真語魔法の飛行フライトで昇降機ホールに下り立つ。
昇降機ホールには呻いている兵士がかなりいる。石の従者ストーン・サーバントに持たせていた金属筒は上級の魔法の物品アーティファクトで暴徒鎮圧用の閃光発音筒フラッシュグレネードだ。
あれ一個で10万ガルドとかえらい出費である。
昇降機ホールから正面玄関へ向かていると後ろからは待機中の兵士だろうか?ざっと見て1個中隊ほどがこちらに向かってきている。
正面玄関にはいくつか死体が転がり赤毛に側頭部に3本ずつ角を生やした龍人族ドラグナーが豪奢な装飾の漆黒の大剣グレートソードを床に突き立てて待ち受けている。

折角隷属の呪縛を解いてやったのに好き好んで犬に戻ったのかと思っていたが
「行け。借りは返す。」
一般兵やら騎士程度で困りはしないが、魔法の使いすぎで結構体力気力も減ってて倦怠感もあるし、そこへ数の暴力で襲われるのは面倒だと思ってたから、ここは厚意に甘えておくか。

元魔王さんの横を通過する。
アリアもエルナも警戒していたが、問題なく通過。
振り返ってみると床に突き刺してた漆黒の大剣グレートソードを一振りそして追手の兵士の首を飛ばす。
「ここから先は通行止めだ。他を当たれ。」
あ、それ俺も一度やってみたかったんだよな。羨ましい。城門を抜け中央広場まで移動した。
ぷち祭りだったし人だかりが凄い。
だが原因はそれだけじゃないんだな。
中央に尻から長杖クォータースタッフを生やしている神聖皇帝が転がってて、それを信者が眺めている。
切断した四肢とアレは直ぐには再生しないし信者共もどう反応していいか迷ってるな。
憐れな神聖皇帝の側まで移動する。
「我は綴る。第13階梯。転の意、瞬間、方陣、移動、空間、強化、縮小、場、発動」
右手の人差し指で空中に真語を綴り詠唱を行う。銀色の円が路面に現れる。
「先に行け。」
「師匠。「ここから先は通行止めだ。他を当たれ。」ごっこはどうかと・・・・。」
アリアが呆れているがそうじゃないんだ。
「術者の俺が入ったら効果切れるけど、置いて行かれたいならそれでもいいぞ。」
「いえいえ。ではお先に。」
少女をお姫様抱っこしたまま転移門ゲートを潜った。
「ほどほどに~」
エルナも飛び込んだ。

転がって転移門ゲートに入ろうとする神聖皇帝の尻から生えてる長杖クォータースタッフをグリグリと弄り回して時間を潰す。なんか変な声上げてるな。もしかして新しい性癖に目覚めたのか?

2分ほど弄んでいると元魔王様が走ってきた。
あの巨塔エリアの環境では数の暴力を潰すのはかなりきついし途中でにげ・・・戦略的撤退を図ると思っていたよ。
目が合う。
「さっさと潜れ。」
逆探知を気にしてか足止めする気か。
「中継点に繋がってるだけだから問題ない。身の振り方を決めるまで世話してやるから俺と来い。」
少し逡巡したあと銀色の円に飛び込んだ。

それを見届けた後、時空収納インベントリから内部が虹色に輝く手のひらサイズの水晶柱を取り出し略式でひとつの真語魔法を完成させる。完成と同時に水晶柱は砕け散り俺を中心に均等に6個の火球ファイアボールが出現する。
それを飛ばさずに待機させ転移門ゲートに潜る。
勇敢なのか無謀なのか一人の騎士らしい者が走ってくる。
転移門ゲートが閉じる前に飛び込んで来る気だな。
でも残念。待機中の火球ファイアボール火球ファイアボールでも、第6階梯の火球ファイアボールじゃない。
第10階梯の遅延炸裂火球ディレイド・ブラスト・ファイアボールの方だ。
走ってくる速度的にも間に合わないだろう。
転移門ゲートを潜り終わった直後に予定通り遅延炸裂火球ディレイド・ブラスト・ファイアボールは発動し爆発音と悲鳴が聞こえた。
スッキリした。






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