崩壊の兆しある世界にて(自主的に更新停止中)

辛味噌

謝罪と賠償を要求するだと?

真語魔法の翻訳コミュニケートを唱える。
聞こえてくる声は俺の脳内で自分の理解できる言語に変換されるし、こちらの声は相手にとって日常的に使っている言語に変換される。ただし会話する気がない相手には通じない可能性もあるがそこは知らん。

「そのままの状態で聞いてほしい。俺の名はヴァルザスと言う。残念ながらこの世界とは違う世界から半日ほど前に拉致られて者だ。君たちも違う世界からいきなり拉致された挙句に戦闘に巻き込まれて大変だったと思う。応急処置と軽傷治療程度しか出来ないが、個々にいくつか質問するので答えてもらえると助かる。」

負傷者の応急処置と真語魔法の軽癒ライトヒールで軽傷の処置などをしつつ一人一人に話を聞き込む。

真語魔法の軽癒ライトヒールでは重傷者や致命傷を癒すことはできない。
村に到着した15名は辛うじて軽傷の範疇だった。
重傷者などは森や森から村までの間に点々と転がっている。
17名は傷が深く骨折やら手足が欠損したりしている。
軽癒ライトヒールで傷だけでも塞ぐ。
後は自然治癒に任せるか街で強欲な神官にお布施払って癒してもらうか?

普段粗が都に縁がない者たちのようで突然の惨事に大半の者が混乱をきたして話にもならなかったので、軽癒ライトヒールで傷をいやしつつ、平常心オーディナリーマインドも併せてかけて冷静にさせる。
最もメンタルの弱い奴はフラッシュバックするが後の事は知らん。

致命傷を負って生死の境を彷徨っているのが6名と回収できた死体の数は25体。
ただ荒事に向かなさそう者たちだと思ったが、それでも小鬼ゴブリンを10体仕留めている。
ま。世の中例外もあるよな。

森の奥へと逃亡した者たちもいるとの事だが、日も落ち辺りは俺と相棒の唱えた真語魔法の光源ライトが照らす灯りのみである。
森の探索は諦めた。たぶん今頃小鬼ゴブリンの餌食だろうな。


相棒がこっちに様子を見に来た。
ただし後ろに殺気めいた農民が多数同伴している。
相棒が近づき耳打ちをする。
「ヴァルザス。ここの村人たちですが・・・・。」
異邦人たちに視線をやりつつ、フェリウスが言うには、異邦人らがこの村に小鬼ゴブリンを引き込みこの惨状を招いた。幸いにして我々が救助したからこそ被害は多くなかったが、本来であれば全滅レベルの規模の襲撃だった。謝罪と賠償を要求したいとの事と言う。

「奴らは阿呆なのか?どっちも被害者なんだけどなぁ・・・・。異邦人に現地通貨はないし口頭で謝罪しても納得いかないんだろう?」
「金目のモノで我慢してやるとの事です。出なければ奴隷として売り飛ばして謝罪の代わりにすると息巻いてます。」
「それ以前に対策すらしてなかったと思うのだが、自業自得だし寧ろこの程度の被害で済んで感謝されても良かろうに。」
「なら異邦人に賠償させる代わりに、我々が討伐費用を受け取りましょう。」
相棒が意地の悪い笑みを浮かべる。
「いや、面倒だし立替てやってさっさとここを出よう。で、いくら寄越せって?」
「「我々にも生活がありますから全額寄越せとは言ってきませんでしたが、どういう計算したのかわかりませんが最低でも5万ガルドは寄越すのが謝罪としては当然とのことです。」

「死亡者も重傷者もいないのにその金額は強欲すぎるな。」
「同意ですが、交渉するのも馬鹿らしいです。」
「ま、強欲のツケはいずれ受けるだろうし面倒な事はさっさと済ませよう。」

「ところで俺とお前とガーランドの分の宝石をかき集めてどれくらいになりそうだ?」

「そうですね・・・・・・。通貨補助用の宝石ですからあまり高額な査定にはならないでしょうし、せいぜい7万ガルドが良いところでしょう。」
「ふむ。なら6万払ってさっさとここから去ろう。」
徴収して相棒は村長のもとに向かう。

しかし冒険者に今回の規模の退治を依頼すれば軽く見積もっても1万ガルド。しかも損害による違約金なしが常識なんだが強欲すぎだなぁ。

ホクホク顔で村人たちはそれぞれの作業に戻っていく。
相棒が戻ってきて
「もっと出せるんだろう?って態度でしたよ。」
「ま、強欲の報いは受けるだろうさ。フェリウスはあの小鬼ゴブリンの集団を見て何か感じたか?」
相棒は少し考え込んで
「あの数で二手に分かれての進軍でしたのに指揮官が不在でした。用心棒ホブゴブリンさえ居ませんでしたし再襲撃の可能性は十分ありますね。ただ今夜という事はないでしょう。ところでまさか強欲の報いって・・・・。」
「俺らは何も知らん。ただ去るのみだ。今夜は移動は難しいし安全な場所に引篭もろう。」
時空倉庫ストレージから巨大な構造物を引っ張り出す。

「へ~こういうメカ物もある世界なのか~。車輪がないようですが、空中に浮かんで疾走する系のモノかな?」
タカヤが興味深そうに眺めている。
「良く判ったな。」

「我々の世界じゃ玉石混在な物語が腐るほどあって、そういうモノの中に似たようなものがあっただけですよ。」
観察しつつ
「ん~。全長30メートルくらいですか?セミトレーラー型のキャンピングカーにしては大きすぎるか…。前が居住区兼運転設備で後ろがコンテナかな?幅も結構ありますね。コンテナは何が入ってるんだろう。気になるなぁ。」

タカヤの奴が眼をキラキラさせてやがる。そんなに興味があるか。
「見せてはやれないが、コンテナ部には魔導騎士マギ・ナイトと言う8メートル前後の人造騎士が4騎収めてある。」
「操縦席とかあって普通に動かすんですか?」
「普通の意味がちょっと分からないが、機体の頭部に脳があり操縦者の意思を感知して操縦者の思うように動かすといった感じだ。先に言っておくが誰にでも動かせるわけでなく特殊な才能がいる。」
「才能がないものが乗ると?」
「穴と言う穴から血が噴き出して死ぬからお薦めしないよ。」

「今晩はこの魔導騎士輸送機マギ・ナイト・キャリアの居住スペースで寝て貰う。済まないが怪我をしていない者は中に入ってくれ。怪我人は魔法で運ぶ。」
「分りました。」
タカヤは思い思いに座り込んでいた生徒たちに声をかけ魔導騎士輸送機マギ・ナイト・キャリアに向かう。
専属鍛冶師にして上位地霊族ハイドワーフの重戦士ガーランドが扉を開き操縦席へ向かう。
異邦人一行はそれに続いて中に入っていく。
さて意識を失っている者や怪我人は真語魔法の念動テレキネシスで運ぼう。
相棒と協力して運び入れる。

扉を閉め異邦人たちに向かって
「これからの予定だが、通訳コミュニケートの魔法は効果時間が3刻6時間ほどで切れる。掛けなおすが効率が悪いから暫くは街に滞在して言葉とか常識を学んでもらう。」
ざわつく。タカヤが立ち上がり
「わかりました。我々も路銀稼ぎくらいしないといけないでしょうし、そこは積極的に学びますよ。」
「今夜はそのまま街に向かって移動する。片道80キロほどだからのんびり移動しても朝方にはついている。街に入る際に入都税というものがかかるが、今回は我々が用意する。出るときには費用はないが入るたびに取られるので個人的には冒険者ギルドに登録することをお勧めする。ギルド証があれば入都税は免除だ。」

異邦人の生徒の一人が質問してきた。
「俺らは元の世界に帰れないんですか?」
次元門ディメンジョンゲートという魔法があるのだが、我々も試してみたが成功しなかった。確証は持てないが召喚に巻き込まれた影響ではないかとも考えている。仮に成功したとしても我々は君たちの住むニホンと言う国がある世界を俺は知らないので、誰か出来る者を探すか自分たちで何とかするしかない。」
それを聞いて泣き崩れるものも出た。そ~だろうな。

取りあえず食事にしたい。
「居住区に併設した時空収納インベントリになんか食料が入っていたはずだ。それを皆で食べるか。

肝心の食料はできたての状態で放り込んであったので温かかったし鮮度も問題なかった。


さて問題は・・・・。
森の中から回収してきた致命傷で意識を失っているものが6名だ。
辛うじて生きているが、このまま何もしなければ今夜中に息を引き取るだろう。
致命傷の者だが霊薬エリクサーを使えば回復するが、手持ちで提供できるのは2本しかない。
どうしたものか?

考え込んでいると眼鏡をかけた異邦人の中で一番年上っぽい少年というより青年?が近づいてきた。
生徒会長という役職に就く最上級生のタカヤだったか?が話しかけてきた。
こいつはうまく立ち回ったのか負傷もほとんどなく精神的にも一番落ち着いているように見える。
「まずはお礼が遅くなりました。助けていただきありがとうございます。傷の酷い者を助けるのは無理そうですか?」
ありのままの状況を伝えると
「あとは霊薬エリクサーが2本あるからそれで生死を彷徨っている者を2名はなんとかしてやれる。だが誰にする?選べるのか?」

「私がこのグループのリーダーみたいなものですから私が責任を取って選択します。」
致命傷の者をひと塊で寝かせてあるところに移動し見て回る。そして・・・・2名を指名する。
「この彼と彼女をお願いします。」
「理由を聞いてもいいかな?」
「私たちはこの世界の何かによってこの世界に召喚されたとここに出現する間際に従属神という女神に本来の場所に召喚されるとまずいそうで私たちは間引かれたんだそうです。女神自身の力で還すことはできないので、せめてこの世界で生き残るための力を授けてくるとの事だったのですが・・・」
一度言葉を切り
「彼は剣道というスポーツ武術と言えばわかります?それの全国レベルです。授かった力は判りませんが期待はしています。こちらの彼女は空手という無手のスポーツ武術の全国レベルの子です。」

「ふむ。スポーツ剣術はこちらでもあるがたぶん使う武器は違うんだろうな・・・。それと無手だと冒険者にも格闘師グラップラーという手技、脚技、組打を使う者がいるな。」

霊薬エリクサーを使ってやる。
肉体的な傷は回復したが、まだ意識は戻らない。そのうち回復するだろう。


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