シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第184話】 父と迷子なチビッ子と⑬

 


「どした? 何かあった?」

 風呂を出て着替えを済ませた俺は、先程からどこか挙動不審な二人に問いかけた。

「「いや〜……」」

 ハモりつつ言葉を濁す二人。

「……正直に言わなきゃダメなやつですかご主人様?」

「まぁ今後も末永く付き合っていくなら……ねぇ?」

「今のは求婚の申し出と捉えても!?」

「違わい!!」

 なんてポジティブシンキングなんだ。

「その〜、余りにいい匂いがするから……」

 ユイも渋々、観念したというように口を開いた。

「私とユイちゃんとで、先にサンドイッチをいただいちゃいましたぁ〜」

 お腹をさすりながら、悪びれもなく言ってのけるフェリ。
 その姿はさながら我が子を愛でる母のようにも映る。
 まぁ、入ってるのはただのサンドイッチなのだが。

「……なぁんだ、そんなことか。そんなん気にしなくていいのにさぁ。変なとこで律儀なんだからフェリも」

「変なとこで、は余計です!!」

 口にサンドイッチを無理矢理押し込まれた。

「ガフッ!?」

 溺れるッ、サンドイッチに溺れるッ!!

「お兄ちゃん、はいこれ!」

 ユイが湯呑みを渡してくる。なんていい子なんだ……。

ふぁんふサンキュ!!」

 俺はそれを勢いよく受け取り、一気に飲み干して詰まったサンドイッチを流し込むことに成功した。
 ……あれ? なんか身体の内側からカッカする感じがする?

「暑いな……、のぼせちゃったかな。ちょっと上脱ぐけど我慢してな」

 とりあえず上半身裸になり身体を冷ますことにした。

「ご主人様? そんなに暑いのでしたら、こちらにお水がございますよ」

 そう言って自分の唇を指差すフェリ。口移しってか……。まぁたまにはそれでも良いかな……。

「あーん………………あ? イカンイカン、何してんだ俺……」

 異常な火照りと眠気とで、思考まで蕩けかかっているようだ。今はこの微睡みに身を任せてしまおうか……。

「ゴメンフェリ、ちょっと寝かせてもらうわ……」

 一度眠ると決めてしまったら、堕ちるのも一瞬だった。



 ___


「で、がご主人様を狙った動機は何かあるのかな?」

 背中を流してあげつつ目の前の少女(?)問いかける

「特別なことは無いけど、ただ周りから色々と彼の話を聞いてたら、自分の目で確かめたくなっちゃっただけ」

「ご主人様は馬鹿だから新聞とか読んでないからアレだけど、姿を見たら九割方貴方の正体に気付くわよ」

「まさか無味無臭のお酒を飲まされるなんて思いもしないもの。それに現代社会では十五歳未満の飲酒はダメなの。ショーくんも失礼しちゃうよね。まだ私だって十八なのに『おばさんみたい』とか言っちゃってさ」

 後ろからでも頬を膨らましているのが分かるが、さっきその場でしっかり反撃してたような。意外と根に持つのだろうか。
 膨らんだ頬を指先で潰しつつ、

「デュボワ商会の会長さんを揺すってまで、こんな少年に会う価値はあったのかなー?」

「ゆ、揺すってないもん! ただお願いしただけだもん!」

「知ってる? そういうの巷ではパワハラって言うんだよ?

「ぱわはら?」

「上の立場の人間が下の立場の人間に無言の圧力を働かせる事、ってご主人様から教えて貰ったよ?」

「そ、そんな……、でもそれじゃ私っ」

「そ。王サマの命令は絶対、ってなもんでしょ?

 ね? ユイシス?」

「やめてってば……。そんな柄じゃないんだから。お父様もお母様ももう少し長生きしてくれたら良かったんだけど、急だったもの……」

 私の『精力吸収ドレインタッチ』は精力と同時に多少の記憶も読み取れる。本来は恩返し用の淫夢の設定作りの為のものなんだけど。
 んで、会長さんの記憶の中で見たのが、豪勢な部屋の中で誰かからご主人様を仕立て屋に呼び出すようされる場面。
 面白そうだから放置していたのだが、先程ユイシス本来の姿を見て疑問が確信に変わった。
 まさに、点と点が線で結ばれたような感じで。

「フェリお姉ちゃんはホントに精霊、淫魔サキュバスなの?」

「なに、疑ってるの? そりゃまぁさっきも言ったけど元人間ではあるんだけど。何なら『精力吸収ドレインタッチ』試してみる?」

「お手柔らかにお願いします……」

 試すんかい。こうなったら私も腹を括ろう。女同士では一番効率のいい接触方法で、ね。

「じゃあほら、身体ごとこっち向いて?」

「え? うん……」

「いただきます」

 頭に手を回し、一気にぽってりとした膨らみを捉える。

「ふぇ!? ……んっ……ひちゅ……れろ……やあっ……じゅる……」

 一気に舌を突き入れ、こじ開けるようにユイシスの唇から歯茎、舌へと責め立てる。
 始めは異物を拒むように固く閉ざされていた入口も、優しく撫でるようにすることで侵入を許した。
 そのまま、彼女はされるがままにこちらの動きに身を委ねているよう。
 それが征服感を満たすというか、酷く醜いほどに興奮してしまう。女としての、淫魔としての血が騒ぐ。
 舌先が触れ合う感触に電流が走る。
 漏れる吐息、鼻腔に満たされる女の匂いに脳が痺れる。

「はむっ……んっ……はぁ……んむ……」

 身体に当たっているはずのシャワーの感触も、音も、何一つ今は感じられない程に、ユイシスを感じている。
 思わず他の所へと手を伸ばしたくなるが、今回はお試しであって本番ではないのでなんとか押しとどまった。

「……………………はふぅ…………」

 唇を離す。
 膝からユイシスが崩れ落ち、へたりと座り込む。

「…………どうだったかしら? 大人になった感想は?」

「凄かった…………、まさに骨抜きにされた感じ……」

 そりゃまぁそうでしょう。淫魔の本気なんだし。

 「ショーくんにもこんなにするの?」

 「興味津々ねぇ……? まぁ彼が意識のある時にした事は無いかな」

 「えぇ!? じゃあ寝てる時とか……」




 「そこら辺は想像にお任せします♡」

 まぁ一線は越えてないんだけどね。残念ながら。




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