シスコンと姉妹と異世界と。
【第115話】討伐遠征⑤
「はぁ……沁みるなぁ」
「だな……」
「やだもう。ショーくんもエリーゼも、老夫婦みたいな事言わないでよ」
アリスさんに笑われてしまった……。
「で、どうお味の方は?」
「美味いっすね。さすがっす。やっぱりアリスさんを一旦通して店に出してるんすよね?」
「大半はそうよ。最近はたまに学校まで家の人間が来てワンスプーンで判定させられるわ」
「大変すね……。ん、ローズどした? 早く食べないと麺伸びちゃうぞ?」
「熱くて……」
「猫舌だったなそういや」
まぁ猫そのものになっちゃうくらいなんだし、当然か。でも濡れるのは平気で、風呂入ったりは出来るんだよなぁ。風呂入れない人間は結構ヤバいか。長風呂苦手とかは仕方ないにしても。
「フーフーしてみ? 冷めろーって」
「フゥー! フゥー!!」
「うわ熱っちい!!」
思わず椅子から立ち上がる俺。真ん前の席のローズがフーフーした飛沫が強襲してきた。若干魔法漏れ出したのか、フーフーの威力そのものが強かったぞ!? 
「あっ、鼻に飛んじゃってますね」
「ありがとうございます……」
フィーナさんが鼻についたスープを拭き取ってくれた。なんかすんごい恥ずかしい感じしてくる。出会って数時間のお姉さんに鼻拭いてもらうってアレだよね? レアだよね。
「……、ショーくん。塩味も食べてみる?」
「え、いいんすか?」
「折角なんだから分けっこしようよ?」
「それじゃお言葉に甘えて……、美味ーいっ!」
レンゲを伸ばしてスープだけをまず口へ運ぶと、ふわっと口から鼻にかけて幸せに包まれた。
「でしょー??」
「濃厚なのに飲み込んだ後スッと口からしつこさが残らず消えて、出しの香りだけが鼻に抜ける感じやばいっすね!」
「そんな細かく!? ショーくんって前世は雑誌とかの記者さん?」
俺の食レポの師匠は宮川○輔さんですから。美味しかったら即『美味ーい!!』と吠えるんだと、技術を盗ませていただきました。
「俺のもどうすか?」
「じゃ、いただきまーす」
器ごとサニーさんの前にほうとうを差し出した。
「あーっ、やっぱこっちも濃くて美味しいね! 疲れた身体には丁度いいかもっ」
器ごと、渡してしまったので俺のレンゲをそのままサニーさんが使うかたちに。
「あっごめんね。ショーくんの使っちゃった……へへへ」
「あ、いや、そんな謝ることじゃないっすから……」
「ショーくん、南瓜は好き?」
「わたしのも味見してみるか?」
「シャロンさんも姉さんも同じ味噌じゃんかっ」 
貰おうが貰わまいが同じ味だ。別にいらない。
「……、強情っ張り」
「ぐぬぬ……」
何かまだ言いたげなふたりを尻目に食事再開。ちぢれ麺じゃないのに、割とスープがよく絡むからきしめんって不思議なんだよな。そういえば……。
「あの、フィーナさん?」
「ん、どうしました?」
「あ、いや、大したことじゃないんで食べながらでいいですよ」 
「ズルズル」
「フィーナさんってなんで屋内でも帽子取らないんですか?」
「ぶふっ!! ……食べさせたのはわざとですか?」
そんな吹き出しそうになるなんて思いもしなかったから……。
「そんなつもりは……」
「これはですね……、まぁ宿についたらお話ししますよ」
「待ってます……」
なんでそんな勿体ぶるんだろうか。帽子脱いだら実はトレンディな事(ハゲてるの意)になってたりするんだろうか。だとしたら触れなければよかったかなぁ……。
そんなこんなで食事を終えて店を出て宿へと向かうことになった。アリスさんがいるからお代は要らない、と店員さんが申し出たが、当のアリスさんがそれを制した。で、フィーナさんが全員分支払った。
「さっきは皆の分払ってもらっちゃいましたけど、良かったんすか?」
「構いませんよ。それに、私は普段あまりお金を使わないので、こういった時に使えるのはちょっと嬉しいくらいですから」
「へぇー。でもフィーナさんお洒落とかしたらもっと可愛くなりそうなのになぁ……」
「なっ、かわっ!? ……もうひとつ申し上げれば、先程支払いに使ったお金は支給されたものなので、気に病まなくても平気ですよ」
一瞬、素のフィーナさんが顔を覗かせたが、すぐにお仕事モードに戻ってしまった。
「なるほどなるほど。それを分かってからアリスさんが店員さんを止めてたのか。納得納得」
「フィーナさん個人のお金だったら取らないけど、国から出てるなら話は別よ。貰えるものは貰っとかないと。ウチの商会は結構税金取られてる筈だしね」
「アリスさん聴いてたんですか!?」
「わたし耳がいいからねー」
「そうでしたね」
アリスさんの五感はこの世界でも随一のものらしい(本人談)から、聴かれちゃってたとしても仕方がなかった。
「ここまで来ると、泊まる宿もアリスさんのところの系列かもしれないっすね」
「確かに……」
「……癒着」
「ちょっと、人聞きの悪い言い方しないでよシャロンっ!」
国の一種の公共事業でもある軍が一企業の宿を頻繁に利用するとなると、そりゃ癒着言われても仕方ないとは思うが、実際のところどうなんだろうか。
「……、着きましたよ」
「いらっしゃーい!」
宿の前では見覚えのある女性がこちらに手を振っていた。
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