シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第102話】帰郷⑥




 どうも、ショーです。

 今、カレー作ってます、カレー。キッチンには俺、ローズ、母さんの3人が並んでいる。姉さんには控えてもらった。ので、前掛けだけしてちょこんと椅子に座っている。

 「本当にわたしは待ってるだけでいいのか〜?」

 「うーん! お姉ちゃんは待っててー」

 危なっかしいからね。主に包丁さばきとか。

 「じゃあ、ショーに任せるから指示を出してちょーだい?」

 「俺が?」

 「だってある程度これで出来るものが頭に浮かんでそうじゃない?」

 「なんで分かるのさ?」

 「勘よ〜」

 「お兄ちゃん、私何したらいい?」

 「野菜の皮向いてくれい」

 「りょかーい」

 そう言うとローズは人差し指の先に光を灯した。その指先でジャガイモをなぞると皮が浮くようにして剥がれる。ゆで卵の殻剥きのようにツルっといった。

 「じゃあわたしは何をしたらいいかしら?」

 「母さんはローズが皮向いた野菜を切ってもらおうかな。玉ねぎは2つをみじん切り、もう1つを……こう縦に切って半分にして斜めに入れて一口大に……」

 「何となく言わんとしていることは分かるわ」

 「イモと人参も一口大にチョチョイっと切っちゃって。あ、玉ねぎ切る時目を何かで覆った方がいいかも」

 「大丈夫よ。玉ねぎ使うのは初めてじゃないんだからそれくらい心得てるわよ」

 「これは失礼致しました……」

 「ほら。こんな感じで」

 母さんはまな板の上に野菜を乗せ、シールドを作り野菜を覆うようにして展開した。

 「指突っ込んじゃダメよ?」

 「そんな無謀なことしないって……、おぅわっ!?」

 シールド内の野菜が一瞬でバラバラになった。セルフフードプロセッサーといったところだろうか。綺麗に一口大で整えられている。3分クッキングどころじゃない処理スピードだ。まぁ煮込む工程があるから3分では終われないんだけども。

 「じゃあ俺は玉ねぎ炒めてくか〜。ローズは他の野菜炒めてくれ」

 切ってもらった玉ねぎを鍋に投入。魔法を使えば一瞬で火を通すことは可能だが、あの飴色玉ねぎの感じにするのは難しいのでここはチートなしで無難に。それでもまぁ焦げないようにだったり火力だったりは上手いことコントロールするけど。加えてお肉もサッと火を通しておく。

 「母さんは、水を1リットル半用意して」

 「はいはい〜」

 「やっぱりはえーなぁ……」

 母さんが手に取った器に、どこからともなく水が生まれて満たされる。主婦歴が長いからなのか計量カップ要らずで適量を出せるみたい。

 「お兄ちゃん、こんなもんでいい?」

 「ん。十分だな。したらここに入れてくれ」

 「はーい」

 「したら母さん、さっきの水をここに」

 「じゃばー」

 幼児退行かと思うような擬音語が急に炸裂した。

 「これを中火で、んー……20分くらい煮込むかな。蓋して」

 「おっけー」



______20分経過。



 「じゃーん」

 「全部火が通ってそうだな。したら浮いてる灰汁をとって……」

 「それはわたしがやるわ〜」

 「いや、姉さんに任せよ?」

 「あ、それもそうね。エリーゼ、ちょっと来て〜」

 「はーい」

 「姉さんにもお手伝いして貰おうと思って呼んじゃった。いきなりなんだけどこれで灰汁を取ってくれる?」

 「なんだ、それくらいなら朝飯前だぞっ」

 灰汁取りで得意げになられましても……。

 「……………………」

 チャッチャッと思った以上にスムーズに灰汁を取っていく姉さん。なんでこんな灰汁取りが上手いんだろうか。なのに包丁さばきがあの危なっかしさだもんなぁ……。人間分からないもんだ。

 「……、できたと思うぞ」

 「ありがとっ、お姉ちゃん」

 「したらコレを入れて10分くらい煮込めば完成だよ」

 「エリーゼ、頼むわね?」

 「はい!」

 「姉さん。焦げ付かないようにちょいちょい底の方からかき混ぜてね」

 「ああ、任せろ」

 「じゃあわたしたちはお皿とかの用意をしましょうか」

 「あっ」

 ごはん炊き忘れた。さっきチラ見したとき切らしてたような気がしてたんだけど買い忘れたな……。

 「あら、どうしたのショー?」

 「あ、いや……。パンとかある? これをつけて食べたら凄い美味しいと思ってさ」

 「あるわよ? 冷凍庫に保存したのが入ってるわ」

 「あ、ホントだ」

 冷凍庫にはパン以外にもいろいろ氷漬けというかフリーズドライという感じにされた食材が保管されていた。肉とか魚とか野菜とかあべこべだ。

 「ちょこっとお水をかけてやれば元通りになるわ。そういう風に作ってあるから。あとちょっとだけ温めた方が美味しいわよ」

 水を垂らすとパンもどきはパンに戻った。母さんとアリスさん家が協力してカップ麺でも作れば時代が変わるかもしれねーな……。生食感! フリーズドライ製法!! みたいなキャッチコピーで。でもフリーズドライ製法じゃ通じないか。この世界の人たちってあんまりカタカナ言葉使わねーからな。魔法とかで伝わってるものに関してはカタカナもあるけど……。

 「って、今温めてもまだカレー煮込んでるか。いやでもいっか、10分くらい」

 10分間ホカホカを保つ魔法! を使ってとりあえずリビングのイスに座って待機。あとは姉さん次第で全てが変わる。



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