シスコンと姉妹と異世界と。
【第81話】貸し出し権⑦(サニー編)
「あっ忘れてました!」
そう言ったかどうかはともかくレオンさんが駆け足で戻ってきた。
「これ使ってください。ではでは」
置いていかれたのは刀が二口に軍手が3ペア。普通に人数分は用意されていなかった。
______。
「で、どーするのこれ?」
「この道を使えるようにしなきゃだから、高出力の魔法ぶっ放して崩落させないようにしなきゃね」
「だってよローズ」
「お兄ちゃんこそはりきり過ぎないでよね」
「だがどうしたものかな……。このまま落とせば下の沢を塞いでしまうだろうし」
ダムを作れなんて依頼は受けてないからなぁ。
「じゃあ、ある程度岩石を砕いたら四角く整形してレオンさんに持って帰ってもらうのはどうかな……?」
「ステラ天才だ〜☆」
「レオンさんは確かに荷物運びの才能がありそうだったな」
「うちの商品として扱わせてもらおうかしらね。釜作ったり建築に用いたりガードレール代わりとして使ったり……いろいろできそうね」
「タダ働きかぁ〜」
「ちょっとショーくん、うちのパパがそんなことさせるわけないでしょ? 切り出したレンガが売れるとなればちゃんと後日報酬が発生するわよ」
「お兄ちゃんがめついなぁ〜」
「あ。いやそんなつもりは……」
「いーのいーの。分かってるって」
「……姉さんどしたの?」
「お前たちは魔法が使えるからいいが、生身のわたしに出来ることなどないじゃないか……ッ」
唇を噛み締めながら握り拳(小手装備)で岩を殴った。
「「「……はぁ?」」」
姉さん以外の全員が素っ頓狂な声を上げた。
「なっ!?」
さすがの本人も驚きを隠せない。ほぼ素手のグーパンで1m近くある岩石を粉々に粉砕したのだ。無理もない。
「姉さんマジか……」
ゴリラじゃん……。
「ゴリラじゃん……かな?」
「アリスさん、心を読まないで下さい!」
「お姉ちゃん、それ……」
「ステラ、ゾラ、どっちだとおもう?」
「力か……」
「魔法か……」
腕力であって欲しくないのは俺だけかな……。今後弄る度にライフを全損させるリスクを背負うことになるのは勘弁よ……。でもそんな魔法使えたっけ姉さん……。
粉々になったとはいえ、ちゃんと削り出せる部分も残してある。きめ細かい技というか、緻密なコントロールが魔法によってされたと考えるのがまぁ普通なのだけど……。
「ふふっ。わたしにも出来ることがあるではないか! よーし、今度は思いっきりいっくぞー!!」
よほど嬉しかったのかややハイテンションである。思いっきりいったら四角く整形っていう本来の目的から外れるんだけど。
「ぐぅぅぅ……」
そうは問屋が下ろさなかった。
ただ姉さんは力一杯に岩石を殴り付け、跳ね返された痛みで地面をのたうち回っていた。正直観てて面白い。
「って楽しんでる場合じゃないか。大丈夫、姉さん?」
「ああ……ありがとうショー。それに治癒魔法まで……いつの間に覚えたんだ……」
「そんな難しいことじゃないよ。ただ、姉さんの痛みが無くなってくれ〜、って念じてるだけみたいなもんだよ」
「そっか。ショーは優しいな」
「ちょっとーふたりの世界に入り浸らないでくれるー?」
「ア、アリス……すまん」
「とりあえずよく分かんないけど、エリーゼは今回は見学してること。またショーくんに貸しを作ることになっちゃうよ?」
「貸しだなんてそんな風には……」
「……分かった。大人しくしている」
「じゃあ大小問わないけど1人10個ぐらいを目安によろしくねー」
「「「了解!」」」
「アリスぅ、切り出す大きさはどの位がいいかな☆」
「そうねぇ……。まぁわかりやすく、縦横10センチ、長さ20センチの直方体にお願い」
「あいよー」
「余ったのはどうするんだ」
ゾラさんのごもっともな質問。
「うーんとりあえずレオンさんに持って帰ってもらって、あとは砕いて砂にして冬に備えたりするもよし、土嚢にしても良し……。上手いことやってもらいましょ」
「衛兵さんたちなら岩砕きくらいできそうだもんね」
ステラさんが手をポンポン叩きながら臨戦態勢に入る。
「よし、じゃあ作業開始ッ!!」
「「「おー!!」」」
______。
「やぁっ!! ひゃっほー☆」
サニーさんは姉さんからインスピレーションを受けたのか、素手で岩をある程度のサイズまで砕いていた。
「ステラッ」
「はいっ!!」
ステラさんとゾラさんはコンビ結成なのか、2人揃って岩石を宙に浮かせて勢いよくそれを互いに衝突させて砕くようだ。
「…………ハッ!!」
アリスさんは居合切りによる一閃。ただし斬撃が飛びます。
「……またつまらぬものを切ってしまった」
「ノリノリでパクらないでくださいよ」
「今日のわたしの斬鉄剣は一味違うのよ」
「その刀、まじで斬鉄剣なんですか!?」
「本気と書いてウソよ」
「どっちなんですかもう……」
「ほらほら、ショーくんも頑張りなさーい」
「了解です」
……ふぅ。……集中。……集中。
俺は目標に向かい神経を研ぎ澄ませ背後から近付いた。
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