シスコンと姉妹と異世界と。
【第36話】護衛任務⑤
気を取り直して……。
「まぁ、とりあえず見せてよ」
「カー君、仲間を2匹くらい連れてきて。近くにいなかったらそれでもいいや。10分くらいで!」
カー君が「カーッ」と一鳴き。そのまま窓から外へと飛び立って行った。
「行っちゃった」
「あっ、帰ってきた」
「だいぶ早いね!!」
「近くにいたんだろうね、仲間が」
窓に3匹の烏が止まり整列。カー君がうまく仕切ってる様だ。
「はいこれ、お疲れ様」
カー君率いる烏隊に木の実のプレゼント。啄むくちばしが手のひらに炸裂してとても痛いが、なんかちょっと可愛かった。
「したらカー君、2人には帰ってもらっていい。いざと言う時は助けてくれるように言ってくれ」
特に鳴き声を上げるわけでもなく、目を合わせるようにして後、カー君以外の2匹は闇に溶けていった。
「カー君、肩においで。ちょっと休憩したら、家に戻ってな」
俺の方の上にちょこんとカー君が座る。
「ほんとに言うことを聞くんだね……」
「まぁ、カー君そのものは俺が餌付けし続けて信頼関係を築き上げたんだけどな」
そう、友達がそんなに出来なかったから暇だったのだ。なのでやむなく鳥に餌をやってボーっとしたりしてたのだが、カー君がその中でも毎日家の窓に来てくれた。俺が出掛けた日にも来てたりしたら、は姉さんやローズを驚かせてしまったかもしれないが。
「そこまで懐いてたら、魔法いるのかい?」
「まぁカー君に関しては保険かな。なんか頼んだ最中にどこかへ勝手に逃げ出したりしないようにね。言葉が通じない以上、細かい命令は脳に直接の方が異種間同士では当然伝わるし」
「なるほどね。命令の範囲はどこまで?」
「恐らく……。意思の弱いものなら殺すことも可能だろうな」
「自分の中のマナの一部の変化に気付けるくらいの腕があれば抗えるのかい?」
「ご名答。それに、楔を打ち込む時は対象に触れていた方が強く行動を制御できるから、触れた段階でおおよその敵なら感づいちゃうだろうね。まだまだ微妙な呪文だよ」
「他には何か出来る?」
「感覚の共有が出来る。脳に働きかける魔法だからな。ただ、俺が処理する情報量が増えるから、ゲロ吐きそうになるんだよね……。1回カー君達でやってみたんだけど、高いところから急降下したりするしで……」
「結構反動があるもんだね」
「精神的にだけどな」 
「魔法も大変だね。でも使いこなせれば潜入任務とかにおける諜報活動にも使えそうだね。人間相手に使ったことは?」
「まだ無いよ。失敗したらどうなるか分かんないしさ」
「確かに、脳に干渉するのであれば何かしら問題が起きたりしたら怖いかもね」
「まぁ俺が楔打ち込む瞬間に死にかけて、マナが脳内で炸裂するとかしなけりゃ平気だろうけどな」
「そんな状況よっぽど無いでしょうよ」
「まあそこまで切羽詰まってたら、普通の攻撃魔法使ってるはずなんだけどね」
「それは言えてるね」
「あんまし人に使いたくないんだよね。悪くいえば洗脳だからさ、これ」
「気持ちは分かるけどいざと言う時は頼むよ。互いに背中を預けるんだからね」
「任しとけー」
「それじゃ、そろそろ寝よう。ベッドから落ちないようにね。うん、おやすみ」
「おやすみ〜」
1分少々ですぐにモーリスは寝付いてしまった。適応能力が高いのか鈍感なのか、意見は分かれそうだ。
______。
翌日は何事もなく報告を終えて寮に帰ることが出来たのだが、昼間帰って早々、姉さんとローズに外泊について問いただされることになった。
「お・か・え・り」
「姉さん……」
「無断外泊とはいい度胸だな……?」
「いや、もしかしたら泊まりになるかも、って話したじゃん!! 怖いからそんな怒らないでよ!」
「正直に言えよ? 誰と泊まったんだ?」
「えっ、一緒に任務行ったモーリスだけど」
「そ、そうか……。なら良かった」
んな露骨にホッとするのってどうなのよ姉さん。
「ローズ、どした?」
「あ、いや、なんでもない!」
「そうか……ならいいけどな」
「なんでもないったら!」
なーんか考えてたな……。
「まぁベッドがデカイの1つだけだったけどな」
「えっ!? ウソ……」
「男同士だぞ!? 何もないって!」
「わかってる! お兄ちゃんとモーリスさんが2人きりでどうこうしたとか考えてないから!」
テンプレ的自爆だぞそれ……。
「まぁ、事情は分かった。次からは気を付けるんだぞ」
「はぁい」
気を付けるったってなぁ……。
「じゃあ今度は姉さんと何処か泊まりに行こうか」
「え……。ショーがどうしても行きたいというなら、わたしは構わない……」
「ダメダメダメー! わたしも一緒に行く!」
「それなら、みんなで行こうか。人数多い方が楽しいしな」
「うん!」
「……ああ、そうだな、うん」
「ほら、昼メシ行こうよ。待っててくれたんでしょ?」
「調子のいいヤツだな、まったく」
「もうお腹すいたー!!」
無事に帰ることが出来て、当たり前の毎日に戻る。最高である。
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