ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~
医務室の異変
「だが、それはフェイクだったんだ」
例えば準決勝の最後。スコーンの氷魔法。ユウトは氷柱を受けて見せた。
顔や体に氷柱が刺さっても傷が1つ付いてなかった。
しかし、スタンが魔法少女と戦った時に見せた技。腕に魔力を流して、相手の魔法攻撃を弾いて見せた。
あれと同じ事をしてみせたのだとリョウマは説明した。
「俺はそう考えたのだが、可能か?スタン?」
「……」とスタンは少し考えて「可能かもしれません」と答えた。
「よし、話を続けよう。要するに準決勝で被害者は『無敵の鎧』を装備していなかったんだ。おそらくは準決勝で装備していた鎧は偽物。当然だが、被害者がそれに気がついたのは鎧が破壊された直後であり、その後の被害者の言動は―――」
「鎧を盗んだ犯人を庇うため……ですか?」
加賀の言葉にリョウマは頷いた。
「あくまで想像だ。鎧をすり替えた奴は、どんなタイミングで鎧なんてものをすり替える事ができたのか?こればっかりは当事者に聞かないとわからないが……おそらく、被害者はすぐにそのチャンスがあった人物に心当たりがあった。だから、試合直後に――― その人物の元に――― つまりは医務室に急いで向かったのだろう」
「医務室……やはり、全ての犯行は神父の仕業という事ですね」
「あぁ、神父と被害者の関係性はわからんが、それなりに縁の深い知り合いだったのだろう」
「目の前で鎧は脱いで、任せれるほどの深い仲だったのですね」と加賀。
どうして、爛々と目を輝かせているのか?
スタンとリョウマは疑問に思ったが、口には出さなかった。
―――医務室―――
リョウマがノックをするも返事はない。
「在室中のはずだが……」
一瞬、「逃げたのか?」と緊張が走る。
しかし、すぐに考え直した。
この会場からは簡単に脱出はできないはずだ。
まだ、会場の外には多くの観客が残っているからだ。
不可解な事件の目撃者になった彼らは、会場から退出が許可された後にも会場を取り囲むようにしている。事件発生から数時間経過したにも関わらず……
英雄の死というのは、そうせざる得ないほど強烈なエネルギーがあるのかもしれない。
もしも、関係者らしき人物が会場から出ようとしたら、あっという間に取り囲まれるだろう。
この会場から出る事自体、困難であり、すぐに出ようとした人物の情報が伝わってしまう。
だから、神父も会場内にいるはず……
リョウマはそう考えた。
しかし―――
「……あの、どうして入らないですか?鍵も閉まってないみたいですけど……」
加賀が普通にドアを開けていた。
「って馬鹿!?」とリョウマは怒鳴ると、加賀の首根っこを掴み、入室しようとする彼女を止めた。
「そんな無防備に入る奴がいるか!相手は非武装に見えても、どんな殺傷能力を持っているのかわからないんだぞ!もう少し、警戒心ってやつをだな……」
「え?いや……でも……」と加賀は室内を指差した。
そして―――
「どうやら、神父さん……死んでるみたいですよ」
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