ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~

チョーカー

リョウマの疑問


 「加賀、本土の連中に連絡。いつでも裁判所から令状を取りに行ける準備を頼め」
 「え?令状ですか?もしかして任意同行で落とすつもりですか!」
 「速攻で片づけるなら自供を取るしかない」
 「落とせますか?」 
 「無論、落とす」

 リョウマたちは医務室へ向かう。
 観客たちは、帰宅の許可を出したが関係者は待機中。
 神父も医務室にいるはずだ。

 無言で急ぐ。徐々に緊張感が高まっていく。
 そんな緊張感に耐え切れず、声を出したのは加賀……ではなく、意外にもスタンだった。

 「リョウマさん、1ついいですか?」
 「……なんだ?」
 「リョウマさんの推理は何だったんですか?」

 「むっ……」とリョウマは一瞬、声を詰まらせた後、「お前と同じだ。神父が怪しいと思っていた」と答えた。
 しかし、スタンは、そんなリョウマの反応に違和感を覚えたのか、さらに踏み込んで聞いてくる。

 「全く同じ……とはならないでしょ?それにリョウマさんの反応がおかしかった所があったのですが……」

 「チッ」とリョウマは舌打ちを1つ。「しょうがねぇな」と話を続けた。

 「俺が気になったのは2か所。1か所はお前の推理で腑に落ちたから1つだな」
 「それは、どの様な?」
 「1つは、どうして準決勝の直後に被害者であるユウトが医務室に行ったのか?」
 「どうして……それは……あっ!」

 スタンも気づいたのだろう。

 『無敵』であり準決勝を無傷で勝ち進んだはずのユウトが医務室へ用事があったのか?

 しかし、リョウマに取っては解決済みだった。

 「いくら『無敵』と言っても、それは攻撃を無効化するもので、攻撃に付属した二次的効果とでも言えば良いのかな。簡単に言っちまえば、冷気で感覚がおかしくなったから治療に行ったんだろう」

 だから、冷気で麻痺した体を背後から刺されても気づかなかった。
 リョウマはそう考えていた。
 だが、その考えはスタンによってあっさり否定された。

 「いいえ、それはありません」
 「なに!?」
 「それは、決勝戦を思い出してください」
 「……決勝戦?」
 「僕は、炎の攻撃を仕掛けたましたが、リョウマさんが言う『二次的効果』ですか?炎による熱によっての異常はありませんでした。現に延焼によって彼の髪、燃えてませんでしたよね?」

 「そう言えば……」とリョウマは自身の記憶を探る。

 「もう1つはなんですか?」
 「あぁ、そうだな……奇妙だなぁと感じたんだ」
 「え?」
 「被害者はどうして、自分の能力を説明したんだ?」
 「どうしてですか?」
 「あぁ、さっきの話だ。お前、こう言っていただろ?」

 『僕らの世界でも『チート能力』はまだわかっていない事が多いのです。
 それは転生者が自分たちの切り札である力を隠してしていたり……
 未知の世界で強すぎる能力は、悪用しようとする人を呼び寄せてしまう経験があったのでしょう』

 「変じゃないか?『不死身』なんて二つ名がある英雄である被害者であっても、今まで自分のチート能力を秘密にしていたはずだ。いや、チート能力を持つ転生者というのは周知の事実だった。しかし、誰も彼のチート能力の詳細までは知らなかった。それをどうして、今日、戦いの最中に宣言するかのように言い始めたんだ?」

 それらのリョウマの疑問。それを聞いたスタンは足を止めた。
 それに気づいて振り返るリョウマ。

 「……リョウマさん、貴方は、それらの疑問点に何らかの落としどころを見つけてるのですか?」

 「……」とリョウマは無言で頷いた。

 「やはりは貴方の推理を聞かせてください」

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