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山田 武

偽善者と橙色の会談 その04



 地上に現れた龍のようなナニカ、それに備えるべく『選ばれし者』に先んじて大地に降り立つ俺と召喚した眷属。


「……えっ、何その格好?」

「えっと、隊服らしいです」
「……似合う?」

「ああ、それはバッチリ。二人とも、よく似合っているぞ」


 現れたのは姉妹の眷属。
 姉であるフーラと妹であるフーリは、普段とは異なる衣装を纏いここにやってきた。

 いつもは白金や黒金シリーズの装備だが、今回の彼女たちは『装華』の上に仮面を着けての登場だ……しかもなぜか、それは彼女たち自身の物では無い。


「『造花[攻式]』じゃないか……そういう指示が入った、ってことなのか」


 俺の着ている『造花[守式]』と違い、やや兵装を多く積んでいる[攻式]。
 意匠は似ているのだが、目に見えて武器が多いので違いは明白だ。

 まあ要するに、『装華』の偽装に加えて武器を充実させている。
 それはつまり、今回の戦いにおいて本気の装備を使わないよう指示されているわけだ。


「えっと、これまでのお姉さんたちが、全員華都と紐づけされたので」
「……独自路線で行く、だって」

「傭兵か? そうだな、これまでは信用を勝ち得るためにこっちから擦り寄っていたが、二人は学校もあるからな。ずっと居なくてもいいようなしてくれたんだろう」


 フーラとフーリはまだ現実で言えば子供、そのため自由世界ならともかく、俺の世界では学校に通って、さまざまな知識を学んでもらえるようにしている。

 だが、彼女たちは【英雄】であり、特別な力を持っていた。
 二人の望みで手伝ってもらっているが、あくまで本業は学生……常時は無理だしな。


「了解。あっ、そうだな。良かったら二人とも、傭兵としてのグループ名を考えてくれないか? 俺はあんまりセンスが無いみたいだしな……」

「分かりました!」
「……任せて」

「よし、それじゃあ二人とも──アレを後で来る連中が倒せるぐらいに弱らせるぞ」

「はい!」
「うん」

『──────ッ!!』


 俺たちを視認したのだろう、龍は咆哮を上げてこちらへの敵意を示す。
 それに対し俺は魔術を、フーラとフーリは俺が与えた双剣を一本ずつ展開する。


「──『幻ノ君ファンタズマ』、『伝導宣糸イメージライン』!」

「「──“切断結界セクションバリア”!」」


 俺が生み出すのは虚像による身代わり、それを魔力の糸である程度自由に操作する。
 その間に二人は結界魔法を発動し、まずはどの程度魔法が効くのかを実験。

 龍はまず幻影に翻弄される。
 この時点で龍が本来有する龍眼が上手く機能していないことが分かる、普通ならあっさり看破されるだろうからな。

 そして、結界魔法は──無効化。
 龍の鱗が性質として有している、低位の魔法を無効化する能力……こちらはどうやら、きちんと機能しているらしい。


「結界魔法、通じません!」

「俺の魔術が通っているから、龍としては完全には機能していないことが分かる。また、それでも結界魔法は無効化しているから……部分的に龍の能力を使えるようにして、強制的に動かしているといった感じかな?」

「そうなると……直接攻撃でしょうか?」
「……それとも、放置?」

「俺たちだけで倒すわけにはいかない、だが放置はあんまりよろしくないな。そうだな、フーラの言う通り直接攻撃で、翼を切ったり爪を壊したりしておこう。あとで倒しづらくなる部分を除外してアシスト、これだ」


 虚像を操り龍の注意を逸らす。
 その間に二人は接近し、その手にした剣を翼の根元に当てて──切り離した。


『──────ッ!?』

「うーん、武器性能がチート過ぎるな。今はいいけど、来たら切り替えよう。俺の魔術でコーティングして、どうにかしていましたみたいな設定にしとこうか」


 彼女たちの双剣は、劉であるシュリュからいただいた素材で強化された代物。
 そのためだろう、相手が竜種な場合通常以上に性能を発揮する。

 龍の身に纏う『花』は、切断の際に大した抵抗もせずそのまま斬られた。
 これが何を意味するのか……一時的に、性質ごと同化して操作しているのだろう。

 だからこそ、『花』も龍の一部として運用されている。
 まあ、目に見える花を全部取り除いたところで、それで救えるわけじゃないと思うが。

 そこまで把握したところで、起動していた魔術を解除。
 機動性を奪ったし、鱗も所々二人が剥がしている……そこまで行けば充分だろう。


「──『構造解析アナライズ』、『過程演算シミュレート』」


 なので思考に集中し、龍と『花』の関係性について考察を行う。
 これまで何度か竜種の魔花は見たことあるが、龍の個体は初めてだ。

 そのうえ、赤色の世界と同じ法則性を有していたのであれば、世界に一体必ず存在する特別な龍。

 鱗ごと『花』が引き剝がされていくと、その表面を視認できるようになっていく。
 その色は白みを帯びたもの……俺の中の確信は、より強まっていった。


「……フーラ、フーリ。アレ、間違っても殺しちゃいけないみたいだ」

「それは……大丈夫ですが、何故ですか?」

「うん、アレはたぶん聖龍の一種、この世界の番人ならぬ番龍だ。それを『花』が支配して、こうして利用している。だから殺されると最悪、この世界のどこがが狂いかねない」

「…………面倒」


 上空ではようやく、『選ばれし者』たちの出動が決まったらしい。
 俺の姿も変えておかないといけないか? まあ、それはギリギリでもいいか。



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