AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と橙色の会談 その03
集められた華都、その中央に存在する央華プロテスリアにて行われる話し合い。
各華都の代表、そして『選ばれし者』たちのみが会談の場に集う。
俺やクエラム、そして一部の華都に派遣した眷属たちは参加できないわけだ。
なので中の状況は分からない……わけでもないが、対外的には不明ということで。
「それでまあ、話し合いの最中は護衛たちも一時的に隔離されるわけで。部屋はすぐ隣、何かあればすぐに駆け付けられる……その代わり、それぞれの護衛が牽制し合って、部屋からの脱出はさせない仕様なわけだ」
「ふむ、なるほど。メルスは何でも知っているな!」
「俺は何にも知らないよ、知っているのは眷属たちだからな。今までも同じことをやっているみたいだから、経験者からちゃんと聞いておいてくれたらしい……そういえば、そういうことやるの忘れていたな」
「うむ、さっぱりだ! ただ、たしかに嫌な感じはする。だがそれは、今すぐにというわけでもないだろう」
クエラムは聖獣であり、人工的に魔獣へ貶められた存在……要は悪意に敏感だ。
彼だった彼女がそう言うのであれば、トラブルそのものは起きるに違いない。
眷属たちにもすぐ周知させ、そのまま自分たちが担当する華都の者にも伝えてもらう。
ただ、具体的な内容は不明なので、あくまで警戒してもらう程度だが。
「普人が『勇者』、森人が『賢者』、獣人が『守護者』、魔人が『魔王』……で、たしか花人が『聖女』でここに『橙王』のはずだったよな…………あれ、山人は?」
「そういえば、一つ余っているな」
「文献にもその情報は無かった、『装華』自体華都が浮かんだ後に生まれた概念だし、漏れがあってもいいのか? いやまあ、赤色と違う『選ばれし者』の数かもしれないし、把握できなかっただけかもしれないが」
「何にせよ、気に留めておいた方が良いかもしれぬな。メルス、何か助言はあるか?」
本来の仕様では、『選ばれし者』の人数は六人と定められている。
だがここ理を奪われ、『装華』がその欠けた部分を補っている世界だ。
それゆえに、これまでとは違う何かがいくつも存在しているかもしれない。
山人に居るとされる『選ばれし者』も、もしかしたらその一種なんだろうな。
……問題は、それがどういった理屈で存在しているかどうか。
そして、その『選ばれし者』が世界のためにあるのか……最悪、敵に回すだろう。
「山人の『選ばれし者』、これを見ていてもらいたい。他の眷属にも言っておくが、まだ直接見ていないのは『聖女』と『橙王』、そして山人のヤツだ。それぞれ、見張っておいてもらおうか」
「なるほどな、了解した。その任、己へ任せてもらいたい!」
「ああ、頼もしい限りだよ……俺は俺で、生産者としてできることをやっておくよ。ここにはいちおう、全部の華都から素材が集まってきているからな……『装華』専用の追加装備とかもできるみたいだし、やってみるよ」
この世界の誰しもが持つ『装華』、だがそのすべてに望んだ性能になるわけじゃない。
中にはいっさい身を守ってくれない物もあるらしく、その対策として生まれた代物だ。
組み込むことで、『装華』の起動に準じて自動的に装着される追加パーツ。
せっかくなので、それを眷属たちに与えられないかと考えてみた。
「おおっ、それはなんだ……凄く楽しみではないか!」
「ああ、そう言ってくれると俺も作り甲斐がある。まあ、これを全眷属の分だけ製作するには時間が掛かりそうだけどな……でも、それはそれで楽しめそうだ」
眷属たちの『装華』は把握しているので、それに合わせた追加パーツを作る予定だ。
数は異様に多いが……うん、それが俺から贈り物ってことで……誤魔化せないかな?
◆ □ ◆ □ ◆
そして、会談の日──それは起きた。
まあ、眷属たちが高い能力値で探ってくれていたであろうその会談の場で何か起きるその前に……大地にて。
ある程度予測していたことだ。
人々から奪った大地を根城に『花』は活動しているのだ、当然何かするのであれば始まりはそこからとなる。
「シュリュと遺跡に行った時から、細工はしていたけどさ……ふむふむ、どうすればいいのかね──ああ、君。俺は好きに動くから、その旨を獣王様に伝えておいてくれ」
「は、はっ!?」
「詳細はクエラムが知っている。あと、いちおう自由にさせてもらうと言ってあるから多分大丈夫だろう」
「ちょ、メルス様!?」
クエラムが議会場に行っている間、いちおうの護衛に来てもらっていた兵士に軽く誤って、そのまま姿を晦ます。
こういうとき、“不可侵ノ密偵”は本当に便利だと思った。
何度か“擬短転移”を挟み、そのまま央華から落下──地上へ向かう。
「──リア、アン、クエラム、シュリュ。四人はそのまま議会場で警備を頼む。俺……俺たちはそうだな、龍退治をやるみたいだ」
墜ちていく中で、だんだんと見えてくる騒動の発端。
覆うというレベルではないほどに花々に包まれた、龍の形をしたナニカがそこに居た。
俺は装華『造花[守式]』を身に纏い、適当な武器を準備。
そして、この世界では珍しい魔法を展開して召喚陣を生み出す。
「さぁ、時間だ──“召喚・眷属”!」
いったい誰が来るのやら……そう呟きながらも、ワクワクする自分がいた。
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