AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と欲深き迎撃 その13
時空魔法で封鎖された世界の中。
俺とビャッコは、激しい接近戦を繰り広げていた。
なお、この時間において“奪○掌”系の能力は使わないと宣言している。
そのうえで、倒してやるといういわば舐めプだった。
「「うぉおおおおおおおおおおおおお!」」
向こうに合わせるよう叫んでいるが、正直俺の脳内ではさまざまなことが巡っている。
思考系スキルをフル回転させながら、現状の把握と今後の策を練っていた。
振るわれる爪は斬撃と化し、そうでなくとも常に真っ白な光を放つ爪を警戒しながら戦わなければならない。
対する俺は相手の全方位あらゆる場所から攻撃を行い、即離脱を繰り返していた。
普段は転移眼で行う場所の変更を、縛り中なので別の方法で行い代用している。
だが、ストックしている魔法にも限りがあるので、そう長くは持たない。
おまけに向こうも慣れを感じているのか、少しずつ俺の居場所を把握し始めていた。
向こうは肉体時間操作能力があるので、それを利用したのかもしれない。
処理能力を加速させ、移動速度に緩急をつけるなど……結構思い当たる節があった。
(そうなると、このままだと負けるな……向こうの攻撃は仕組みが簡単だが、その分対策の仕様が無い。そもそも、俺のやっていることも単純だしな)
危なくなったら転移で逃げて、主に死角から攻撃をしているだけ。
いちおう身力で強化しているが、あちらもそれぐらいはしている。
縛りで能力値が抑えられているため、総合的な能力値は向こうが上なのだ。
だからこそ、“奪○掌”系の能力は非常に便利だったのだが……縛ったからな。
「どうしたどうした! その程度か!?」
「…………」
「ハッ! 所詮はスキル頼り! 自分の言を呪うんだな!!」
「──“欲塗れの宝物庫”」
ビャッコは宙に開いた穴を警戒する。
これまで多くの魔法を取り出し、自身を苦しめてきた能力。
だが、今回取り出すのは魔法じゃない。
ビャッコは突然、何かに気づいたように回避──しようとした瞬間に吹き飛ぶ。
一方、俺は片手を広げ──握る。
そこには何もない、しかし確かに存在していた。
「覚えておけ、『無槍[天華]』。貴様を殺す神殺しの槍だ」
くるくると棒を振り回す所作を──していると、再びビャッコが吹き飛ぶ。
うん、こっそり長さを伸ばして、曲げながら穿ってみました。
推進力が無くとも、[天華]は一度狙った相手を勝手に追いかけてくれるからな。
攻撃のバリエーションを増やすためにも、ちょうど良かったので使うことにした。
「ぐっ……ぐはっ! な、なんだこれは!」
「まあ、慌てるな。これからじっくり、嬲り続けてやる」
「──ッ!?」
転移、体術、そして[天華]。
対処する物が一つ増えるだけで、ビャッコは再び劣勢に追い込まれた。
最初の反応からして、ギリギリ五感が反応できているようだが……そこに俺の妨害が入ると、慣れようにも間に合わなくなる。
俺と共に転移させる時もあれば、あえてその場に残して攻撃させる時も。
形状を変えて不意を突いたり、短くして拳の中に潜ませたりとやりたい放題である。
「夢現流武具術槍之型──」
「!?」
「──“力槍・三叉破槍”」
形状は三叉の槍となり、それぞれ穂先に宿る火・水・雷の現象。
あからさまに強力な一撃……いや、三撃、当然ビャッコはそれを回避する。
「──────ッ!!!!」
「これで仕舞いだ」
だが、避けたはずのビャッコの体には、火と水と雷のエフェクトが迸っていた。
何度も使っていた[天華]の“透明追撃”が発動したからだ。
本体に加え、不可視の虚像にまで警戒しないといけないというクソ仕様。
おまけに武技や能力も反映されるため、二撃必殺なんてものも一回で可能になる。
さて、そんなわけで致命的なダメージを受けたビャッコ。
肉体加速による高速再生も、基となる生命力が枯渇していれば使えない。
「まだやるか?」
「……いや、もう充分だ」
「そうか。ならば、貴様も──」
「だが、最後に一つやらせてもらうぞ!」
充分と言ったくせに、まだ足掻く猛虎に俺は手を伸ばす。
それでも宣言したのだ、俺もまた俺に課した縛りを一つ解こう。
「──『白咆』!」
「──“奪命掌”」
繰り出される咆哮、それは命を賭した最期の一撃に相応しい衝撃を持っていた。
だからこそ、俺は掌を前に突きだす──そのすべてを、余すことなく呑み込むために。
「…………」
「…………」
「……殺せ」
「殺さんよ。貴様という存在は、俺の駒とするためにあるのだからな──“奪魂掌”」
うん、結局殺しているんだけどね。
なんだか潔いことを言った後、俺の言葉に満足げな笑みを浮かべ……ようとしたその瞬間だった。
──魂をズブッと奪われ、その感覚に大変驚いた様子。
「一喜一憂がとても分かりやすく顔に出やすいヤツを知っているが、ここまであからさまなのはなかなか見ないな」
生きるか死ぬか、その瀬戸際だからこその起伏の激しさなのかもな。
ギャグ漫画レベルで顔芸をかましたその姿に、演技も忘れて噴き出してしまったよ。
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