AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と欲深き迎撃 その09
セイリュウは青龍偃月刀(カスタム版)、そして俺は木刀(神樹)。
見た目では遥かに劣っているが、性能だけならば負けてはいない。
剣道のように両手で握るのではなく、右手のみで木刀を掴む。
左手はいつでも【強欲】な掌を使えるようにするため、空けておく必要があった。
俺は宙を蹴り、セイリュウは飛行系のスキルか何かでお互いの下へ。
そして、勢いよく武器を振るい──凄まじい衝撃が弾ける。
「その神々しさ、やはり本物でしたか」
「貴様こそ、これについてこれるだけの武器だったか」
「ええ、自慢の材質ですよ!」
青龍偃月刀──いや、オリジナル要素が多いのでセイリュウ偃月刀でいいか──を振るうと、まず刃先となっている水の部分が斬撃と共に射出された。
それを回避しようとする軌道上に、今度は石突の部分が不可思議な動きで伸びてくる。
こちらは木刀で軽く防ぎ、その勢いを利用して距離を取ることを選んだ。
水を飛ばした後、刃はすぐにどこからか供給されて再構築されている。
伸びた石突も元通り……否、セイリュウ偃月刀自体の長さが伸びていた。
「なかなか面白い武器だな。だが、そのような手品で俺を満足させられるのか?」
「手品とは手厳しい……ご満足いただけるよう、存分に楽しんでもらいましょうか!」
刃を上に向け、両手でセイリュウ偃月刀を持つと──石突が今度は下へ伸びていく。
そして、そのまま地面に接触すると、森林が大きく揺れ動き、一気に成長する。
地割れの影響も、活性化させた樹木同士を絡ませて強引に直そうとしていた。
ならば、と無防備なセイリュウに木刀を振りかざし──吹き飛ばされる。
当たってきたのは、急成長を遂げた植物。
枝などではなく、幹自体をこちらへぶつけてきた……間違いなく、セイリュウが意図して差し向けてきた物だ。
そんな当人を包み込むように、多くの樹木が彼の下へ集う。
彼を守る鎧となり、彼を包む外殻となり、彼を支える彼をなる。
出来上がったそれは、巨大な辰。
木でできた巨大な青竜、それが今俺の前に現れた。
『これが私の本気です! さぁ、どうしますか!!』
巨大なセイリュウ偃月刀を二本作ると、それを木製青竜に装備させる。
器用に掴んだそれを振り回してくるので、木刀で防ぎ、空けていた左手を前に構え──
「──“放蕩散財”、“奪魔掌”」
『ッ!!!?』
溜め込んだ財──他者の身力を捧げ、強化するのは当然“奪魔掌”。
ドレイン性能を強化することで、消費した分を取り戻すやり口だ。
そして、さらに吸収して余った分は身体強化に回す。
さすがに巨大な青竜を相手に、いつまでも低スペックなままではいられないからな。
「どうした、動きが鈍っているぞ?」
『くっ……』
「光合成で稼げるとはいえ、やはり動力を奪われるのは嫌か? ならば、とっとと終わりにさせろ」
『そうは、いきませんよ!』
再び接触されることを嫌がり、青竜は周囲の樹木を操作。
触れても特に変化が無いことから、間接的な干渉なのだろうと判断。
木刀に身力を注ぎ、硬度を上げてから次々と伐採。
だが、向こうはいっさい痛手は負わず、かつ光合成で各身力を回復中だ。
終わらせるためには、最低限セイリュウに触れる必要がある。
だがそれにはまず、青竜を破壊して内部への道を抉じ開ける必要があった。
──ならば、必要なのは強烈な一撃。
「夢現流武具術刀之型──」
『────』
「──“蛇刀・天羽々斬”」
その斬撃は、一振りが八振りとなる。
八筋の軌跡が同時に描かれ、近づいてきた樹木すべてを切り裂いていく。
対策をされる前に、そのまま勢いで近づき道を作る。
脚力を身力でさらに強化、青竜の腹をそのまま切り拓──殺気!
「っ……危ないな」
「この時を待っていました!」
腹を開いたその瞬間、セイリュウ偃月刀が突きつけられた。
とっさに躱して首の皮一枚の距離で避けたのだが……視界がグラリと揺れる。
「どうですか、この特別な毒──」
「──“放蕩散財”」
「…………はっ?」
毒なのは分かっていたので、対処は早急に済ませた。
代謝を高め、耐性スキルを強化し、特別製らしき毒を瞬時に解毒。
……残念ながら、無毒化というのは強化だけではできないんだよな。
その辺り、叶えてくれる『欲望の聖杯』はよくできた魔武具だと思います。
「それで、切り札の毒は終わったぞ。まだやるのか?」
「…………降伏です」
「そうか、ならば受け入れろ。悪いようにはしない──“奪魂掌”」
「何を──」
殺しはしないが、スザクと同程度の処理はさせてもらうことに。
……一番最初にやられたゲンブが、ある意味一番救われているな。
回収した魂からまずは記憶を拝借し、その後に隷属させてから蘇生のワンセット。
すでに何度もやったことがあるので、その流れはかなりスムーズである。
そして、起き上がったセイリュウはスザクと違い反抗的ではない。
ならば、俺もそこまで強引な命令はしないでおこう。
「セイリュウよ──『スザクと共に、ビャッコの道を阻め。殺すことも厭うな』」
「……分かりました」
「『すぐに……いや、万全の準備を終えてからでいい』。『ただし、一時間以内にだ』」
「なるほど、そう上手くはいきませんか。分かりました」
すぐに来ても準備は整っていないし、かといって万全だけを条件にしたらいったいいつ来るのか分からなくなる……そこで時間制限である。
やれやれ、といった表情のセイリュウに若干イラつきながらも、俺は次の目的地に向けて移動を行う。
四神を冠した魔者も、残るはビャッコただ一人……けどまあ、これで終わりでは無いんだろうな、という予感があった。
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