AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と愚者の狂想譚 その11
???
正直、寝たふりをしてがっつり周囲の警戒に専念しようと思っていたのだが……それを他でもない、俺の内部にある存在たちによって防がれてしまったようで。
「……なんで、邪魔した?」
《んもー、決まってるじゃない! 君が女の子たちを泣かせたからよ!》
「…………あっ、やっぱり?」
《ん。悪い子、めっ!》
ふわふわと漂う三色の浮遊体。
紫色のローベと白色のリープ、そして銀色の──
《はっ! 哀れだな、プライドよ! 女心も分からぬとはな!》
「マストか……いやまあ、お前らの性別は女だから、そりゃ分かるだろうけど」
《そ、そういう意味ではない! ……コホンコホン、お前はオレよりも女心が分からないわけだ。認めろ、オレの方が上だと!》
「メルとして、特に女心を学んだわけでもないからな……はいはい、俺の負けですよ」
ある意味、異性同名の妖女での思い出を振り返った後に降参する。
そういえば……最近また、全然会ってない気がするな。
《そうよ、全くダメね。さっきのアレだってダメダメよ、君が読んでいた創作物だったらレビューは星1つ、いいえ半分よ!》
「……いや、別に評価されたくて言ったわけじゃないし」
《そ・れ・で・も! あの娘たちに報いてやるのが、【色欲】を担う者としての使命よ。というわけで──ここでみっちり、お勉強していってもらうわね♪》
「…………えっ、なんでそうなるの?」
彼女たちは俺のミソッカスみたいな小さな欲望と、本来各<大罪>スキルが持つ衝動──そしてそれ以外のナニカが混ざったことで生まれた人格だ。
基本的な知識は俺のモノを、そして自身の司る罪に関する情報は俺以外の所から引っ張り出してくることができる。
なので、【色欲】担当のローベがそういったことに詳しいのは分かるけども。
……俺と同程度に初心なのに、いったいどう教わればいいのやら。
◆ □ ◆ □ ◆
目が覚めた時、そこは──
「……知らない天井だ」
『ノゾムよ、いきなり『がっつぽーず』を取るのは良いが、まずは状況を見る方が先決ではないか?』
「……輝夜様か。で、状況は?」
『ほれ、隣を見よ』
いちおう言っておくと、場所はどうやらどちらかの陣営の天幕の中だと思う。
まあどちらにせよ、休ませてもらえるぐらいの関係は構築しているようだ。
天井に興奮するという高度なプレイをした後、言われた通りに首を動かして確認。
……なるほど、だから輝夜も思念での連絡にしたわけか。
「かぐやは、いつぐらいから?」
『一時間ほどじゃ。妾は良いと言ったのだが聞き耳を持たんでな。つい先ほど、眠ってしまったばかりよ』
「そっか……二人とも、ありがとう」
『……妾に礼は要らぬよ。その分、かぐやに奉仕せい』
そう言って、輝夜は意識を引っ込める。
残されたのは俺、そして無防備に眠るかぐやだけ……うん、上げ膳据え膳的な?
「……さっきのお勉強を活かすなら、間違いなく『襲う』一択なんだがな」
今の俺の発言で、お勉強がどれだけ偏っていたのかがよく分かるだろう。
ただまあ、何もしないとそれはそれでお説教になりそうなので……とりあえず。
「頭ナデナデ、ってところで」
「っ……、…………」
「いやー、相手が寝ているって分かっているからできることだな。面と向かってやるのはやっぱり、少し気恥ずかしいし……」
「…………」
あー、これ、起きてるな。
俺の動きで違和感を覚えて起きたか、それとも輝夜が内側から起こしたのか……いずれにせよ、彼女の意識は覚醒していた。
俺の発言はわざとらしくもあるが、ある意味免罪符のような役割を果たす。
寝息は聞こえない……そして、頭を撫でると体が時折ピクンッと反応する。
「かぐや……あのときに言ったこと、僕は間違っていないと思っている。僕は【強欲】だからね、いろんなものが欲しいんだ」
「…………」
「みんなを独占したい……そういう想いが無いとは言い切れない。だけど、それで嫌われると分かっているからね。そんな僕だから、あんな自分勝手なことしか言えないんだよ」
独白として語る俺の本音。
……いやまあ、お勉強で自分の弱みを晒せと言われたもんで。
正直、俺個人としては反対だった。
いきなり言われて、俺なら引くし……だが彼女たちなら大丈夫、とローベがごり押ししてくるので受け入れるしか無かったのだ。
「でも、決めるのはみんな自身だから……受け入れて、ほしいけどね」
顔が見えないので、彼女がどういった心情なのかは分からない。
だが、お勉強曰く足掻くことが重要なんだとか……手放すのが嫌なら、粘れとのこと。
──去る者は追わず来る者は拒まず、そんなものクソくらえ……手段は選ぶが、それでも俺にできることは何でもやろう。
◆ □ ◆ □ ◆
どうやら俺が居ない間に、さらに事は進展していたようで。
目を覚ました(ということになった)かぐやと共に、ある場所へ案内された。
「初めての者もいるな、改めて名乗ろうか。当代【魔王】、『黎明魔王』だ。今回の件、どうやら礼を言わねばならないようだ……まずは感謝を」
「こっちもお礼を言いたい。当代【勇者】、『魔剣勇者』だ。本当に、ありがとう!」
目の前に座る【魔王】、そして立ち上がって頭を下げる【勇者】。
……俺たちはなぜか、そんな二大巨頭にお礼を言われるのだった。
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