AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と愚者の狂想譚 その04



 □月■◇日。

 ■■族襲撃に関わった魔人の数は多い。
 多種多様な種族、奴らの中には『安寧』が欲しいとそれを求めた者もいる……そんなものがタダで手に入るわけがなかろうに。

 個人で参加した者、種族単位で参加した者などそれぞれに理由があると?

 ──ふざけるなよ、どんな大義名分があろうとそれが■■種が犠牲になっていい理由になるはずが無かろう!

 だが、今の俺は【魔王】。
 村の皆は願っていたのだ、俺が……■■種の運命を変えてくれると。

 すでに叶うことの無い願いだ、もう理解している。
 参加した者たちのうち、情状酌量のある者たちへの赦しが必要だ。

 罪そのものは、『安寧の魔結晶』の奪還と守護で相殺としなければならない。
 ……俺には『■■魔王』として、相応しい振る舞いが求められている。

  □   ◆   □   ◆   □

 魔族たちにも情状酌量の余地はある。
 だからこそ、俺は予め言っておいた──戦意を失った相手は狙わないようにと。


「うん、言葉って難しい♪」


 映像の内、外で魔物や魔族を相手にしている少女たちを映すモニター。
 そこで繰り広げられているそれは、紛れもない一方的な蹂躙だった。

 たとえばオーロラ髪の少女。
 剣に槍に弓にと、手にする銀色に輝く球体の形状を変えて戦っている。

 その切り替え速度は恐ろしいほど速く、またそれでも生まれる間隙は事前に待機していた魔法が補いカバー。

 結果的に誰も彼女の攻撃を阻めないまま、ただただ数だけが減っていく。
 ……ああ、どんどん指輪が光って、空に星が刻まれているよ。


「メル君、リラちゃんの所だけ星が綺麗に見えるのはどうして?」

「……僕があげた『星咲の指輪』の力だよ。魔力で撃ち出した星を繋げて、完成した物によって特別な効果が発揮されるんだ」

「…………あっ」

「うん、今回は『射手座サジタリアス』。効果範囲に居る相手すべてに星の矢が降り注ぐんだ」


 星座の設定は地球のものに合わせてある。
 こっちの世界だと、あまり星を繋げてどうこうという考えはあまり無かったのだ。

 なお、当然のことながらこの世界と地球とでは星の配置などもまったく異なる。
 そのため既存の星を使うのではなく、自らの魔力で人工的に星を生み出しているのだ。

 そんなこんなで、リラの居る場所に残されたのはもうほとんどが魔人族。
 降参を促すと、大規模殲滅を見たからか全員が武器を落とした。


「こっちは大丈夫だね。次は…………輝夜様の方なんだけど。こっちもこっちで、凄いことになってるや」

「えっと、あそこに行くために乗っていた貝だよね? あの光線は……」

「アレは『仏の御石の鉢』、充填した分だけ強力な土属性のレーザー……光線を放つことができるよ。多分、アレは一発目だからこれまでに溜めた分もあるんだろうね」


 彼女が上空から放つのは五大宝具のうちの一つ、『仏の御石の鉢』。
 宙に浮かべたそれを天に掲げ、そこから光が降り注いでいる。

 こちらは魔人族だろうが関係なく、容赦なく消し滅ぼしていた。
 ……輝夜様は基本、月の民以外を無意識的ナチュラルに蔑んでいるからな。

 まあ、急に面倒臭そうに地面へ降りると、貝の中からポーションを取り出して振り撒いている辺り、かぐやがどうにか説得して蘇生薬を使ってくれたのだろう。

 飛行装置である『燕の生んだ子安貝』は、同時にアイテムボックスの役割も果たす。
 どうやら今回作った蘇生薬は、そちらで利用されたようだな。


「こっちも鎮圧された……それじゃあ、最後にリアお姉ちゃんの方をっと」

「…………凄いね」

「うん、姫様の反応も良く分かるよ。アレはね、基本的に男の子だけが分かるロマンだから仕方ないんだ」


 リア──ターリアは本来『眠り姫』、あるいは『茨姫』の物語の主人公。
 故に昔プレゼントしたアイテムは、それらに関する物だった。

 ……しかし、現在彼女はそれらをいっさい使用せずに戦っている。
 使うのは自ら生み出した膨大な数の機械、無機物の塊が容赦なく敵を滅ぼしていた。

 ドローンや動物を模したロボット、他にはSFでありがちな球体状の浮遊体など。
 さまざまな機械が弾丸や光線を放ち、エセ科学の力を知らしめていた。

 その光景にシャルはただ一言。
 瞳を輝かせるでもなく、興奮するでもなくただあるがままに感想を述べた。

 うん、もっと効率がいい闘い方なんていくらでもあるのにな。
 だが! だがしかし! それでこそ、人はロマンと呼ぶのだ!


「メル君も……ああいうのが、好きなの?」

「好きかと言われれば好きだけど、特別興味があるわけじゃありませんよ? あくまで、リアお姉ちゃんは無かったからこそ、機械に嵌ったわけだし。僕からすれば、姫様のように精霊たちを操る方がよっぽど不思議です」

「そうかな? メル君と会ってからは、いつでも仲良くできるんだけど……」

「それも才能ですよ。学校で、それをお学びになったでしょう?」


 初等教育(+ファンタジー関係の教育)をうちの世界の学校で習っているシャル。
 自分の才能が天性のもので、たとえ森人でもそこまでできないと学んだ。

 もちろん、他のジャンルであれば眷属たちが個々でナンバーワンを示している。
 しかしながら、こと精霊を人族が統べることに関しては彼女が一番なのだ。


「……さて、これでとりあえずは──ッ!」

「ば、爆発!?」

「どうやら原因は、あそこみたいですね」


 じっくり観ていた三つのモニター。
 そして、四つ目のモニター……名探偵の居る場所こそが、事件の舞台だ。

 そこは村の中のはずなのに、どうして誰にも気づかれず爆発が起きたか──その真実を探偵が暴く(物理)!



コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品