AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と陣営イベント終篇 その09



 アルカと同等に成り得る存在──特級戦力の洗い出しを済ませ。
 その対策を練り、アンやナシェクと共に準備を終わらせる。

 そして、丸一日と少しが経過した。
 扉のカウントは『00:01』となっているが、誰一人油断をしていない……少しやり過ぎちゃったかな?

 ともあれ、殺気に満ちた表情を浮かべる彼らの前で、数字のカウントが『00:00』となる。

 門扉から幾何学な模様は失われ、代わりに全体が激しく揺れ動く。
 やがて扉自体が勝手に動き出し、その先への道を示す。


「『やぁやぁ、よく来たね。ぼくは君たちの来訪を十五分前・・・・ぐらいから待っていたよ』」


 ラスボス(笑)のイメージに合わせ、ナマイキそうなショタっぽい姿となった俺。
 もちろん、縛りはほとんど解除してあるので、大抵の攻撃では死なないが。

 十五分、それはカウントによって延長されていた数値。
 わざとらしくそれを強調したからか、彼らの殺気が余計強まった気がする。

 扉から俺の待つ玉座までは500mほど。
 声は『魔言』の応用で、魔力が届く限り伝わるようにしてあるため、そんな距離からでも叫ばずに声を送れる。

 だが、真面目に近づくのであれば当然時間が必要だ。
 ──だからこそ、ショートカットしようとするのも想定の内。


「一番槍、貰った!」

「槍を貰っても、殺せないとね」

「何──グハッ!」

「いやいや、転移で不意打ちってありえなくない? まあでも、使えることにすぐ気づいたのは及第点だよ。だ・け・ど、どうして使えるようにしているのかを考えないのは減点だよ、ザーコザーコ♪」


 おっと、なんだかメスっぽい感じで言ってしまっていた。
 気を引き締めて指を鳴らすと、四つの魔法陣から四天王(役の眷属)たちが出てくる。

 打ち合わせ通り、全員が傅いたのを確認してから観客の皆さまに説明を行う。


「扉やこの浮島の入り口同様、ぼくと戦いたいならまずは四天王を倒さないとね? あれれ、もしかして自分たちで倒せる程度に四天王が雑魚だと思ったの? そんなわけないよね、バッカみたい──『白熊』」

「ん」


 指示を受けた『白熊』もといスーが、有象無象に対して結界魔法を発動。
 挟み込むだけの“結界圧殺バリアプレス”という魔法だが、スーが使うと性能が段違い。

 レベル250も魔王候補も関係なく、ただただ粒子だけがそこには残り──消える。
 仲間や知人が居たのかもしれない、それを見た一部の者が叫びだす。


「あーあー、もううるさいなー。この程度で願いの魔法が欲しいとか、どんだけ烏滸がましいんだろうね。あーはい、じゃあこれからゲームをしまーす──『箱舟』」

「了解」

「いーっぱい出てくる魔物や魔人、頑張って対処してねー♪」


 召喚……否、召還陣を浮かべて大量の魔物たちをこの場に展開する『箱舟』ことノア。
 中には、人型の魔物も含まれるのだが……ここがポイント。

 分かる人以外は知らないので、ここで眷属が何人か混ざる。
 最大限の保険もあり、生身そのままというわけではないが──本気は出せるはずだ。


「『餓狼』、『病蛇』も頼むよ。頑張った分の報酬は、たっぷり用意してあるからね」

「おっ、マジか……どんな美味いものか今から楽しみだな」
「はいはーい、合点承知の助!」


 そんなこんなで、ラスボス(笑)はただ玉座で踏ん反り返るだけ。
 ──その背後から、ひょっこりと顔を出す子供になんて誰も気づきはしない。


「さて、ナシェク。僕たちも行くよ」

『……それ、どうなっているんですか?』

「まあ」「行動を」「している」
「要は」「並列で」「だけだよ」


 ノゾム姿の俺とショタボス(適当)姿の俺が同時に存在し、並列した意識を持っているのだが……イメージ的には、独りで2Pキャラ操作しているだけ。

 ただし、ショタボスの方は自動展開のスキルをかなり多用している。
 なのでもう片方のコントロールに、専念していられるというわけだ。

 もちろん、二人も強キャラは不要なので、ノゾムの方は獲得したスキルしか使えない仕様ではあるが。


「そうだ、バフよろしく」
「オーケー──“全能強化・不明アンノウンブースト”」


 自分で自分にバフを施し、縛り状態でも充分に戦えるようにしておく。
 対人戦でしか得られないスキルもあるし、こういうときに稼いでおかないとな。


「──『純無の天鎧』!」

『武器はどうするのですか?』

「こうする──ドゥル、剣頂戴! 対人戦に向いているヤツ!」

《仰せのままに、我が王──『無慰の短剣』でよろしいでしょうか?》

「カモンッ!」


 ノリノリで答えると、俺の手に収まる二振りの真っ黒な短剣。
 そう、これはたしか……[エニアグラム]の裏方メンバーに売ったヤツだな。

 自分で創った武器なので、その扱いに関しても思い出せばちゃんと振るえた。
 軽く振り回して体で感覚を理解し、戦場を駆ける。


《効果は刺突時のエフェクト抑制。暗殺に向いた品でしょう》

「まあ、こんな派手な鎧を身に着ける暗殺者はそう居ないだろうけど……ねぇ、これって色変えられないの?」

『変えられません!』


 怒られてしまったようだ。
 それでも、最初は許可していなかった鎧を使わせてもらっている以上、感謝しないといけないな。

 その身を天使様に守ってもらえるありがたみを感じながら、周囲に居る人々へ短剣を振るうのだった。



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