AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と陣営イベント終篇 その08
自称ラスボス(笑)が始めた扉防衛線。
攻めてくる魔物が扉に当たるほど、次のステージに入れる時間が遅くなるという嫌がらせでしかない仕掛け。
なお、扉の前で魔法や武技を使うと勝手にカウントが増える。
ついでに言うと、扉を防ぐのと同時に回復行為ができないよう付近での魔法もアウト。
なのでこの防衛線、ある意味防ぐのは扉と負傷者の両方となる。
確実に丸一日、そしてプラスαで時間を稼げるという作戦だった。
「……なんと悪辣な」
「そうか? アレだけの数が居るんだから、少しぐらい頑張ってほしいだけだぞ。ほら、ラスボスは独りなのに挑む奴らはたくさん。弱体化させたり、間引きしたりしたっていいと思わないか?」
「それは……まあ、たしかに」
「勝てば官軍負ければ賊軍。地球にあった言葉だが、ミコトさんは似たようなことを言ったことが無かったか?」
うん、目を逸らすあたり、知っていたし実際に行ったこともあるのだろうな。
戦いは数、だからこそそれを如何にして対処するのかが重要になる。
個人戦であれば、俺も決して負けない。
だが、複数となると……個有スキルやら極級職の組み合わせなどによって、俺を殺せるだけのナニカが生まれる場合がある。
例えば『選ばれし者』などの最上位戦力、そしてアルカなどの特級戦力。
特に、眷属の対応が必須な特級戦力がどれくらいいるのかまだ分からない。
このイベントエリアだと、まだ有用そうな願いの産物の持ち主が該当するだろう。
使えるからこそ持ち出された、そのことを忘れてはいけない。
「俺は負けたくない。俺の敗北は、眷属たちにとって致命的な隙になる。最悪、その後暴走してこの島を丸ごと破壊する眷属も出かねないからな」
「そんな大げさな……」
「いえいえ、大袈裟ではありませんよ。少なくともわたしは、メルス様の安全を確保した後、この地に住まう何もかもを滅ぼし尽くしてでも原因を根絶しますので」
「え、えぇ……」
ナシェクは引いているが、まあ眷属がやられる立場だったなら俺もそうするかな。
もちろん、そうならないよう保険は重ねているものの、世の中に絶対は無い。
ともあれ、確実にできることとして今回は敵の戦力を減らして探る方法に打って出た。
一人でも多く、切り札になり得る技などを使ってくれると助かります。
「……で、アン。特級戦力のピックアップは済んでいるか?」
「アルカ様に比肩するとなると、皆無です。しかし、何やら特異な能力……あるいはメルス様や眷属に届きうる能力などであれば、いくつか確認できています」
「! そう、それ。黄金にする右手も持ち込まれているだろうし、油断はできないぞ」
なお、魔族か魔物が持っているであろうその遺産だが、まだ持ち主は不明だ。
あるいは、辿り着く過程で誰かに奪われたという可能性も無いわけではない。
扉の前で防衛を行う者たちの中から、アンが何人かをピックアップしてくれる。
正確には三人と一体、さらに言うと人族が二人と魔族が一人、魔物が一体だ。
「一人目は祈念者ですね、どうやら固有スキルと超級職の持ち主のようです。推測される能力はデバフの強制付与、最悪の場合は即死が付与されます」
「すぐにリーに連絡、【神呪魔法】でどうにかできないかを考えてもらってくれ。まあ、こういうヤツはだいたい死亡時に相手も殺す能力を持っている。その辺りを重点的に」
「畏まりました。二人目は自由民、上級職のようですがあの剣が異様です。確認したところ、切断後は核のみが斬られていました」
「切り捨て選択が可能ってことなんだろう。初期型だったとしても、持ち主の腕前さえあればどうとでもなるタイプだな。うん、これはティル師匠にお任せで」
自由民の方はどうとでもなる。
攻撃を全回避すれば意味など無いし、何かしらの法則性があるならばティルが何となくで見抜く。
問題は祈念者の方だ。
デバフの強制付与、模倣すればとりあえず絡繰りは分かるだろうが、分かったうえで防げないケースだったら最悪である。
そうなったら、もう何もさせないでご対応願うしかない。
死なば諸共システムがあると厄介だし、殺さないように対応するのが一番か?
「三人目も魔族の自由民、こちらは遺産の力かかなり厄介です。周囲に敵対する存在が居れば居るほど強くなります。少なくとも、劣る状態になったタイミングはございません」
「……周囲の能力値に比例した強化、あるいは単純に敵対者が多ければ多いほど強くなるみたいな能力か? たしかに、この状況だと不味いな。分断……もしくは能力値に頼らない戦い方ができる眷属に助力を依頼だ」
「では、そのように。四人目、あるいは四体目も遺産を持つ個体です。こちらはすでに共食いを行っているのか、純粋な性能が高いものです。推測される能力は────」
「……これも不味いか。まあ、魔物なら最悪デュラハンにぶつけよう。アン、とりあえず纏まった情報を送っておいてくれ」
当然、アルカへの対策も一度目とは違う形で用意しなければならない。
……さてさて、眷属に本気を出させてくれる相手がどれほどいるのやら。
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