AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と大規模レイド後篇 その14
錬金術師の隠し部屋は、罠の仕掛けを解除したうえで再び起動すると開くらしい。
周囲に罠が溢れた場所で、誰かが開いたお陰で開通した道を通りながら調べた。
その先にはそこまで広くはない空間と、多くの資料が溢れている。
祈念者が何人かすでに来ており、キメラ種の弱点に繋がる情報は無いか調査していた。
「それで、これからどうする?」
「とりあえず、私たちも資料を読ませていただきましょう。ただ、祈念者の方々の邪魔をしてはいけませんので……頼めますか?」
「了解っと」
一時的にレンタルし、まず時魔法でここいらの時間を停める。
その間に資料を掻き集め、すべてに目を通してからそれらを元の場所に戻しておく。
あとは解除して、何食わぬ顔でここから出ていけばいい。
大切な情報は記憶した、あとは紙を用意して転写すれば──複製の完成だ。
元より、姿は認識できないようにスキルを使っていたからな。
バレていないようだし、そもそも気づけるような人材は今なお戦闘中だろう。
「ほいっ、これで全部だと思う。いつまでもここに居ると定員オーバーになりかねん。早めに退散しよう」
「そうですね」
「畏まりました」
というわけで、さっさと移動。
部屋を出るまでの道中でも、駆け足でこちらに来る祈念者と何人かすれ違ったので、その選択は間違っていなかった。
リュシルは歩きながらも、複写した資料に目を通している。
危険ではあるが、そこは女中の心得を学んだマシューが居るので問題ないだろう。
「──新しい情報は少ないですね。やはり、作った本人も錬金術に弱いことは記しています。その脆弱性を突いたからこそ、今回のキメラ種が誕生したようなので、対策は講じていませんでした」
「それは良い情報だな。で、例の牙をどこから手に入れたのか、みたいな情報は?」
「……今のところ、確認できません。少なくとも、この地で見つけたというわけではないようです」
「まあ、アイ曰く『万蝕』が動くのは超ヤバい生き物が発生したときだけらしいし。ここにそんなヤツが発生していたら、もっと過酷な環境になっていただろうさ」
該当するのはやはり『災凶種』だろうか。
環境すら歪める彼の魔物たちであれば、出動条件を満たしていてもおかしくない。
この大陸で言えば、最北の地だったり大砂海辺りには強力な魔物が生息している(た)という情報があるので、そのどちらかなら、まだ落ちていたという可能性もあるな。
なんて考察をしていれば、更なる情報を見つけてくれる。
目を通しただけで、俺にはそれを理解するお頭が足りないからな……虚しいけど。
「日記のようなモノがありました。偶然、裏ルートで手に入ったとのことです。もともとは真面目な錬金術師としてそれなりに金銭は得ていたようですが、これを機に力の魅力に憑りつかれたようですね」
「……ああ、途中からそういえば変な感じになっていたけど、そういうことだったのか。その原因が『万蝕』だったと。ちなみに、それってだいたいいつ頃の話だ?」
「日付が無いのですが……おそらく、約十年ほど前かと」
「十年前……ってなると、祈念者は関わっていないか? あっ、でも、α版とかβ版なら何かあるのかも」
俺はテスターにはなれなかったし、彼らが何をしていたかという情報は極めて少ない。
守秘義務なのか、別の理由かは知らないけども、全然回ってこないんだよな。
GMたちによれば、有ったこと自体は間違いないらしいけども。
その頃は直接運営神が観ていたらしく、詳細は不明だ。
「……考えても仕方ないか。リュシル、その先で気になることは?」
「弱点らしい弱点はありませんね。やはり、当初の予定通り母体から成るネットワークの断絶が一番の方法かと。人型に関してもそうですが、自己進化の速度が凄まじいです」
「人型の誕生に関して、錬金術師は関わっていない……あくまでも進化の果てに辿り着いた、ってことでいいのか?」
「おそらくは。人族が使う技術も取り込んでいますし、大抵の魔物を一捻りするようになることは間違いありません」
幸いにして、まだ職業システムの恩恵にはあやかっていないみたいだが……どこかの街が潰され、『転進の翠晶』に触れられれば、そのシステムも流用されるだろう。
無限に進化を続けるキメラ種。
本来あるはずの枷は、『超越種』の牙により噛み千切られている。
創造者はすでに死に、技術的に止める者は誰も存在しない。
物理的に食い止めようとする現在も、自己進化によって抗い続けている。
「……物凄く状況が面倒になっているのはよく分かったよ。マシュー、最前線の方は今どうなっているんだ?」
「確認します──現在、『選ばれし者』であるエクラを中心に母体との戦闘を開始。人型が多く出る中、祈念者も必死に抵抗。窮地に陥りますが、その都度『選ばれし者』が追加で参戦。持ちこたえています」
「……なっ、リュシル。世の中、誰かに都合良くなっているんだよ」
「否定したいですが、現状が物語っているみたいですね……これがメルスさんの世界で言うところの『ご都合主義』なんですか」
増えたのは赤髪、緑髪、黒髪──そして、青髪だそうで。
……オー嬢さん、いつの間にここに来ていたんですかい。
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