AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と大規模レイド中篇 その13



 それなりにレベルは上がっていた。
 しかし、この縛りプレイにあんまり高いレベルは要らない……ほら、少年の見た目なのに強すぎるのもアレだしな。


「というわけで、レベルもポイントとして捧げられるようにしてくださいな」

《せっかく転生や進化を選ばせ、誰の種族にするかで激しい闘争を繰り広げる予定だったのですが……よろしいのですか?》

「それを聞いて、僕がやっぱり無しでなんて言うわけないでしょ。ほら、お願い♪」

《くっ、ころころと表情を変えたって屈したりしないんだから》


 相変わらずのアンによる(おそらく)無表情無抑揚での『くっころ』を聞いていると、システムに新しくレベルを捧げる画面が表示される。

 正しくはレベルではなく経験値、これならどれだけレベルを下げても等しい変換量だ。
 今のレベルはなんと200、正直キメラ狩りを頑張り過ぎた感はする。

 それらを一気に……は怖いので、100ぐらい変換に回す。
 レベル100もあれば、普通なら進化もできるので問題ないだろう。


「ねぇアン、今さらだけどレベルは貸与と交換とどっちなの?」

《交換ですね。そのため、ポイントはスキル封印とは別枠で。そして少々お高めでのご購入となっております》

「道理で、さっきよりも数字の桁数が跳ね上がっているわけだよ。うん、まあそれでも別にいいんだけどさ」

《なお、スキルの場合、表示されるのはすべてメルス様が熟練度を1でも獲得できたモノのみとさせていただいております。上げては下げてを繰り返し、チートスキルを獲得という流れにはなりませんのでご了承を》


 ……全然ご了承したくなかったが、泣く泣く諦める。
 つまり、少しでも俺に獲得のチャンスが無ければ無理というわけだ。

 俺の初期を支えてくれた、超絶チートたる経験値ブーストの{感情}シリーズ。
 内包される<美徳>と<大罪>(あと<正義>)のスキルは、本来俺に資格など無い。

 なので、彼女の設定通りになれば、俺がそれらのスキルを得る可能性は未来永劫失われるわけだ……貸与の方を確認したが、そちらもそちらでポイントが破格過ぎたよ。


「……ま、まだだ、それでもきっといいスキルがあるはずなんだ。どこかに……どこかに当たりが──あった!」


 それを見つけたとき、思い出したのは過去の出来事。
 それは才能の差を、凡人と天才はやはり違うのだと目に見えて証明されたとき。

 だが、ある意味では布石だったのかもしれない……すべてこのとき、ほんの一時でも悦びを得るための。


「鑑定スキル、ゲットだぜ!」

《……言ってもよろしいでしょうか?》

「えっ? そもそも才能があればとっくに習得していたし、地道に頑張れば熟練度的に習得できたかもしれない……って意見以外なら聞くけど?」

《うぅ……御労しやメルス様。ニィナ様との才能の差だけでなく、努力の差までここまで開きがあるとは……》


 まったく以って否定できない言葉に、正直土下座をしたくなる。
 二ィナは俺と縛りプレイをしていないときでも、さまざまな努力をしていた。

 今は他の幼少の眷属たちと学校に通っているが、そちらでも力を蓄えているだろう。
 だが俺といえば、まだまだ研鑽が足りていない……精進しないとな。

 ともあれ、久しぶりに鑑定スキルを得ることができた。
 普通の奴なら、レベルを100も下げるという代償なんて支払わないだろうけど。


「“鑑定”×100っと……対象が多いから一気にレベルを上げられるな」


 一度鑑定したモノを視ても、一定期間は経験値が貰えない鑑定。
 だが逆に言えば、違うなら大量に鑑定するだけで育てることができるということ。

 キメラ種は大まかに言えば『合成獣』なのだが、内包する因子の違いで異なる存在として表示される。

 そして今回のキメラ種は、ワールドワイドに魔物の性質を集めた超ミックスなキメラ。
 文字通り、千差万別なキメラ種たちに溢れているわけで……ボーナスタイムである。

 なお、俺の現在座標は空の上、鑑定も使うと減る魔力はどんどん増えてしまう。
 おまけに一定の格があるキメラ種は、鑑定されたことに気づいている。


「そうしたらこうなるよね……ディー!」

『ピー♪』

「今の僕は一気に弱くなったから、今は君に頼むよ──“光速転下マッハディスプレイス”!」

『ピーーーッ♪』


 光魔法“光速転下”。
 文字通り光の速さで進むことを目指したオリジナル魔法を、ディーに施す。

 ディーもまた、その姿をスズメほどのサイズから俺でも乗れる巨鳥に変える。
 乗り心地は……気にしている暇が無いので諦め、身体強化などで耐える準備を行う。


「一気に飛んで──GO!」

『ピーーーッ♪』


 あえて地上スレスレを飛ぶディー、その衝撃波はキメラ種を吹き飛ばしていく。
 祈念者たちから離れた場所でやっているので、被害は……あっ、最小になってます。

 限りなく少ない、だがゼロではない被害者たちに弔いの念を送りながら、彼らからも貰えたであろう経験値に内心ウハウハな俺。

 うん、仕方のないことなんだよ。
 だからお願いします、このタイミングで新スキル獲得は無しで!


《──スキル:人族殺し、辻斬を獲得しました。ちなみに後者は、ディー様の速度が光速なので体が切り離された者いるからです》

「……Oh!」

『ピー?』


 残酷なアナウンスをされ、ディーの上で土下座をしてしまう。
 嗚呼、どうしてこういうスキルに限って習得が速いのだろうか。



コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品