AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と大規模レイド直前 その03
ネイロ王国
第三世界であるルーンは、ネイロ王国の十年前を写し取った場所だ。
運営神により、実験場となった過去の世界だが……それを俺は奪い取った。
以降、細々とではあるがネイロ王国とも交流をしている。
過去の世界での経験は、こちらにも与えられているため……無関係では無いのだ。
「──というわけで、こっちにも援軍を出す予定です。不要ですか?」
「……いきなり来て、急な宣言だね。でも、貴重なSランク冒険者の関係者だ。頼もしいだろうね」
突然訪れ、話を付けたのは冒険ギルドの長であるアーチさん。
十年前から変わらない容姿を保ち、今なおトップに君臨できるだけの力を持つ。
そんな彼が主導するこの街の冒険者たちだけでも、今回の大規模レイドには耐えられないだろう……彼自身そう察しているので、俺の提案をあっさりと受けた。
「可能であれば、その人にはこの街の所属になってほしいけど……無理だろうね」
「ある意味可能ですけどね。ただ、記録は十年前のものでしょうけど」
「……さすがにそれじゃあね。仕方ない、助けが来るだけで諦めておこう。ただ、話を付けておきたいのはそれだけじゃないね」
「はい、そうですね。こちらも人材はタダではありませんので、可能な限り詰めさせていただきますよ」
信頼できる相手ではあるが、これまでと違いここではあくまでビジネスを行う。
実際、冒険者として働くのであれば、相応の依頼料と報酬が必要になるわけだし。
結論から言ってしまえば、金の方はいっさい受け取らないことに。
代わりに、依頼中に得たアイテムで欲しい物があれば優先的に頂くことになった。
「本当にこれだけでいいのかい?」
「あとは情報の洩れを抑えてくれれば充分ですよ。あっ、こちらはそのほんのお礼です」
「こ、これは……!」
「つい先日、こちらの世界のアーチさんが撮影したものです。貴方のやる気が出るようにと……ついでに、交換したいとも言外に言っておりました」
交渉材料として、彼らの娘さんであるリルちゃんの写真を一枚。
この世界に生きるアーチさんからすれば、失われた幼少期の輝かしい写真だからな。
逆に、過去のアーチさんからすれば、今のリルちゃんの写真は未来を写し取ったもの。
互いに利のある話なわけで……この交渉は先ほど以上に苛烈なモノとなった。
◆ □ ◆ □ ◆
シャッゴン大洞穴 山人の隠れ里
かつて、攻城戦イベントの際にフィールドのみを複製したこの場を訪れている。
そこは『選ばれし者』の一人、狐人の少年スオーロが守護する地だった。
いちおう縁がある場所なので、ここにも派遣をするのかどうか確認を取ることに。
なお、当然山人たちに驚かれたが、事前に話は少年が通してくれていたようだ。
「まさか、本当に偽善者って名乗ったら入れてもらえるとは……コネとは恐ろしい!」
「それって、スオーロって子がちゃんとしているからじゃないの?」
「おいおい、そんな当たり前なこと言わないでくれよ。まあ、気になったのは俺に爛々とした目を向けていたことだよな……そっちの気でもあるのか?」
「……お酒目当てでしょ、アレは」
洞窟から続く隠れ里の中でも、トランプ柄のドレスを纏う少女。
ストロベリーブロンドの髪が映える彼女にツッコミを受けながら、里の奥へと向かう。
「アリィ的に、ここって防衛は要らないと思うんだけど……」
「普通ならな。けど、『選ばれし者』が守護しているって文句があるから、それなりに攻めてくるとは思う。ついでに言うと、定住しているのは彼だけだから、マジで面倒なのが来るかも」
「……アリィ、面倒になってきたかも」
「けどまあ、そんな時こそアリィの出番だ。理不尽だろうが何だろうが、アリィの力で一発KO! 期待してますよ、本当に」
そう言うと、少しだけ頬を赤らめる。
だが、その顔は一瞬伏せられたと思えば、冷静沈着な素面になっていた。
「あんまりアリィを煽てないでちょうだい。フォローをするアリスの身にもなって」
「身はどっちも同じだけどな。いっそのこと二人には、別々の場所を担当してもらうってのもいいアイデアじゃないか? 自立を図れるかもな」
「必要な時ならするけど、普通は自立できないものだから結構よ。アリィがそうしたいならともかく、こういうときのためにアリスは居るんだから」
アリィとアリス、二人は共存している。
そもそもアリスという存在が、アリィの求めた理想の自分であり、それをスキルが人格として生みだしたのが発端。
俺はそんなアリスの人格に肉体を与え、武具っ娘たち同様に顕在化を可能とさせた。
とはいえ、武具っ娘と違い彼女はアリィの専属、あくまで彼女のサポート役だ。
「スオーロへの対応は……たしか魔王(笑)だったな。アリィとアリスはどういう設定で行くか?」
「決める必要あるかしら?」
《はいはい、冷淡な四天王の一人で!》
「アリィには無理そうだな、それ。ついでに言うと、リッカがそれっぽいことをもうしていたぞ」
「えー、じゃあどうしよう」
《だから、しなくていいわよ別に》
主導権を譲り合い、もう片方が念話で自身の意見を主張する二人。
ごく自然に言葉を交わす姿に、ほっこりとする俺だった。
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