AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と渡航イベント後篇 その16
カナの心を折るため(マイルド)に、俺は色んな工夫を重ねている。
従魔を一体ずつ減らし、追い詰めれば何かある……そう思っているんだけどな。
だんだん、口数が減っていると思う。
とはいえまだ目は諦めていないし、憎悪系の想いは抱いていない……それは彼女が純粋だからかもな。
ある意味シャインの時と似ているが、彼女に恨みがあるわけではない。
それはそれで問題な気もするが、なんというか……うん、悪いが俺のわがままだ。
思いついた方法を、可能な限り試してみることに。
というわけで、まずはこちら。
「手始めに──“空間開扉”」
『な、なに!?』
「カナよ、気張れよ。これから貴様の相手をするのは、俺ほど甘くはない」
『カナ、すぐに逃げて! コイツは──間違いなくユニーク種よ!』
俺が開いた空間の扉は、結びつきを経由して指定した座標へと繋がっている。
どうやらまだ生きていたようだ……奴はすぐさま、扉を潜ってこちらに現れた。
蒼と黒で彩られた、夜鷹。
雨の降る暗い世界を、より昏く染め上げるように大空を飛び交う。
「『掃壊蒼鷆[アズルジャア]』、大量破壊に特化したユニーク種だ。そして、その中には装備品も含まれる……退場だけは保証してやるが、それ以外は容赦なく行うと思え」
『くるわよ!』
「っ……!」
「これまでの成果を見せよ──やれ」
指示を受け、[アズルジャア]は動く。
鳴き声を上げると、勢いよくカナに向けて突っ込んでいった。
カナは鞭を振る……わず、魔法での攻撃に専念する。
装備破壊、それが鞭に宿る木精霊にどう影響が出るのかを恐れているのだろう。
俺の言葉を信じていないのか、信じていても破壊されることは忌避しているのか。
いずれにせよ、直接攻撃はしないで遠距離から攻撃に専念している。
「[アズルジャア]は自動回復する能力を有している。多少の攻撃では、いつまだ経っても終わらんぞ!」
『ど、どうするの!? と、とりあえずまほうではんげきするけど……えっ? わ、りょうかいだわ!』
カナの指示を聞いたのか、コルナの動きがより洗練されていく。
闇雲に放っていた魔法に緩急を付け、着実に攻撃を当て始める。
それでも、受けた分のダメージは自動回復していく。
そう、[アズルジャア]は条件を満たせば無尽蔵に近い回復を行うことができる。
「そしてそれは、たとえタネが分かろうとどうしようもできない。この場で、カナが諦めぬ限り……この悪夢は終わらない」
「っ……!」
「装備が一つ、外れたか……強制的に初期装備に還元されるから、そこら辺は気にせずとも構わんぞ」
何でも壊す[アズルジャア]の攻撃を、少しずつ浴びていたカナ。
耐久力がゆっくりと削られていき……手袋のようなアイテムが破壊された。
そこにも鞭と同じように、何かが宿っていたようだが……破壊の効果が伝播し、すぐに粒子となってしまう。
俺がすぐに[概念再成]で復元し、死亡することを阻止する。
小さな動物みたいな従魔だったが……装備全部に居るとなると、相当時間が掛かるな。
「これ以上、まだやるのか? 俺としては、その尻尾もいい加減切り裂いてもいいがな」
「…………」
『カナ……』
「させません。魔王さん、貴方のしたいことが分かりません……それでも、わたしには勝たなければならない理由があります!」
やはり、心は折れていなかったか。
まだ残されたナニカに希望を持って、俺に何らかの手段で勝とうとしている……それが直接俺に勝つものなのかどうかは謎だが。
世の中、武力に優れた者が頂点に立つというわけではない。
ありとあらゆる手段を用い、周囲に負けを認めさせた奴が勝利になるわけだ。
……あっ、死ぬ奴とかも居るし、ソイツらの場合は死人に口無しってことで敗北だな。
「ならば、力を示せ。[アズルジャア]、全力でぶち壊せ」
『キョキョキョキョキョ!』
『な、なんなの……?』
「奴の能力は、すべてを壊す。そして、無尽蔵の回復は海……そして夜によるもの。長い戦いだった、そして夜が始まる。条件は満たされた──狩りの幕開けだ」
夜鷹は翼を広げ、けたたましく鳴く。
その声に呼応して、海が荒れ狂い夜の色がさらに昏いものへ。
その色は周囲を汚染し、俺とカナを包み込み結界を構築する。
逃げ場などない、鳥は狩られるだけではなく狩るものだと証明するように。
「カナ、改めて問おう。俺に負けたことを認めて、軍門に下れ。そうだな……貴様の望んでいたことを、叶えてやらんこともないぞ」
「わたし……怒っています。魔王さん、ここまでする必要がありましたか? いいえ、仮にあったとしても関係ありません。みんなが受けた痛み、それはわたしの責任です。なんとしても、魔王さんに報います!」
「ふっ……はははははっ! そう、それなのだよカナ! 心を出せ、思いを吐け、想いを叫べ! 貴様は優しい、優しすぎるほどに。俺の配下にそんな奴は不要だ、ありのままを告げられる奴を俺は求めていた!」
『そ、それだけのために……やっぱり、おかしいわよアイツ』
何か言われているが、別に構わない。
俺にとって問題なのは、俺以上の善人を直視しなければいけなかったこと……偽善者にそれは、あまりに酷だろう。
だからこそ、止めさせた……止めさせようとしている。
少しずつ着実に事は進んでいる──その想いが折れた時、望むモノが手に入るだろう。
従魔を一体ずつ減らし、追い詰めれば何かある……そう思っているんだけどな。
だんだん、口数が減っていると思う。
とはいえまだ目は諦めていないし、憎悪系の想いは抱いていない……それは彼女が純粋だからかもな。
ある意味シャインの時と似ているが、彼女に恨みがあるわけではない。
それはそれで問題な気もするが、なんというか……うん、悪いが俺のわがままだ。
思いついた方法を、可能な限り試してみることに。
というわけで、まずはこちら。
「手始めに──“空間開扉”」
『な、なに!?』
「カナよ、気張れよ。これから貴様の相手をするのは、俺ほど甘くはない」
『カナ、すぐに逃げて! コイツは──間違いなくユニーク種よ!』
俺が開いた空間の扉は、結びつきを経由して指定した座標へと繋がっている。
どうやらまだ生きていたようだ……奴はすぐさま、扉を潜ってこちらに現れた。
蒼と黒で彩られた、夜鷹。
雨の降る暗い世界を、より昏く染め上げるように大空を飛び交う。
「『掃壊蒼鷆[アズルジャア]』、大量破壊に特化したユニーク種だ。そして、その中には装備品も含まれる……退場だけは保証してやるが、それ以外は容赦なく行うと思え」
『くるわよ!』
「っ……!」
「これまでの成果を見せよ──やれ」
指示を受け、[アズルジャア]は動く。
鳴き声を上げると、勢いよくカナに向けて突っ込んでいった。
カナは鞭を振る……わず、魔法での攻撃に専念する。
装備破壊、それが鞭に宿る木精霊にどう影響が出るのかを恐れているのだろう。
俺の言葉を信じていないのか、信じていても破壊されることは忌避しているのか。
いずれにせよ、直接攻撃はしないで遠距離から攻撃に専念している。
「[アズルジャア]は自動回復する能力を有している。多少の攻撃では、いつまだ経っても終わらんぞ!」
『ど、どうするの!? と、とりあえずまほうではんげきするけど……えっ? わ、りょうかいだわ!』
カナの指示を聞いたのか、コルナの動きがより洗練されていく。
闇雲に放っていた魔法に緩急を付け、着実に攻撃を当て始める。
それでも、受けた分のダメージは自動回復していく。
そう、[アズルジャア]は条件を満たせば無尽蔵に近い回復を行うことができる。
「そしてそれは、たとえタネが分かろうとどうしようもできない。この場で、カナが諦めぬ限り……この悪夢は終わらない」
「っ……!」
「装備が一つ、外れたか……強制的に初期装備に還元されるから、そこら辺は気にせずとも構わんぞ」
何でも壊す[アズルジャア]の攻撃を、少しずつ浴びていたカナ。
耐久力がゆっくりと削られていき……手袋のようなアイテムが破壊された。
そこにも鞭と同じように、何かが宿っていたようだが……破壊の効果が伝播し、すぐに粒子となってしまう。
俺がすぐに[概念再成]で復元し、死亡することを阻止する。
小さな動物みたいな従魔だったが……装備全部に居るとなると、相当時間が掛かるな。
「これ以上、まだやるのか? 俺としては、その尻尾もいい加減切り裂いてもいいがな」
「…………」
『カナ……』
「させません。魔王さん、貴方のしたいことが分かりません……それでも、わたしには勝たなければならない理由があります!」
やはり、心は折れていなかったか。
まだ残されたナニカに希望を持って、俺に何らかの手段で勝とうとしている……それが直接俺に勝つものなのかどうかは謎だが。
世の中、武力に優れた者が頂点に立つというわけではない。
ありとあらゆる手段を用い、周囲に負けを認めさせた奴が勝利になるわけだ。
……あっ、死ぬ奴とかも居るし、ソイツらの場合は死人に口無しってことで敗北だな。
「ならば、力を示せ。[アズルジャア]、全力でぶち壊せ」
『キョキョキョキョキョ!』
『な、なんなの……?』
「奴の能力は、すべてを壊す。そして、無尽蔵の回復は海……そして夜によるもの。長い戦いだった、そして夜が始まる。条件は満たされた──狩りの幕開けだ」
夜鷹は翼を広げ、けたたましく鳴く。
その声に呼応して、海が荒れ狂い夜の色がさらに昏いものへ。
その色は周囲を汚染し、俺とカナを包み込み結界を構築する。
逃げ場などない、鳥は狩られるだけではなく狩るものだと証明するように。
「カナ、改めて問おう。俺に負けたことを認めて、軍門に下れ。そうだな……貴様の望んでいたことを、叶えてやらんこともないぞ」
「わたし……怒っています。魔王さん、ここまでする必要がありましたか? いいえ、仮にあったとしても関係ありません。みんなが受けた痛み、それはわたしの責任です。なんとしても、魔王さんに報います!」
「ふっ……はははははっ! そう、それなのだよカナ! 心を出せ、思いを吐け、想いを叫べ! 貴様は優しい、優しすぎるほどに。俺の配下にそんな奴は不要だ、ありのままを告げられる奴を俺は求めていた!」
『そ、それだけのために……やっぱり、おかしいわよアイツ』
何か言われているが、別に構わない。
俺にとって問題なのは、俺以上の善人を直視しなければいけなかったこと……偽善者にそれは、あまりに酷だろう。
だからこそ、止めさせた……止めさせようとしている。
少しずつ着実に事は進んでいる──その想いが折れた時、望むモノが手に入るだろう。
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