AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と渡航イベント前篇 その09



 ──宇宙兵装は、絶対に惑星内部で使ってはいけません。

 そもそも外と中、規模も範囲もまったく異なるのだ。
 宇宙なんて規格外れな場所で生存するためならば、それ相応の力が必要になる。

 だがそんな宇宙用の武器にも、格や順位付けができるだろう。
 そして、ノアが使用しているのは『宙艦』の──最強スペリオルシリーズの一柱が用いていた武器。


「ちゃんと考える時間さえあれば、いちおうこうして納得はできる……できるけど、いろいろと思うところはあるな」


 これが『超越種』の力。
 もしこれ、祈念者が部品の一つでも手に入れたら大変なことになるんじゃ……たぶん、国とか軽く破壊できそうだぞ。


《ノア、これって砲弾を撃ちだす部品があれば誰でもできるのか?》

《いいや。砲台、砲弾生成ユニット、そしてエネルギー生成・精製機関。一発切りならユニットは不要だけど、それでも先ほどの威力が欲しいなら最低限これが必要だね》


 念話で確認すると、そんな答えが返ってくる……たしか、『超越譚:宙艦』にはクエスト達成で通常手に入るパーツは一つだった。

 つまり、最低でも三回は回らないとアレはできないわけだ。
 他の部品で補おうにも、同じ規格じゃないとスペックが落ちる場合もあるからな。

 スペックが落ちるというか、揃えたからこそボーナス補正があるというか。
 いずれにせよ、とりあえず国落としの可能性が無いということで安堵しておこう。


「さて、ノアに焼き払ってもらったが……通知は入らないな」


 先ほどの砲撃で一面が焦土と化したが、それでも守護者は倒せていないらしい。
 もし倒せていたのなら、その旨が通知されているわけだし。


「となると、こんな状態になっても生き残れるようなヤツ……あるいは、そもそもまだどこかに潜んでいるかだな──仕方ないか」

《……まだやるのかい?》

「まだ試してなかっただろう? この迷宮の中で、試しておくべきだ。実際に使うとき、想定外でしたーなんて言えないだろ」

《……了解だよ》


 その日、俺は世界の終わりになり得る可能性を観測した。
 地が砕け、海が渇き、空が紅に染まる……破壊とはこういうものか、そう学んだ。

 だがここは迷宮、一種の亜空間。
 ここで起きた事象は、外部へ漏れることなくこの場所だけで完結する。


「──通知が入ったぞ」

《本当かい? いったいどこに隠れていたのやら……》

「さあな。それはまた別の機会に調べておくから、もう帰還していいぞ」

《しばらくは、消耗した分を補うことになりそうだ。それじゃあ、またどこかで》


 迷宮のボスは、どうやら地中奥深くに隠れ潜んでいたらしい。
 本来のギミックとしては、先に祈念者がすべての綿を回収する必要があったようだ。

 すると栄養が確保できなくなり、浮上してきたボスと戦闘することになる。
 勝っても負けても、綿は再配置されて全部無くなるまで再戦はできなくなる仕組みだ。

 今回はすべてを消し去ったうえ、地面も削り取る火力で殲滅したことで出現させた。
 そのうえでさらに海が干上がるレベルの攻撃をして、空を塗り潰す火力を使う。

 その結果、守護者はある意味日の目を見ることなく討伐された。
 この方法は……まあおそらく、もう使えないだろうな。

 ノアの貰ったパーツは劣化版なので、本家より使い勝手は良くない。
 たとえ全部コンプリートしていても、敵わないように設計されている。

 それに関する説明も載っていたのだが、たとえ同威力が出せている部分も再使用時間とかが長く設定されているようだ。

 ──最低一ヶ月、ノアの全力を使いたいなら必要らしい。


  ◆   □   ◆   □   ◆

 海湾都市


 一度、クランメンバーたちがどうなっているのかを確かめてみることに。
 訪れた街の中を散策してみると……なぜかまだ、祈念者たちが錯綜している。


「まだ船を造ってもらっていないのか?」


 従魔を使って情報収集をしてみると、俺の予想は正解だった。
 どうやら造船ドックやら船大工の問題で、まだどこもできていないらしい。

 前者だけ、後者だけの問題なら解決できる祈念者が居たはずだ。
 しかし双方をクリアしないと造船は実行できないようで、なんとも苦労している。


「一番の問題は、それぞれの解決に繋がりそうな情報を独占している輩が居ることだな。まあ現状、質の高い造船ドックと船大工を確保する方法が分かってない以上、分かる範囲で確保しておきたいか」


 おそらく、何らかの形で条件を満たせば某酒場みたいな感じで雇えるのだろう。
 しかし今はそういった情報が掴めないし、造船ドックも目に見えるものしか使えない。


「──見つけた。眷属も眷属で、いろいろと頑張っているみたいだな」


 しばらく探してみると、眷属たちの姿を街中で見つけることができた。
 一部足りないメンバーも居るが……うん、そっちは外で素材集めだろうか。


「さて、俺は何をするべきかな? 素材集めの手伝い、造船ドックの解放の手伝い、船大工の雇用の手伝い、それとも迷宮を攻略再開か……どうしようかな?」


 まあ正直、一番最後をどんどんやるのが一番正しいだろう。
 しかし、これだといつも通り完全ソロプレイだしな……まあ、要交渉ってことで。



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