AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と船員集め その08



 どんどん人が増えていくクランハウス内。
 なんだろうか、弱みでも握りたいのだろうか……まあ、答えがどうであれ、俺が眷属にした祈念者たちが増えていく。

 次に訪れたのは、白と黒のモノクロカラーな鎧に身を包んだ少女。
 シャインと違って、彼女は全身甲冑……素顔バレは身バレに繋がるからだ。


「来てくれてありがとうな、ペルソナ」

《いえ、私もメルスさんの眷属……です。それよりもその、どうして三人は手錠で繋がれているのでしょうか?》

「まあ、その事情説明からだな」


 話すことが難しい彼女は、念話を介して俺との会話を行っている。
 
 何度かやっている説明なので、短くそれでいて分かりやすく話せるようになっていた。
 ユウが説明を省くのは、これも交渉に入れるからだろうか。


「──というわけで、イベントに参加する協力してくれるかどうかの確認と、多少の世間話をしているわけだ。悪いが、少しだけ話をしてくれないか?」

《はい、分かりました。ただ……どのような話をしていいのか》

「別に何でもいいんだ。思ったことを、それこそ俺に対するクレームでもいいんだぞ」

《そ、そういったことをありませんよ。メルスさんの眷属になって、これまで問題なども起きていませんし》


 嗚呼、なんというか……癒しだな。
 オブリの子供らしさもそうなのだが、ペルソナの清楚感も俺の心を癒してくれる。

 隣に居るツンドラなど、絶対俺を殺すウーマンなわけだし、気を休められないのだ。
 ペルソナは、秘密を共有しているということもあって……緩められるんだよな。

 そんなこんなで、ペルソナとも話をする。
 彼女が話すのは、主にこれまでにやってきたクエストに関する内容だった。


「へぇ、霧の街と殺人鬼の伝説か……」

《迷宮の中に街が在りまして、そこで時々殺人事件が起きるんです。ただ、その街並みが現実のロンドンに似ているんです》

「たぶん、魔本だろうな。理由や理屈はさっぱりだが、迷宮内で展開されて侵入者を強制的に取り込んでいる……と」

《祈念者は七日間滞在すると、強制的に外部へ排出されます。ただ、自由民の方々はそうではないので、時折行方不明になる方が》


 何でもその迷宮、霧が現れると勝手に転移されるんだとか。
 それが地上でも他の迷宮でも関係なく、その地域周辺なら起きてしまう異常事態だと。


「イベントが終わったら、行ってみるか」

《大丈夫ですか?》

「俺は基本、暇だからな。それに、魔本を誰かに奪われるのは避けたい。その状態でクリア判定が付くかは不明だけど、とりあえず回収はしておきたい」


 魔本に封じられているのは、本当に過去存在した人々の魂魄。
 それが何度も何度も繰り返し、死んでは蘇るという事態を起こしている。

 彼らにとっては時が遡っている以上、さしたる問題ではないのかもしれない。
 だが俺にとって、その行いは否定すべき事態──偽善をするべきこと。


「あとで座標を教えてくれ。最悪、ボスとか全部無視してそこに行く」

《直接向かう方法は分かりませんが、ギルドの方で把握されていた情報なら大丈夫です》

「ありがとう、今度お礼でもするよ」

《そ、そういった物は受け取れません!》


 固辞するペルソナをなんとか説得して、約束させることはできた。
 イア同様、顔を隠すアイテムはもう渡してあるが……他にも作っておこうかな。


「──さて、そろそろ本題に入るか。ペルソナ、イベントへは参加してくれるか?」

《はい、大丈夫です。具体的に何をすればいいのでしょうか?》

「それはイベントが始まってからだな。分かる範囲で思いついているのは、とりあえず船の材料になるアイテム探しかな? うちは武闘派が多いし、ペルソナにもそっちをお願いしようと思う」

《分かりました、精いっぱい務めさせていただきます》


 イベント内容はまだ推測するしかない。
 ただまあ、船を造る以上は必ず素材集めが必要になる……自由民に船の製造を頼む所もあるだろうし、そこから考えていく。


「そういえば、他の面々にも何か頼んでおいた方がいいか?」

「……何よ」

「ユウとアルカは俺側、ノロジーとセイラには『ユニーク』側で情報のやり取りをしてもらおう。何をするかは自由だし、今はそれぐらいでいいか」

「はーい、師匠の言う通りにするよ」


 他にも、ティンスとオブリに情報収集、イアとシャインには人海戦術などを依頼する。
 予め頼んでおいて、損は無い……イベントでやらないことなら修正すればいいし。


「ふー、これであと一人か。けどさ、交渉する必要あるか?」

「まあそうなんだけど、やっぱり眷属同士で顔を合わせる機会があってもいいと思うよ」

「そうね。特にあの子と会ったの、私とユウだけじゃない。ノロジーとセイラは知っているかもしれないけど、なかなか会う機会の無いペルソナとかは、ちゃんと接点を持たせておいた方がいいわよ」


 ペルソナもペルソナで、元は『黒騎士』と呼ばれて有名だったけどな。
 まあ、途中から『天魔騎士』に変わったりとで、その情報も消えたんだが。

 彼女はクランで参加すること間違いなしなので、俺と共にイベントは行わないだろう。
 むしろ、俺があちら側にも参加する可能性が高い……まあ、それも含めて交渉だな。



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