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山田 武

偽善者と輸血狩り その10



 着々と計画は進行している。
 吸血鬼ヴァンパイアのうわさが広まっている中、本格的に動き出した吸血鬼狩りヴァンパイアハンターたち。

 冒険者などはそれらを把握しているし、彼らが会話をすれば情報は広まっていく。
 祈念者も勝手に広めてくれるし、自由民たちも知っていくのだ。

 ──帝国が、どのような場所なのかを。


「というわけで、たぶんだが俺たちは指名手配されるだろう」

「……私だけ」

「まあ、実際に出てたのはメィだけだし。仕方ないだろう、祈念者は基本的に可愛い相手の味方になる。俺みたいな奴が標的だと認識すれば、とことん自分の糧にしようとする」


 偽善という一点を除けば、俺だって男よりも可愛い子の味方をしたい。
 なので基本、メィに矢面に立ってもらうことで彼らを味方につけていた。


「祈念者が相手だと、いろいろと厄介だからな。死んでも蘇るから、それを前提とした戦術を取ってくる。メィも相手が、自爆覚悟で突っ込んでくるのは面倒だろう?」

「うん、それは厄介。前にも、混血を目の敵にする集団にそんな感じで襲われた」

「……ずいぶんとハードだな。まあ、自分に好意を持っている奴らに、殺されかけるよりはマシだと思うぞ」

「どういう状況?」


 本当に、どうしてそんな状況になったんだろうか……いろいろあったんだろう。
 自分を崇める宗教団体だったり、賞品に釣られた眷属だったり……そういう奴らだ。


「話を戻そう。先日の戦いで、吸血鬼狩りに襲われた吸血鬼になった。そして、そこにはそれなりの金が掛けられている。すると、殺すことを躊躇わない集団が確実にメィの命を狙うことになる」

「それは聞いていたからいい。でも、祈念者に勝てるの?」

「レベルは200まで達している奴が多いからな。現状だと種族はそこで止まるが、職業の方を上げてさらに強くなる。祈念者は何でも枠で制限が設けられているからな。まあ、最大レベルはしっかりと存在するけど」


 AFOというシステムにおいて、職業の方に最大レベルという概念は存在しない。
 各職業ごとに一応の限界はあるが、総レベルにはいっさい無いのだ。

 職業は多ければ多いほど、レベルが高ければ高いほど成長に逆補正が入る。
 そして、カンストさせることでステータス補正の引き継ぎが可能。

 リセットは可能だが、当然カンストボーナスは無しに。
 だが一度カンストさせると上げやすくなるので、他の理由も含めてやる者はいる。

 種族の方は250、そして何らかの条件を満たして『超越者』を持てばそれ以上に上げることができる……まあこっちは、現在のレベル的にさして気にしなくていい。


「祈念者と自由民の違いは、さっきも言った枠の制限だ。一度に使えるスキルが少ないから、使う職業の方も適当にはできない。何かしらに特化するか、器用貧乏に取り揃えるか選ばなければならない」

「……メルは?」

「無職だし、スキルの制限が無いから関係ないな。足りないものは、他所から補っているから不足することは無い。今回なら、メィに力を貸してもらっている」

「報酬は貰っているから」


 万能や全能の力を持っていると、俺は自分自身のハイスペックチートを信じている。
 ただ単純に、それを扱うだけの才能や技術が俺には全然足りないだけで。

 それを色んなモノから学んでいき、少しずつ自分の糧にしていく。
 彼女にも彼女の才があり、俺はそれを学んでいる……授業料みたいなものである。


「それよりメル、話を戻して」

「おお、そうだったな。今の俺は、存在を誰にも気づかれないようにしている。メィはその劣化版、認識はされるが誰なのか分からない状態だ。でもって、さらに調整して吸血鬼だってことだけを分かるようにしてある」

「吸血鬼……私が、純正の?」

「半分とか、そういうヒントを出すと連想でメィに辿り着く奴がいるかもしれない。どういう心境かはさっぱりだが、依頼だと思って納得してくれ。それでもダメなら、こっちでまた再調整をするが?」


 眷属のことならある程度分かるが、それ以外はまだまだ疎い。
 少なくとも、嬉しさが溢れているとかそういう感じではないな。


「ううん、問題ない。周りがそう見ているだけで、私は変わらない」

「そうか、悪いな。配慮は……そうだな、追加でブラッドポーションを──」

「要、ら、な、い!」

「そ、そこまで強く言わなくてもいいと思うがな……まあそうだな、少々手抜きでいいなら武器を前払いで渡そうか──これとかな」


 吸血鬼絡みの騒動は、だいぶ前に起きたことなので……それ関係の武器も作ってある。
 彼女の使用武器である細剣型の、真っ白な聖剣を差し出す。


「何……これ。凄い、手に吸い付く」

「銘は『海聖剣[マリーナ]』。聖剣でありながら、海の力の方が比率的に強い紛い物。副次効果でアンデッドとかには使えるけど、魔物への特化性能はない……使うか?」

「こ、こんな物……報酬じゃ貰えない」

「手慰みの品だから気にするな。それに、武器以外にも成功報酬は用意しているぞ。俺は元生産職でもあるからな。どうせなら、使える奴に使ってもらいたい」


 ギーの模倣用に特殊な武器を結構作るのだが、複製するともう使わなくなる。
 それでもドゥル用の武器も複製しているのは、真の担い手を探しているから。

 俺は別に複製のモノでも構わない。
 だが本物を使うのは、本物を成長させてくれるヤツに任せたいのだ。

 メィならその聖剣を、成長させられると感じたのも渡した理由である。
 ……これから始まる戦いに、対吸血鬼用の武器だけじゃ大変そうだしな。



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