AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と他世界見学 その09
※この話、少し前まで別の話が掲載されていました
まだ読んでいない方は、ぜひもう一度見てください
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少年の母親が患った病気は、そこまで重いものではないらしい。
通常の回復魔法、通常のポーションでは癒すことができないぐらいだろう。
身体がそれらによって回復すると、その活性化した部分に何らかの影響を及ぼす。
その結果異常を解消するはずのポーションでも、変化が見受けられないのだ。
ちなみにだが、通常の回復魔法よりも病気用の回復魔法は難易度がお高め。
システム頼りの魔法習得であれば、一段階進化後の恢復魔法にならねば習得できない。
こちらの世界の人々は、病気の原因である部分を詳細に認識していない。
そのため体を一括で、すべてに対応した形で魔法を唱えて解消している。
故に必要な魔力量もお高め。
だからこそ、改善の余地があった。
それをどうにか成功させれば……うん、上手くいきそうだ。
「さて、少年。ここに魔法陣がある。おそらくだが、お前の母親を治せるものだろう」
「ほ、本当!?」
「ああ。すでに対価は貰っているんだ、今さら嘘を語る必要も無いだろう? ほら、さっさと受け取れ」
具現魔法で世界に留め、一度であれば他者でも使える仕様にした魔力で描いた魔法陣。
それを少年の掌に載せると、その詳細について話そうとする……のだが。
「すぐにお母さんに使ってよ」
「断る」
「! な、なんでだよ!?」
「俺は魔法陣を作る大道芸人だ。それ以上でもそれ以下でもなく、客が望んだ魔法を魔法陣にすることが主目的だ。つまり、俺が用意した魔法陣を使うのはお前自身なわけだ」
偽善者がそんなに直接救っても、感動的でも面白くもない。
こういうのは、力が足りないはずの偽善対象が、自身の力で救うからこそ面白いのだ。
「魔法陣は誰が使おうと、ある程度同じ性能になる。ならば、俺が使わずとも構わないだろう? 少年──お前がやるんだ。俺の力でもグーの力でもなく、お前自身が覚悟を決めて母親を治すんだ」
「で、でも……魔力が」
「さっきまでの時間はなんだと思っている。魔法は改良した、お前が使うのは母親の病気にのみ通用するようになった病気用の回復魔法だ。その分、魔力の消費が抑えてある……お前でも使えるだろうよ」
実際、他の魔法でも何かしらの部分を抑えることで、消費魔力を減らすことができる。
そうしてパラメーターを調整することで、魔法とはさまざまな効果を発揮していた。
少年の魔力は、はっきり言って多くない。
だが子供は発展途上なのは当然だし、魔力の利用もできない者が居るぐらいだ。
回復魔法の適性は無いし、何か特殊な能力があるわけでもない。
彼は本当に普通の少年で、それでも叶えたい願いを持っている。
──だからこそ、偽善者は手を貸すのだ。
「少年、お前は母親を助けたいだろう? 迷うな、せっかく用意されたチャンスを棒に振らず、願いを叶えるためにそれを利用しろ。それは今、お前の掌の上だぞ」
「!」
「あ、あの……」
「ああ、気にするな。なんとなく言いたいことは分かるが、少なくともこれには価値がある。お前に言うことはただ一つ、何もしないで待っていればいい」
母親が起き上がってきそうだったが、グーに抑えられて再びベッドで寝る姿勢に。
少年はそんな様子に覚悟を決めたようで、魔法陣に魔力を籠めようとする。
「うぐぐ……ぜ、全然できない」
「魔力操作に意識を注げ。陣のすべてに魔力が行き渡り、円環の中で巡り続けるイメージとか……まあ、何でもいいからグルグルと回るイメージをしろ。そうして練り上げた魔力が魔法となり、お前の母親を救う」
「わ、分かってる!」
少年は残念ながら、魔力操作スキルを持ち合わせていなかった。
まあ、外と内の魔力を感じ取れないと難しいからな……仕方なかろう。
それでも必死に回そうとするが、残念ながらどこかしらで詰まっている。
「仕方ないか──“操力指導”」
このままでは埒が明かないと、支援魔法で少年の補助を行う。
今回の魔法は、魔力を含めてエネルギーの操作能力に補正を与えるというもの。
少年はそれを俺の仕業と理解したが、何も言わず魔法陣に魔力を通し続ける。
俺も異論は無いので、そのまま完成まで見守らせてもらう。
目に見えるほど上がった操作能力は、すべて一心に母を救おうとする子供のもの。
才能というモノをすべて無視して、想いだけで魔法陣を紡いでいく。
「これで……いけぇええええええ!」
少年が発動させたのは『解病回復』。
今回はその原因も解消法も分かっているので、魔法陣は発動後にその機能場所をその特定部位にのみ限定化される。
母親の体を淡い体が包むと、それは次第に彼女の表情を変化させていく。
苛まれていた影響か、やや苦しげだったものが少しずつ改善されていった。
その間も、魔力を必死に注ぐ少年。
母親もその雄姿を目の当たりにして、思わず目から熱い物を……。
《マスターは、これ見たかったのかい?》
《まあ、何もしないよりはな。改善する余地も見つけられたし、一石二鳥だろう》
《マスターが満足しているようなら、僕もそれでいいけど》
やや不満げなグー。
実際、俺かグーが魔法を使えば一瞬で終わることだったからな。
《二人でやったからこそ、こういう結末を迎えられたんだ……偽善はやっぱりいいなぁ》
それでも、俺はこういう在り方を止めることは無いだろう。
そんなことを思いながら、母子の様子を見守るのだった。
まだ読んでいない方は、ぜひもう一度見てください
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少年の母親が患った病気は、そこまで重いものではないらしい。
通常の回復魔法、通常のポーションでは癒すことができないぐらいだろう。
身体がそれらによって回復すると、その活性化した部分に何らかの影響を及ぼす。
その結果異常を解消するはずのポーションでも、変化が見受けられないのだ。
ちなみにだが、通常の回復魔法よりも病気用の回復魔法は難易度がお高め。
システム頼りの魔法習得であれば、一段階進化後の恢復魔法にならねば習得できない。
こちらの世界の人々は、病気の原因である部分を詳細に認識していない。
そのため体を一括で、すべてに対応した形で魔法を唱えて解消している。
故に必要な魔力量もお高め。
だからこそ、改善の余地があった。
それをどうにか成功させれば……うん、上手くいきそうだ。
「さて、少年。ここに魔法陣がある。おそらくだが、お前の母親を治せるものだろう」
「ほ、本当!?」
「ああ。すでに対価は貰っているんだ、今さら嘘を語る必要も無いだろう? ほら、さっさと受け取れ」
具現魔法で世界に留め、一度であれば他者でも使える仕様にした魔力で描いた魔法陣。
それを少年の掌に載せると、その詳細について話そうとする……のだが。
「すぐにお母さんに使ってよ」
「断る」
「! な、なんでだよ!?」
「俺は魔法陣を作る大道芸人だ。それ以上でもそれ以下でもなく、客が望んだ魔法を魔法陣にすることが主目的だ。つまり、俺が用意した魔法陣を使うのはお前自身なわけだ」
偽善者がそんなに直接救っても、感動的でも面白くもない。
こういうのは、力が足りないはずの偽善対象が、自身の力で救うからこそ面白いのだ。
「魔法陣は誰が使おうと、ある程度同じ性能になる。ならば、俺が使わずとも構わないだろう? 少年──お前がやるんだ。俺の力でもグーの力でもなく、お前自身が覚悟を決めて母親を治すんだ」
「で、でも……魔力が」
「さっきまでの時間はなんだと思っている。魔法は改良した、お前が使うのは母親の病気にのみ通用するようになった病気用の回復魔法だ。その分、魔力の消費が抑えてある……お前でも使えるだろうよ」
実際、他の魔法でも何かしらの部分を抑えることで、消費魔力を減らすことができる。
そうしてパラメーターを調整することで、魔法とはさまざまな効果を発揮していた。
少年の魔力は、はっきり言って多くない。
だが子供は発展途上なのは当然だし、魔力の利用もできない者が居るぐらいだ。
回復魔法の適性は無いし、何か特殊な能力があるわけでもない。
彼は本当に普通の少年で、それでも叶えたい願いを持っている。
──だからこそ、偽善者は手を貸すのだ。
「少年、お前は母親を助けたいだろう? 迷うな、せっかく用意されたチャンスを棒に振らず、願いを叶えるためにそれを利用しろ。それは今、お前の掌の上だぞ」
「!」
「あ、あの……」
「ああ、気にするな。なんとなく言いたいことは分かるが、少なくともこれには価値がある。お前に言うことはただ一つ、何もしないで待っていればいい」
母親が起き上がってきそうだったが、グーに抑えられて再びベッドで寝る姿勢に。
少年はそんな様子に覚悟を決めたようで、魔法陣に魔力を籠めようとする。
「うぐぐ……ぜ、全然できない」
「魔力操作に意識を注げ。陣のすべてに魔力が行き渡り、円環の中で巡り続けるイメージとか……まあ、何でもいいからグルグルと回るイメージをしろ。そうして練り上げた魔力が魔法となり、お前の母親を救う」
「わ、分かってる!」
少年は残念ながら、魔力操作スキルを持ち合わせていなかった。
まあ、外と内の魔力を感じ取れないと難しいからな……仕方なかろう。
それでも必死に回そうとするが、残念ながらどこかしらで詰まっている。
「仕方ないか──“操力指導”」
このままでは埒が明かないと、支援魔法で少年の補助を行う。
今回の魔法は、魔力を含めてエネルギーの操作能力に補正を与えるというもの。
少年はそれを俺の仕業と理解したが、何も言わず魔法陣に魔力を通し続ける。
俺も異論は無いので、そのまま完成まで見守らせてもらう。
目に見えるほど上がった操作能力は、すべて一心に母を救おうとする子供のもの。
才能というモノをすべて無視して、想いだけで魔法陣を紡いでいく。
「これで……いけぇええええええ!」
少年が発動させたのは『解病回復』。
今回はその原因も解消法も分かっているので、魔法陣は発動後にその機能場所をその特定部位にのみ限定化される。
母親の体を淡い体が包むと、それは次第に彼女の表情を変化させていく。
苛まれていた影響か、やや苦しげだったものが少しずつ改善されていった。
その間も、魔力を必死に注ぐ少年。
母親もその雄姿を目の当たりにして、思わず目から熱い物を……。
《マスターは、これ見たかったのかい?》
《まあ、何もしないよりはな。改善する余地も見つけられたし、一石二鳥だろう》
《マスターが満足しているようなら、僕もそれでいいけど》
やや不満げなグー。
実際、俺かグーが魔法を使えば一瞬で終わることだったからな。
《二人でやったからこそ、こういう結末を迎えられたんだ……偽善はやっぱりいいなぁ》
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