AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と自世界見学 その06
第三世界 ルーン
第一世界のように一から創り上げたわけではない、完成品を他所から持ち込んだ……などという、組み立て品のような例え方ができてしまうこの国の在り方。
ルーンはかつてネイロ王国として存在した国を、時空ごと転移させたモノ。
複製され、観測された小さな箱庭……俺はそれを、運営神から奪い去った。
「それからいろいろとあって、この国は安定した。いやー、暗殺者を出されたり、壮大なデモがあったり……苦労したな」
「──それってさ、クーたちが本当に自我を芽生えさせる前の話だよね?」
「その通り。結局のところ、力だけのバカがどう足掻いても無駄ってことがよーく理解できたさ。まあ、だからこそあとから発現するスキルにも、その影響が出たんだよな」
武具っ娘たちのスキルの内、後天的に発現するスキルはそういうものだ。
俺の当初のイメージ、創造したスキルの許容範囲、求める理想……それが関与する。
当時の俺はそれほどまでに、欠けていたモノを補おうとしていたわけだ。
結局は先代国王ことジークさんを頼ることで、なんとかなったんだけどな。
そんなことを、ゴーと交代して俺と共に歩く武具っ娘──クーに説明する。
彼女は【純潔】の武具っ娘、そしてもっともコミュ力関連のスキルを持つ存在だ。
受肉体である熾天使を人化で隠し、俺と往来を歩く。
今回は第一世界だけではなく、第三や第四世界も見ていくつもりだ。
……第二はもう使ってないし、いちおう確認はしたが特に何もなく終わった。
文字通りいっさい万物が存在していないため、何も起きないのは当然である。
「まあ、ルーンに関して大きく手を付けた場所は少ないぞ。生産技術で多少手を加えてはいるが、外見上は変わらないようにあえてそのままにした部分も多いからな」
「中身の方は変わり果てて──ほとんど壊れない家だったり、美味しすぎる料理だったりと。いろいろ作られたけどね」
「……それは俺じゃなくて、ここの奴らが盛り上がった結果だろう」
特に料理は、王城の料理長が張り切ったからこそ、とんでもないことになったのだ。
……とはまあ、もう取り返しつかない過去に耽るのは止めようか。
「少ないってことは、少しはあるんだよね。なら、そこにまずは行って観よう」
「ああ、そうしようか……とは言っても、上から見ればすぐに分かるけどな」
外壁を登って、この国の周辺を見渡すだけでそれらは存在する。
広がるその光景は、本来の世界では存在しなかったものだ。
例えばだが、この場所から南には草原が広がり、祈念者の初期地点『始まりの街』へ向かうための試練『シンフォ高山』が在る。
しかし視覚的に捉えた場合、こんもりとした山に防がれてその先は確認できない。
そのためかつてのイベント中も、その先へは向かうことができないよう閉鎖された。
そして俺が簒奪後、そもそも奪ったのは国の中心であり箱庭の中心であった都市のみ。
他の部分の情報は一切合切欠けており、空白な場所が広がっていた。
「大農場。箱庭として切り取られた部分以降全部を、第一次産業をやっていくための環境として改造した。まあ、俺がやったのは生産技術の伝授と空間の用意だけだがな」
「それをだけというのは、ちょっと問題じゃないかな?」
「当時は【生産神】もまだ完全じゃなかったからな。それをより完成に近づけるため、思えばいろんなことをやったものだ」
あの手この手で世界に干渉し、どうにかできないものかと頭を動かしていた。
そしてその想いに【生産神】は応え、ありえないような偉業を成し得る。
……だからこそ、この世界にも信者が存在してしまうんだよな。
「大農場は四区画に分けて、それぞれ異なることをやっている。二区画を半分ずつ確保しているから、たとえ半区画が失敗しても、もう片方でやっていける。この世界ならではのやり方だよな」
「跨げば干渉は抑えられる。けど、それは条件付きでじゃないかな? メルスは、いったいどうやって維持しているの?」
「維持も何も、この世界そのものは俺が創り上げたもの。そういう部分の設定も、ちゃんとやってあるんだよ……眷属に頼んで」
「結局はクーたち頼りだったんだ」
そりゃあ、いくら力を持っていても、俺自身は凄くはない……痛いほど思い知った出来事の、後にやっていたことだからな。
眷属を頼り、ジークさんに相談し、直接作業をしてくれる人たちに説明を行った。
さすがに楽園級のイージー作業ではないため、覚悟してもらう必要があったので。
「地球知識の産業チートって、要は技術の押し付けだからな。反発する人は出たし、少しずつ時間の掛かるものだった……そりゃそうだよな、地球でだってそうしてゆっくりと流れた年月が今に至らせたわけだし」
「そうだね。メルスの言う通り、始まりから完成していたわけじゃない。過程を経ていたからこそ、大衆はそれを最後に受け入れる。それを学んだってことかな?」
「……まあな」
だからと言って、宗教には嵌ってほしくはなかったが……嗚呼、いったい俺は何を間違えたんだろうか。
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