AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と橙色の調査 その07



「要するにアレか? 魔力が足りない分を、補える道具と連絡装置を作れと。転移装置はさすがになぁ……」

「簡単に言えばな。俺たち獣人は、他の種族より魔力を持ってても少ねぇ。レベルを上げれば多少増やせるが、他種族はそれ以上に増やしてるからな。アイツらの使う魔術とか道具じゃ、俺たちは足りねぇんだよ」

「……しかしまあ、お姫様のご要望か。急に方向転換したのには何か理由が?」

「うちの自慢の娘だからな。けどまあ、いずれくっつく時に技術に差があったんじゃうちは下に見られる。力だけなら負けない自信があるが、魔力もとなると正直難しい……だからこそ、お前に依頼した」


 事情聴取を終え、少々考える。
 即答しないことに苛立ちを覚えている騎士の姿もあったが、彼らはクエラムが一睨みすればすぐに目を逸らす程度の意思だ。

 依頼の理由は獣王の娘である第二王女が、突然作れないかと王に言ったから。
 それができる人物を探した結果、何人かに聞いたあとに俺にも回ってきたらしい。

 ……一番最初じゃないのは、そこまで知られていないからだろう。
 ただのびっくり箱に頼るより、まずは信頼も信用もある奴らに相談するか。

 彼らも頑張ったらしいが、既存の技術からどうにかすることはできなかったらしい。
 もしくは机上の空論は浮かべられたが、実現はできなかったようだ。


「しかし、知らなかったな……そのうち他の華都とくっつくのか」

「まあ、知らねぇ奴が多いけどな。というか正確には違う、ここから行ける範囲に集まれる華都と中継可能な小島が出るんだよ」

「ふーん、まあそれはいいや。正直な話、やること自体は可能だ。技術提供だけして、他の奴らに金も任せて国家として作らせても構わない。俺がやるより、そっちの方が信用度は高いだろう?」

「がっはははは! 分かってんなら言わなくてもいいだろ! まあ、できるってんなら、やってくれよ……で、報酬はどうする?」


 俺が嫌われている理由の一つ、それは報酬が異常なこと。
 偽善者なので取れるときはふんだくり、そうじゃないときは超絶安い。

 超激レアなアイテムを奪ったり、子供にお菓子を作ってもらったり……両極端である。

 なので今回の報酬がどうなるのか、獣王も気になっているのだろう。
 獣王の後ろに控えている人たちも、何を要求されるかハラハラしているし。


「……なら、俺に『王家の盾』をちょっと貸してくれ」

「ふむ……理由は?」

「ああ、別に戦いたいとか護衛にしたいとかじゃなくて、アレを調べたい。それ自体はもうとっくの昔からやってるんだし、俺がやってもいいだろう?」


 これまでの華都でもそうだが、血を以って遺伝する『選ばれし者』たちの『装華』は昔から研究されている。

 まあ、これは世界の理が決めていることなので、解明はできていないと図書館の情報で知っているんだけど。

 俺がそれを要求した理由は、これまで同様『装華』をコピーするため。
 検査と称して合法的に解析すれば、後味も悪くならない。


「それを俺が認めるわけにはいかないな。残念ながら、『王家の盾』である以前に、アイツも一人の男だ。そして、男の忠誠は一人の女に向いていてな」

「…………」

「もし、その女が喜ぶようなことをすれば、男も少しぐらい手伝ってくれるだろうよ。たとえばそう……ちょうど、今回の事業をやってくれたり、とかな?」

「……はいはい、やりますよ。ただ、場所だけいい所を用意してくれ」


 それから少し交渉を済ませ、ギルドの生産室を一つ、契約期間内は自由に使えるようにさせてもらった。

 あとは大量の魔石、そして魔花のアイテムが提供されるそうだ。
 ……もう少し絞れそうだったが、これ以上は姫様に嫌われないように止めておいた。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 まあ、結論から言えば──目的の品は一日で完成する。
 そりゃそうだ、俺には生産神の加護があるのだから。

 欲しい物、そしてそれを作るために用意できる材料さえ揃えれば、大抵の物は作ることができる……まさにチートなのだ。

 加工しかできない縛り中だが、魔石同士を連結させて使う『充魔石』を錬金で作った。
 充電池の魔力版、中心においた巨大魔石に繋いだミニ魔石から魔力を供給する。

 とりあえず必要とされているのは、大型でも連絡を取り合うための魔道具。
 その廉価版、もしくは個人での利用ができる縮小版は……他の生産者に任せよう。


「転移も可能と言えば可能だったが、やっぱりここは“念絡ネンラク”が一番だな」


 魔術版の念話であるこの魔術は、魔力量に応じた距離での会話を可能とする。
 人族も森人も、華都同士で繋げるのは無理だろうし、俺が代わりに用意しておいた。

 これをリアやアンを通じて向こうにも配れば、いつでも会話ができるようになる。
 これで目標達成、しかしまだそれは報告しない……毟れるだけ毟りたいし。


「クエラムのヒモにならないためにも、安定した収入が必要なんだよな。今の期間はずっとそれが手に入るし、先んじてポーションを増産しておけば、『収納袋マジックバック』がある俺は圧倒的に有利」


 まあ、ここ以外にもやることはいっぱいあるからな。
 別世界の用事も済ませながら、時間を潰していくとしよう。



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