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山田 武

偽善者と夢現祭り二日目 その18



「──二日目隠し企画、始めますか」


 メルスの状態に戻って、夜を過ごす。
 残念ながら、今日もユニーク種を討伐できた者は現れなかった。

 結構惜しいと思える集団もあるのだが、倒し切るには至らないんだよな。
 そして三日目に投入されるユニーク種、そいつは特に勝つことが難しいだろう。


「まあ、それはいいや……それよりも、今はやるべきことをやらないと」


 イベントエリア中を駆け巡る。
 俯瞰して祈念者の動向は確認していたし、自分で用意したエリアなので地形に関しては完璧に把握していた。


「だけど、最後はこれぐらい盛大にやらないとつまらないからな。俺からのプレゼント。魔導解放──“永地の理を解く者”」


 この魔導の効果は、魔力が続く限り無制限で地形を操作することができるというもの。
 それもかなり広範囲で、代償は脳の負担が重いだけという至って簡単なヤツだし。

 もちろん、俺みたいな凡人がやれば本来、脳が一瞬で焼き切れて死ぬレベルだ。
 しかし思考系スキルの補正がある以上、鼻歌交じりで行うことができる。


「まずは各エリアを接続。一定条件を満たしたらユニーク種と戦える場所を準備、そしてオークション会場だな。コロシアムをエリアの中心において、周りをバザーフィールドにすればいいか」


 三日目はコロシアムで最強を決めるので、予選は二日目までだ。
 合法的に戦えるのは、つまり今日までなので……[ロウシャジャル]が動き出す。

 そもそもフィールドがすべて繋がるため、ルールも一部変更される。
 合法PKはできなくなるし、その上広域で[ロウシャジャル]と戦うことが可能だ。

 だが、それではつまらないだろう。
 今回のイベントにおいて、ギリギリのルールの隙を突いて無法を成そうとする者が多くいたわけで……。

 彼らは[ロウシャジャル]に裁かれず、極まれに眷属が遭遇して対処するぐらい。
 直接被害を受ければ[ロウシャジャル]に裁かれるが、間接的なら動かないのだ。

 ……今後の憂いが無いように、今日中にやりたいことがある。


「さてさて、逃がすと思うな。魔導解放──“万象記す映地の図”」


 魔導を発動後、目の前にUI……を模した画面が表示された。
 このイベントエリアすべてを映し出すその画面には、無数の光点が存在する。

 それらは俯瞰した意識が見つけた、裁かれるべき者たち。
 正義も悪も関係ない、俺が裁かれるべきと判断した奴らだ。


「……自由民にも居たのは残念だが、それは仕方が無いか。願わくば、この行いによって少しはマシな生き方をしてくれるように」


 彼らを対象に、次の魔導を発動する。
 魔法を無効化できるアイテムを持っている者なんかもいるが、魔導はそういったものを無視して奴らに効果を示す。


「魔導解放──“彼方に拓きし異界門”」


 足元に浮かぶ巨大な門のエフェクト。
 それが大きく扉を開くと、至る所に在った光点の反応が一つの場所に集結した。

 本来は集団で転移するための魔法だが、予め“万象記す映地の図”で対象を指定しておくことで、特定の者のみを攫う強制転移として用いることができる。


「俺も行きますか」


 俺の場合、眼前に浮かべた扉を用意した。
 これを潜ればその先に、無法者たちが待ち受けているだろう。

 瞬時に準備を終えて、俺は扉の先へ向かって歩を進める。
 ……一筋縄ではいかないだろうが、これもまた主催者としての責任だな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「魔導解放──“白き箱清き光”」


 その場が光に包まれることで、彼らはそれまで行っていたことを中断する。
 すでに争いが起こっていたのだ……いやいや、速すぎないか?

 だが、そんなことを突っ込んでしまえばイメージが崩れてしまう。
 初日に行った演説(?)を意識して、彼らに向けて語り掛ける。


「──まず初めに、祈念者の諸君。君たちが多用する[ログアウト]だが……しばらく使えない状態にある。安心してくれ、三日目の夜明け前には解放してやろう」


 彼らはこれで理解できる、これが企画の一種でちゃんと解放されるのだと。
 そのうえで、自分たちを襲ったこの理不尽に対する異議を申し立てる。


「悪いが苦情は聞かぬよ。君たちが悪事を働いたことは、すでに把握しているのだ。自分は善行をしたのだと嘯く者も、その罪を改めて知れ。汝の所業は本当に、すべての者たちに感謝されていたのか?」


 俺が今回転移させた奴らの基準は、その行いが他者にどういった影響を及ぼしたかだ。
 それはつまり、諍いを仲裁に入った者だろうと対象に含まれるわけで……。

 実際、この中には世間一般的に見れば善行だろうという行いをした者も居る。
 だが俺からすれば、それはあまり好ましくない行いだった。


「恨むなら恨め、ただしこの私をだ。君たちに責ありと判断し、この裁定を執り行うのは間違いなく私だ。この光景は現在、そして明日映像として公開される。抗い主張するのであれば、ぜひともしてほしい」


 だがそれでも、俺はこれから彼らを一度殺すことになる。
 死に戻り以前に蘇生を行える魔導内で、完膚なきまでに。

 そして、それによって変わることを願う。
 ……偽善を行う奴が増えると、俺がやることが減ってしまうからな!



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