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山田 武

偽善者と自己紹介 その44



 夢現空間 居間


「兄さんって……」

「な、なんだ急に? 今の話、そこまで引かれることを言った覚えはないんだが?」

「うーん……まだぼくが来る前の話なんだろうけど、いろいろとね。そういえば、前にカグちゃんがそんな話をしていたっけって」

「……えっ? なぜこのタイミングで、カグが話題に出てくるんだよ。まあ、たしかにカグからも貰ったけど……一生懸命作ってくれたみたいだしな。こうして、大切に付けさせてもらっているよ」


 アイと行った試練について、せっかくなので話していたのだが……指輪に関する話になると、こんな会話をすることに。

 左手の薬指、そこに嵌めた指輪に意識を注ぐと少し光って異なる指輪が現れた。
 赤を主体に黒色を交えて作られたそれは、石座の上で宝石の形をした火が燃えている。

 カカの神気が籠められたらしいので、非常時には神羅万象を燃やし得る術を俺は持っているわけだ。

 これを貰った時は嬉しかったな。
 カグの『おにいちゃん』として、妹に応えられていると分かったわけだし。


「ぼくも……作った方がいいのかな?」

「まあ、将来あげたい人が出てきたときの練習になるか。こっちの世界だと、指輪そのものはともかく、素材ぐらいは自分で集めるらしいし。非常に遺憾ではあるが、もし好きな人ができたら言ってくれよ……作るからさ」

「そんなに苦しそうな顔をしなくても、ぼくは兄さんといっしょに居るよ。それに、指輪も自分で作ってみるつもりだから大丈夫……そうじゃないと、意味が無いからね」

「ん? 今、何か言ったか?」


 尋ねてみるが、気のせいだと言われる。
 カグの指輪を見て、改めて嬉しいと感じている間のことだったので聞き取れなかった。

 いっしょに居てくれると言ってくれているし、悪いことではないだろう。
 もしかしたら、何かサプライズを考えているのか……そう考えると楽しみになるな。


「じゃあ、始めるぞ──第四十四回の質問タイムの時間となりました! 本日のゲストはこのお方──俺の妹、将来有望間違いなしな二ィナです!」

「……もっと他に、言うことがあると思うんだけど。えっと、よろしくお願いします」

「はい、さすがはマイシスター! 俺も張り切って聞いていくからな!」

「何なんだろう、このノリ……」


 俺にも分からないが、それもすぐに収まるだろうし我慢してもらいたい。
 ……それじゃあ、さっそくインタビューをしていましょうか!


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「問01:あなたの名前は?」

「ニィナです。その前は『ザ・グロウス』という名前で呼ばれていたよ」

「……ニィナはニィナだ。俺の妹で、家族の一員のニィナ。それ以外は、もういちいち気にしなくていいんだ」

「兄さん……!」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「今は女の子で、神査の霊廃堂、生まれたのは……分からないな。ぼく自身の体が用意されたのは、いつなんだろう?」

「まあ、少なくとも第二回の闘技大会よりは後だろうな」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「光が当たると虹色の光る白い髪、目の色は黒色だよ。あとは……普通かな?」

(神懸った精巧な美貌だからな。まったく、他所の男が近づいてくるから、心配で仕方が無いんだ)


「問04:あなたの職業は?」

「いちおう【成長神】に就いているよ。どういう効果か分からなかったけど、アイさんに聞いて変えても問題みたいだったし、今度別の職業に就いてみるよ」

「問題? そんなものがあったのか」

「──特に意味の無い職業なんだって」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「……みんなぼくのこと、責任感が強いとか言うんだけど。そんなにかな?」

「ああ、それは間違いないな。ついでに言うと、背負いすぎる気もあるぞ」

「それは兄さんの影響かな?」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「趣味は無いかな? ぼくって、何でもできるけど、あんまり何かに嵌るってことはないし。特技は何でもできることだと思う」


「問07:座右の銘は?」

「『勧善懲悪』で。ぼくも兄さんみたいに、誰かのためになりたいし」

「……そのお兄さん、悪っぽいこともしているけど懲らしめないであげてね」


「問08:自分の長所・短所は?」

「長所はさっきも言った通り、何でもできること。短所は何でもできるけど、没頭はできないことかな?」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「みんなといっしょに、何かをやるのは好きだなー。嫌いなのは、家族のみんなを害そうとする人たち」


「問10:ストレスの解消法は?」

「みんなといっしょにいると、いつの間にか忘れているよ」


「問11:尊敬している人は?」

「兄さんと家族のみんな。ぼくがいっしょに居ることを許してくれて、いろんなことを教えてくれた。とっても感謝しているんだよ」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「特にない……かな? 使えるモノがあるなら何でも使う、逆にこれがこだわりかも」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「約束……だと思う。もともとぼくは、使命で動いていた。けど、兄さんと出会ってそれは無くなって。兄さんは約束してくれた、ぼくの家族になってくれるって……だから、約束なんじゃないかな?」


「問14:あなたの信念は?」

「みんなと決めた約束を守る。それが当たり前になって、ぼくにとってかけがえのないモノとすること」


「問15:癖があったら教えてください」

「眷属のみんながやったことから、行動を決めていることかな? ぼくは人から学ぶことが多いから、自然とそうなるんだ」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ツッコミだよ……兄さんって、すぐにボケるからね」

「えっ? 俺はボケてないぞ」

「……やっぱり、ぼくはツッコミだよ」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「兄さんとみんなが、ぼくを迎え入れてくれたことだよ」


「問18:一番困ったことは?」

「予想していた以上に、難しかったこと」

「……何がだ?」

「うーん、今はまだ兄さんには内緒だよ」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「飲んでいいの?」

「ダメ」


「問20:自分を動物に例えると?」

「ぼくは動物じゃなく人形ドールなんだけど……」

「そういう問題じゃないんだがな。まあ、好きな動物でいいや」

「えっと……じゃあ、犬で。グラちゃん、可愛いから」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「『超越種』、『覚成』、『生超托身』……他にもいっぱいあるよね?」

「合ってはいるけど、間違っているな」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「……一番最初に兄さんの縛りに付き合ったとき、怒っちゃったことかな?」

「俺は嬉しかったけど……ダメだったか?」

「えっ? 兄さんがいいなら、いい……のかな? これから、自分を律せれるようにしていくつもりだよ」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「野望は無いけど……夢は、本当の自由が欲しいかな」

「俺たち……束縛してたか?」

「ううん、そういうことじゃなくて。まだ、ぼくは『ザ・グロウス』でもあるから」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「まだ始まっていないんだ。ニィナとしての人生を始めるためにも、まだやらなきゃならないことがある」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「戻りたい過去は……ううん、無いよ。それは、これからの生き方で決めることだから」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「いつも観ていたけど、結構おかしな質問だよね。もし無くなるなら、やらなきゃならないことを急行すると思うよ。そして、ニィナとしてみんなといっしょに終わるんだ」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「兄さんがいろいろとダメなとこ」

「…………」

「あっ。ほ、ほら、兄さんって、いつもぼくたちのためなら何でもやるって言うよね? あれって、ちょっと心配になるんだよ。だから、冗談が言いづらいの」

「……そ、そっか。てっきり人としてダメとか言われると思ったぞ。うんうん、そういうことなら、前向きに善処してみることを検討しておこうじゃないか!」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?」

「無いよ」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「普通の人に……兄さんの近くで、兄さんといっしょに居たいかな」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「うーん……まだ考えたことがなかったよ。でも、それならさっき言ったことを果たしたうえで、誰かに手を繋いでもらって見送ってもらいたいよ」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「ぼくは使命を放棄しました。けど、存在意義までは捨てません。リオン様が、定めてくれました。兄さんたちに手を出すなら……ぼくも使命を再び果たします」


「問32:最後に何か一言」

「だからね、兄さんも独りで挑もうとしないでよ。ぼくたちはみんな、兄さんといっしょに何かをしたいって考えているんだよ?」


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「はい、カット! ……本気か?」

「うん、兄さんといっしょに強くなったら、いつかいっしょに。独りで勝手に行ったら、承知しないんだから」

「お、おう……分かった」


 ニィナの話すそのときは、間違いなく訪れる──そうでなくても、俺が引き起こす。
 ……そのときのためにも、眷属共々強くならなければ。



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